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  アレクサンドリア  
2012.07.26.Thu / 14:40 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






当時の人々が信じた神の摂理。
それによれば、
地球は宇宙の中心。
天体の動きは完璧な円運動。
そして、信ずべき宗教はキリスト教のみ。

けれど、それは本当に正しいのだろうか。
盲目的に従っても良いものなのだろうか。
しかし、批判することは許されず、盲目的に従っていた当時の人々。

自らの観察眼と実験を信じ神の心理に近づこうとした女性。
彼女が求め続けたものは追求することの自由。
しかし、それは無残にも踏みにじられる。
心理への飽くなき探求、その自由を求めた女性の悲劇を描いた映画。

でも、こんな映画をよく作れた、と思えてしまうような映画。






アレクサンドリアの図書館で教師を勤める、ヒュパティア。
勤勉で科学的真理を追究することに、その人生を捧げている女性。

自由に意見を述べて、自由に批判する。
そして、自由に心理を追い求める。
それは学問の基本であるはず。
けれど、当時の宗教は、それを許さない。
当時の人々は地球が宇宙の中心であり、
そして、星は完璧な円運動をしていると信じていた。
それは神の御業を批判することは禁止されていたから。
当時の常識に捕らわれすぎて自由な発想ができなかったから。

「人間には相違点よりも類似点の方が多い。私の教室に集う者は、みな兄弟よ」
そう説くヒュパティアは、当時の人間としては比較的自由な発想の持ち主だ。
しかし、彼女もまた、争いごとは奴隷のものと、奴隷を差別する。
この時の彼女は、だからこそ、まだ心理にはたどり着けなかったようにも思える。
また、この発言は、彼女に密かに想いを寄せていたダオスが離れてゆくきっかけでも、
あったのだろう。


多くの血が流れ、多くの者が信仰を変え、社会情勢も変わってゆく。
けれど、自らの思想を変えないヒュパティア。

彼女に想いを寄せるオレステスに守られていたが故に、
自由を追い求めることができたヒュパティア。
彼女は社会情勢の変化に疎く、上流階級のお嬢さんでもあり、
甘い考えの下に自由を声高に主張できたとも思えた。
けれど、最後にヒュパティアが示した覚悟。
オレステスの庇護も無くなり、警護の兵も遠ざけたのは、
自由のために死を選んだからであろう。
彼女はオレステスの庇護が無かったとしても、
自由を主張し、その為に死を選ぶ女性なのだろう。


そんな覚悟が導き出した摂理。
地球は宇宙の中心ではなく、楕円軌道で動いている。
ヒュパティアは惑星は完璧な円運転をすべきた、という思い込みや偏見を乗り越えたのだ。
けれど異論を唱える者は排除しなければならないという当時の情勢。
そんな情勢ゆえに偉大な発見は踏みにじられてしまったのだろう。


ヒュパティアに死を与えたのは彼女に想いをよせるダオス。
愛する人に無惨で悲惨な死よりも、安らかな死を。
そんな思いだったのかもしれない。
探究を止め権威に従い自由を失うよりは死を選ぶ。
そんなヒュパティアの決意を尊重したのかもしれない。

自らを殺そうとするダオスを受け入れたヒュパティア。
この時の彼女は奴隷は奴隷という差別と偏見を捨てて、ダオスを受け入れたのだろう。
それは彼女の発見にも通じているのだろう。
偏見を捨てて見つけ出した、楕円運動の発見に。

心理への飽くなき探求、その自由を求めた女性の悲劇を描いた映画。



しかし、こんな映画をよく作れた、と思えてしまう。
それは、この映画で描かれているキリスト教が、
布教の為には徹底的な排他と暴力、
時には殺人までをも犯してしまうように描かれているからだ。
権威に対して批判をする自由。
このような映画が公開されるのも自由な思想があればこそ。
それ故に多くの劇場で公開され、多くの観客が足を運んだということなのだろうか?
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1008 / タイトル あ行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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