死にゆく妻との旅路  
2012.09.27.Thu / 11:30 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




この生き方が間違っていたとは言えないし
正しいとも言えない。


現実から目を背けた逃避行。
この生き方が正しかったとは思えない。
妻の願いを叶え、かけがえの無い時間を共に過ごすことができた。
この生き方が間違っているとも思えない。

働いて借金を返したい。
愛する人と最後の時まで共に過ごしたい。
そんな願いを叶えることすら許さない、この社会。
それは、彼らが社会に背を向けたから。
けれど、それでも、この小さな願いすら、
この社会には居場所が無いという寂しい現実。

それでも彼らは二人きりの隔離された世界で幸せだったのだろう。
幸せというには、壮絶な生き方だったではあろうが、、、

人生というものの儚さが胸に重く残る映画。





4千万円の借金を抱えた、清水久典さん。
金策も尽き自己破産しか道が無い男。

久典の妻、ひとみさん。
癌に侵されて余命幾ばくも無い女性。
自己破産はしたくはない。
それは、久典さんにとっては、とてもみっともないことだから。
多分、自分はまだやれる、働ける。働いて借金を返したい。
そう、考えていたのだろう。
けれど、社会は久典さんの思うほどに甘くはなかった。

見栄っ張り故に現実から眼を背け、
自らの弱さ故に将来を真剣には考えない。
しかし、私には久典さんを責める気にはなれない。
働けるのに職が無い。借金を返したいのに返す術がない。
その冷たさのほうが心に重くのしかかってくるから。
そして、久典さんの弱さは誰もが持つ弱さなのだろう。
少なくとも自分の中にはある弱さ。
だから、責める気にはどうしてもなれない。


忙しく働き、娘を育て、会社を経営してきた。
時には浮気もしてしまった。
だから、夫婦で過ごした時間は少なかったのだろう。
社会に背を向けた故に得られた貴重な時間。
それは、ひとみさんにとっては、とても幸せな時間。
夫が自分だけを見てくれている、そんな至福の時間。


多額の借金、そして病魔。
この夫婦に未来はない。
であるなら選択肢は限られている。
多分一番楽なのは共に死ぬことなのだろう。
けれど、最後まで二人は生き抜いた。
癌に苦しむ妻を見た時、介護で十分な睡眠を取れなかった時、
死を選んでも不思議ではなかった、壮絶な状況。
けれど、最後まで共に生きた二人。
厳しい言い方をすれば絶望的な未来を直視できず、
自分たちの将来を決められなかったからかもしれない。
将来を決められなかった久典さんは単に妻に従った。
それは、決めなくていい事がとても楽に感じたからかもしれない。
けれど、職を探しての旅が、いつしか夫婦の旅行に変わっていた時、
この旅を何時までも続けていたいと思えてきたのも理由に一つなのだろう。



衰弱してゆく妻。ただ見守ることしか出来ない夫。
サルの檻の掃除、海岸の清掃。
何かいいことをすれば妻にもいい事があるかもしれない。
ワラにもすがる思いで掃除を繰り返す夫。
けれど、妻の衰弱は止まらない、止められない。
それでも二人は二人で居ることを止めない。
正義感や道徳心、義務感だけでは成すことができない、
単に夫婦愛とも簡単に呼べないものが、
この二人の生活を成り立たせてきたのだろう。


それまで妻と過ごしたワゴンの中に閉じこもり、
久典さんが号泣するラストシーン。
しかし、それを無理に、こじ開けた娘。
生きることは厳しさと向かい合うこと。
もう、逃げてばかりは居られない。
一緒に逃げてくれる人は、もう居ないのだから。



果たして自分だったらどうしていただろうか。
人生というものの儚さが胸に重く残る映画。


もしかしたら、久典さんだけの逃避行では、
半年も持たず、自らの死を選んでしまったかもしれない。
けれど、妻のひとみさんが、久典さんを生かし続けたのだろう。
そして、それは今も続いているのだろう。







* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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