メランコリア  
2012.11.01.Thu / 22:31 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






理性で生きる姉。
本能で生きる妹。

未来の安定と皆の平穏の為に、
姉は小さな不幸ならば我慢をする、見過ごす。
しかし、それが出来ない妹。

世間は、
姉の生き方を大人の分別と呼び、
妹の生き方を子供の身勝手と呼び、理解すらしようとしない。
けれど、それは出来る事と出来ない事の個人的な差異にしか過ぎない。

結婚式と人類絶滅の日。
そんな両極端な日に炙り出される、
それぞれの生き方の強さと弱さ。


だから、どちらの生き方が正しいなんて言えない。
少なくとも妹の生き方を簡単には否定はできない。
そんなトリアーの声が聞こえてきそうな映画。





結婚式に遅刻して、周りに迷惑を掛けていても、
今が楽しければ、それでいい。
馬に挨拶をしたい。人を待たしていようが、自分のやりたい事をやる。
とても自由奔放な妹、ジャスティン。
自らの結婚式だというのに、なぜか憂鬱なジャスティン。
彼女がうつ病だから、というのが理由なのかもしれない。
けれど、私が感じた理由は、
ジャスティンは、この結婚が自身を不幸にすることに感づいてしまったから。
だから、ここから逃げ出さなければならないと、欲していたのだろう。
それは、母親に言われるまでも無く、そう、感じていたのだろう。

マイケルは確かに優しい男だ。
けれど、自分の事をきっと理解できないだろう。
そして幸せにはしてくれないだろう。

ジャスティンの上司であるジャックは、とても、いけ好かない男。
結婚式の日でさえ、アイデアを出すことを強制してくる。

皆が自分たちの幸せを祝福してくれる。
それと同時に、幸せになることを強制してくる。

多分、姉であるクレアが同じ立場であるのなら、
クレアは皆の為に我慢をしただろう。
細かな不幸や不安、不満は見てみぬふりをしただろう。
あるいは、最初からこの結婚が自身の幸せに繋がらないことを理解し、
結婚には踏み切らなかったかもしれない。
けれど、それらがジャスティンにはできない。
出来ないが故に、うつ病になってしまったのかもしれない。
出来ない事が世間には受け入れられず、理解もされないから、
うつ病になってしまったのかもしれない。


時々、あなたがたまらなく憎い。
それは嫉妬の感情なのだろう。
クレアにはジャスティンのような生き方は出来ない。
周りの迷惑を気にせずに自由に生きるような生き方は、クレアには選べない。
だから、羨ましくて憎く思ってしまうのだろう。
それが、ますますジャスティンを孤立させてしまうのだろう。

出来ることと出来ないこと。
そこには当然のことながら個人差が存在する。
けれど、その個人差がうつ病と、そうでない者を分けているのだろう。



メランコリアが地球に衝突する。そして全ては滅びさる。
それは誰もが避けては通れない悲劇。
しかし、クレアは平和だった頃の様に悲劇を避ける生き方をしようとし、
けれど、そんな生き方が存在しないが故に壊れてゆく。

常識人だったクレアの夫、ジャック。
ジャスティンの自由奔放さを嫌悪してきた男。
メランコリアは地球に衝突しない。それは事実ではなかった。
けれど、ジャックは信じたいことを事実として信じようとし、
信じることが出来なくなってしまった時に、現実に我慢できず逃げ出したのだ。
それはジャスティンが結婚から逃げ出したのと同じ理由からだ。


ついに衝突するメランコリア。
それは全てが滅び去ってしまうという公平な不条理。
そんな不条理に全てを奪われてしまう。
泣き叫ぶクレアからは、理由無く奪われることの苦痛、そして、嘆きを強く感じる。
けれど、魔法のシェルターをつくり、クレアの息子の苦痛を和らげたジャスティン。
その表情からは、何かを達観しているように見える。

トリアー監督は、このラストを「ある種のハッピーエンド」と述べているそうだ。
その真意は分らない。

世間で言うところの常識人が、
自分では如何ともし難い不条理に嘆き、逃げ出し、
うつ病を患っている人間の心情を理解したから、なのか?
それとも、
うつ病を患っているが故に、
不条理に耐え他人にも平穏を与えることが出来ることを示せたからなのか。
それとも、
出来ることと出来ないことの垣根が消え、
皆が同じ苦痛を感じたラストだからなのか?


どちらの生き方が正しいなんて言えない。
少なくともじゃステインの生き方を簡単には否定できない。
そんなトリアーの声が聞こえてきそうな映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1038 / タイトル ま行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
ジャスティンの生き方、クレアの生き方、
どちらが正しいとかは全く考えず、
でも両方とも共感できないなあ~って思いながら見ていたので、
あまり心にグッとくるものが無い作品でした。
トリアー監督のすごく個人的な所から生まれたもののように思えました。

地球滅亡というのが、あまりにも究極過ぎる設定なんですよね・・・(^^;
そんな大きな出来事じゃなくて、
実際に起こり得る悲劇で描いてくれたら、
もっと分かり易かったような気がします。

2012.11.09.Fri / 16:00 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

 惑星衝突による地球滅亡。
とても究極的だし、誰も経験したことないし、
想像するのも難しい状況ですね。
 結婚式と地球滅亡という両極端な状況だと、
比較しやすかったのかもしれませんし、
映画としての宣伝受けも良いのかもしれません。

でも、逃げ出すために死ぬかなあ、、、、
衝突の前までに好きなことするほうがいいかも、、

それじゃ、また。

2012.11.09.Fri / 21:42 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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SF終末劇と謳っているけど、SF色は薄くて、 人間の憂鬱な内面を映像化したドラマでした。 MELANCHOLIA 監督:ラース・フォン・トリアー 製作:2011年 デンマーク・スウェーデ
2012.11.09.Fri .No538 / RockingChairで映画鑑賞 / PAGE TOP△

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