奇跡  
2012.10.04.Thu / 22:44 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






絵が上手になりたい。
憧れの先生と結婚したい。
死んだペットに生き返って欲しい。
女優になりたい。
家族と一緒に暮らしたい。

様々な願いを抱えている子供たち。
九州新幹線の一番列車がすれ違う時、
それを見た人たちの願いが叶う。
その噂を信じての大冒険。

しかし、その冒険自身が小さな奇跡の積み重ね。
最後には、それに気付く少年。
その心の成長もまた、小さな奇跡なのかもしれない。

子供たちの心に寄り添うような優しさがとても嬉しく感じられる。
その優しさが印象深い映画。




両親の離婚で家族が離れ離れ。
鹿児島で母親と暮らす航一。
口癖は、「なんでやねん、意味わからん」。
その口癖の意味するところは、
家族の共に暮らしたい、そして、今の生活が気に入らない、
ということなのだろう。

福岡で父親と暮らす龍之介。
何も考えていないようで、考えている、
けれど、やはり何も考えてない。そんな不思議な少年。
両親といえども争いを見ることが嫌いで、
だから昔の生活に戻りたいとは思っていない。
今の生活を楽しいものにするために努力をしている少年だ。

映画の前半は彼らの生活を丹念に描いている。
そして、多くの人が夢を抱え、生きていることを描いている。
夢を持っているのは子供たちばかりではない。
思い描いた、かるかんを創りたい。
大好きな音楽で成功したい。
大人だって夢を持っている。
九州新幹線の一番列車がすれ違う時、
それを見た人たちの願いが叶う。
その噂を信じての大冒険。
いや、きっと、その冒険に参加した少年たちの誰もが、
その噂が嘘であることを薄々は承知している。
けれど、その瞬間に立ち会うことには意味がある。
そして、その冒険の意味合いは、
参加した少年、少女にとって、それぞれに異なるのだろう。



女優になりたい、そんな夢を抱えた少女は、
きっと、覚悟を決めるための冒険だったのだろう。

憧れの先生と結婚したい。
しかし、彼が発した願いは、父親にパチンコを止めてもうらうこと。
航一には、今の生活に早く成れたほうがいいと言っていたのに、
やはり、成れることが出来ない事もあるのだろう。
そして、それは、自身が本当に願っている事に気づいた瞬間なのかもしれない。

死んでしまった愛犬に生き返って欲しい。
それは、どんなに願っても叶うことが無い夢。
そんな事は分っている。けれど、願わずにはいられない。
彼にとっては、この冒険は、愛犬にお別れをいう旅だったのだろう。
共に旅をして、その瞬間にも共に立ち会うことが出来た。
きっと彼にとっては哀しくも、しかし、良い思い出に成るのではないのだろうか。

弟の願いは、父親が成功すること。
何も考えていないようで、しかし、実は考えている、
けれど、本当はなにも考えていない。
なんとも不思議な願いではあるが、龍之介らしい願い事だ。


そして、兄の航一。
家族が共に住むことを強く願っていた。
けれど、誰も何もしてくれない。状況は悪くなるばかり。
弟ですら、真剣には考えていないことを、航一は薄々感づいている。
だから、航一にとっては、この冒険には特別な意味がある。
必ず成功させたい、その思いで心は一杯だ。
スイミングスクールの月謝も使った。お爺さんにも協力してもらった。
航一は必死だった。
だから、弟のちゃらんぽらんさが許せない。
足手まといになるような友達を連れてきたのが許せない。

しかし、その思いが変わってくる。
足手まといになると思っていた弟の友達に窮地を救われた。
そのことを素直に感謝する航一。
彼の視野が広がった瞬間だ。

そして、願い事を言わなかった航一。
皆の協力、大人たちの優しさ、見逃してくれた先生、
すべてが揃ってはじめてみることが出来た、この瞬間。
「意味わからん」と言って反発してきた世界が実は、
とても優しくて大きなものであることに気付いたからなのだろう。
独りよがりの考えを捨てたとき、世界が見えてきた。
これも航一の中で起こった小さな奇跡なのだろう。

「あいつには、まだ、はやいわ」
そんな生意気な台詞が微笑ましくも、しかし、成長した航一に似合っている。
そして、灰を、もう嫌がらない航一に、嬉しくさせられる。


子供たちを演じた役者さんたちが芸達者という以上に、
この映画からは子供たちが、とても自然に感じられる。
ドキュメンタリーを見ているような自然さだ。
作り手の優しさが伝わってくるようだ。
そんな優しさも印象深い映画。


ただ、航一にきっかけを与えたのが、
自分勝手に生きている父親からの台詞と言うのがちょっと残念。
お前こそ、世界(家族)を大切にしろ、というのは言いすぎか?
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1030 / タイトル か行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
子供達がイキイキとしていて自然体で、すごく良かったです!
弟は、考えてないようで考えていて実は考えてないって?(≧ε≦)ブッ
彼の軽妙さが、映画全体に良い明るさを出していましたね~

主人公の兄弟だけでなく、皆にとって意義ある冒険で、
確かに、それぞれに成長が見られた話でした。
大人達も優しかったですね~

そうそう、オダギリ・ジョーが意味あり気な台詞を言ってましたが、
父親にしては無責任でしたよね。(^^;

2012.10.10.Wed / 15:25 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

少年漫才コンビが主演と聞いていて、
ちょっと不安だったのですが、
彼ら二人だけでなく、出てくる子供たちがとても良かったです。

なんか、物事がうまく行かない時の苛立ち。
周りに八つ当たりしたり、ふてくされたり。
でも、最後には旅を通して成長したお兄さんに、
嬉しくさせられました。
親が勝手でも子供は育つ、ということでしょうか?

それじゃ、また。

2012.10.10.Wed / 22:04 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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願いをかなえるため、冒険に出る小学生達。 子供の姿がイキイキと輝いて見える、 微笑ましくて心温まる作品★ 監督:是枝裕和 製作:2011年 日本 出演:*前田航基 *前
2012.10.10.Wed .No536 / RockingChairで映画鑑賞 / PAGE TOP△

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