ポテチ  
2012.08.16.Thu / 15:17 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






この映画を未見の人は、映画を見てから下記を読んでください。
ネタバレ満載なので。
お願いします。




ある日、突然、自分が居た場所が、
崩れて無くなってしまったと感じた男。
自分がいた場所。居るべき場所。それはどこなのか?

取り替えられてしまった息子たち。
片や高校野球でホームラン記録を持つプロ野球選手。
片や何をしても失敗ばかりの空き巣。
母親にとってはどちらの息子が良かったのか。

夜空に弧を描いて飛んでいったホームラン。
何かが変わったわけではない。
何かが解決したわけでもない。
しかし、皆の想いを乗せて飛んでいったホームラン。

自分が居るべき場所はここ。
自分がいたい場所はここ。
自分が居た場所が崩れて無くなったと感じてしまった男。
けれど、最後には、それが杞憂であったことに気付いたのだろう。
自分が居たい場所は無くならない。傍らに愛すべき人たちが居る限り。

人にとっての大切な居場所について描いた映画。



監督に中村さん。原作が井坂さん。主演が濱田さん。
脇に大森さん。そして音楽が斉藤さん。
それは面白い映画が約束されたような完璧な組み合わせ。
この方たちが創る映画ならば、何作でも見てみたい。
短い時間ながら、笑いあり涙あり興奮ありの68分。
クセがある愛すべきキャラクターたち。
木村文乃さんも、中村監督の常連に負けない演技。
中村監督の演技にも、奇妙な味がある。これも美味しい。
まさに鉄壁の布陣で創られた映画。





素直で真面目、そして純情、けれど、どこか抜けている、今村。
良い性格をもつ男のはずなのに、
職業は、なぜか、この男には似合わない空き巣。
今村の彼女、若葉さん。
現代っ子ぽくて、クールなようでいて、実は暖かな心を持つ女性。

今村の仕事仲間、黒澤。
何でも知っていそうな、頼りがいのある先輩。


黒澤は自分のことを「オレは人の気持ちが解らない人間なんだ。」という。
しかし、その言葉は嘘のように思えてならない。
それは、深い考えもなしに、
今村に事実を告げてしまった黒澤の激しい後悔の気持ちの表れなのだろう。
しかし、ここから黒澤の企みが始まる。
人の心が解らない人間に、この企みを実行しようとは思えないのではないだろうか?


とても奇妙な男である今村に、君はどんな気持ちで付き合っているのか?
そう、若葉さんに尋ねる黒澤。
それは、今村の秘密を打ち明けるべきかどうか、若葉さんを計っていたのだろう。
そして、若葉さんを、この企てに巻き込むかどうかを考えていたのだろう。
今村は純粋で真面目だから、隠し事は難しい。
一緒に生活していれば、いつかはバレてしまう。
そして、今村の心の傷を少しでも和らげる為に、若葉さんを巻き込んだのだろう。
これも、人の心が解らない人間には思いつかない考えだろう。



人間とは元来複雑な生き物で、理性的であれば、思考力によって、その複雑さは軽減される。
しかし、今村のように純粋で真面目、しかし、思考回路にどこか穴が開いているような男は、
考えていることはシンプルなはずなのに、なぜか複雑に見えてくる。

尾崎は凄い奴だ。尾崎の凄さを母親に見せたい。
なぜなら、あれはあなたの本当の息子だから。
それと同じくらい大きな気持ちで、確かめてみたい、と思っている。
本当に自分で良かったのかと。

これは論理的には矛盾している。
尾崎が活躍し偉大になればなるほど、自分の居場所はなくなってしまう。
けれど、そんなことを超えたところに今村の想いは存在する。
その純粋さが彼の長所なのだ。


取り替えられたポテチを美味しそうに食べる若葉さん。
コンソメにはコンソメの美味しさがあり、塩味には塩味の良さがある。
取り替えられたとはいえ、それぞれには、それぞれの良さがあり、
食べる者を楽しませてくれるのだ。
だから、本当に、今村の居場所は、ここでいいのだ。


夜空に弧を描いて飛んでいったホームラン。
何かが変わったわけではない。
何かが解決したわけでもない。
しかし、皆の想いを乗せて飛んでいったホームラン。

自分が居るべき場所はここ。
自分がいたい場所はここ。
自分が居たい場所は無くならない。
傍らに愛すべき人たちが居る限り。
今村は、深くは考えていなかったのかもしれない。
けれど最後には、今村はそんなことを実感したのではないだろうか?
幸せなラストシーンからは、そんなことを感じた。
そして、そうであったらいいと、そう思えた。

人にとっての大切な居場所について描いた映画。

ポテチ@ぴあ映画生活
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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