黄色い星の子供たち  
2012.12.13.Thu / 20:53 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






ヴェル・ディヴ事件。
それは第二次世界大戦中に起こったユダヤ人に対する一斉大量検挙。
この映画では五つの視点でこの事件を描いている。

一斉大量検挙をフランスに要求したナチス。
一斉検挙に荷担したヴィシー政権。
一斉検挙を実施したフランスの警察官たち。
理由無き検挙の対象になってしまったユダヤの人々。
そして、身の危険を省みず一人でも多くのユダヤ人を助けたフランス市民。

淡々と描かれる事件の全容。
そして、この事件についての詳細を知らなくとも、
多くの人々にとっては、この事件の顛末は容易に想像がつく。
だからドラマティクな展開はこの映画には存在しない。
生き残ることが出来た二人の子供たちが唯一の救い。

ヴェル・ディヴ事件を淡々と描いた映画。
しかし、それでも、この映画からは多くの事を感じ、学ぶ事ができるだろう。
なぜなら、それが事実として起こった事だから。



第二次世界大戦中に、多くのユダヤ人を迫害したナチス。
その決定を下し命令したヒットラー。
現場の悲惨さを直接見なければ、
そして自らが直接手を下さなければ、
人はどんなひどいことでも命令できてしまうのだろう。
多くの人々が苦しみ死んで逝く決定が、談笑しながらも下せるのだろう。
ヒットラーの要求を受けて一斉大量検挙を計画したヴィシー政権。
彼らにとっては、死んでゆくユダヤ人たちも数字でしかない。
いかに効率よく数字を増やしていくか。
いかにして、狂気の独裁者の要求に応えるか。
彼らにとっては、それが全て。
犠牲となる人々の窮状などは関係がないのだ。
もし仮に彼らが被害にあうの人々に思いが働けば、そして、
もし仮に検挙される人々の立場にたって物事を考える事が出来れば、
このような悲劇を遂行しようとは思わないだろう。
少なくとも、その実施に躊躇しただろう。

もしかすると、彼らは知っていたにもかかわらす、
わざと目を塞ぎ、想像する力を抑えこんでいたかもしれない。

心が通わない政治の決定。
それがいかに悲惨な結果を生じさせるのか。
彼らが淡々と決定を下し任務を遂行する姿に、そんな事を感じざるをえない。


一斉検挙を実施する警察官たち。
自ら進んで実施する者もあれば、いやいや従う者もいる。
けれど、目の前に如何に悲惨な光景が展開されても、誰も逆らえない。
命令には従わなければならない、逆らうことは身の破滅。それは恐怖の心。
この決定を下したのは自分ではない、他の誰か。それは逃避の心。
様々な思いで彼らは非道を実施している。
彼らは加害者でもあり、一方で被害者でもあるのだろう。


一斉検挙で捕われてしまったユダヤの人々。
彼らに先行きに対する考えが甘かった、というのは酷な話しだろう。
彼らは政治家を信じたと言うよりは、
政治を実施する彼らの人間性を信じたのだろう。
人間ならばこのような非道は行えないはずだ。
けれど被害者の立場に思いが至らなければ、
このような非道も実行出来てしまうのだ。
けれど、そんなことは思いも至らなかったのだろう。


身の危険を顧みず、多くのユダヤ人を助けたフランス市民。
ユダヤ人が住むアパートで、彼らを逃がそうと眠ずの番をした管理人。
我が子と偽って、友人の子供を救い出そうとした隣の友人。
尋問されそうになった少女を、仕事仲間だと庇った娼婦たち。
身分証明書を偽造した配管工事人。
水不足の収容所に水を配った消防士たち。政治の圧力にも屈しない、その誇り高き姿。
そして、ユダヤ人たちから預かった手紙を身の危険を顧みず届けようとする。


ヴェル・ディヴ事件を淡々と描いた映画。
しかし、それでも、この映画からは多くの事を感じ、学ぶ事ができるだろう。
自分が、もし検挙を実施する警官の立場ならば、、、
もし、検挙される側の人間であるならば、、、
そして、もし、自分が検挙を目撃する一般市民であるならば、、、

もし目の前で検挙が行われたのであるならば、自分ならばどうしただろうか?
権力に屈し見てみぬ振りをしただろうか?
自らの力の小ささ故に諦めてしまっただろうか?
けれど、彼らフランス市民一人一人の小さな行いが、
しかし、1万人というユダヤ人たちを救ったのだ。
それを忘れなければ、自分にも何か出来るのかもしれない。

ヴェル・ディヴ事件を淡々と描いた映画。
しかし、それでも、この映画からは多くの事を感じ、学ぶ事ができるだろう。
なぜなら、それが事実として起こった事だから。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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