果てぬ村のミナ  
2013.01.06.Sun / 17:54 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






人生は厳しい事ばかりだ。
知らなくてもいい悲しみを知る。
見なくてもいい悲劇を見る。
受けるいわれのない中傷を受ける。

自身の人生に何の展望も持たなかった少年。
人生の厳しさを知り、しかし、厳しさを選ぶ。

変わらない事よりは変わる事の方が容易い。
周りに流されて他人の考えに従う方が容易い。
しかし、あえて厳しさを選んだ少年。

それは、少女の帰れる場所を守るため。
そして、父親の想いを引き継ぐため。

自然と人間との営み。
過疎と失われてゆく大切な文化。
そんなことが、この映画のテーマかもしれない。
けれど、最後に少年が選択した道。
それは、少女の歌に導かれて選んだ道。
そんな少年の成長が清々しく感じられる映画。



映画の冒頭では素人っぽく見えた石川湖太朗さん。
しかし、劇中での耕助での成長とともに、
なんだか頼もしく見え、演技も映えたように感じられた。
耕助の父親役の小市慢太郎さんは、
とても味のある演技を魅せてくれた。
それらも清々しく感じられた映画。




過疎と高齢化が進んでいる、寂れゆく農村。
そこで暮らす高校生、耕助。
自分の将来の事や自身の住む村の事を、
ぼんやりとは心配はしているのだろう。
しかし、あえて目を背けているようにも感じられる。
そんな村に六十年ぶりに帰ってきた少女、ミナ。
人より年を取るのが遅く、
人には見えないものが見える少女。

ミナが六十年前に村を追われた理由。
それは、皆がミナを気味悪がったから。
少しだけ人と違うだけなのに。
そして、皆を水害から救ったはずなのに。
それでもきっとミナは村が、そして村の友達が今だに好きなのだろう。


家を継ぎたい、そう父親に切り出した耕助。
本当は嬉しい父、けれど、烈火の如く怒り出す。
それは、耕助が人生を甘く見ているから。
将来を真剣に考えているとは思えなかったから。
けれど、耕助には、それが伝わらない。
それを耕助に伝えたのはミナ。
それと同時に耕助は理解したのだろう。
ミナが自分よりも遥かに過酷で辛い運命を歩み、
しかし、人の愛情をまだ信じているということに。


自分が本当に満足できるお茶を目指して、
長い年月を、お茶の葉創りに捧げてきた。
辛い生活、厳しい自然。それでも、ひるまずに挑んできた。
それは父親の人生そのもの。
しかし、一本の安易な捏造記事が、
父親の生きて来た道を否定する、父親の誇りを踏みにじる。

失意の父親を救ったのはナミの歌声。
知らなくてもいい悲しみを知ってきた
見なくてもいい悲劇を見てきた。そして、
受けるいわれのない中傷を受けてきた。
だからこそ、ナミの歌声は父親を救うことができたのだろう。
そして、耕助に自身の道を決めさせたのだろう。

映画の最初ではノーテンキに見えた耕助。
しかし、映画の最後では他人の気持ちにも敏感になることができた。
無言のおばあさんの表情から、ミナが故郷を去ってゆくことに気付いた耕助。
おばあさんにとっては、それは嬉しい成長なのだろう。


最後に交わす視線。
その別れに涙を流すミナ。
死別よりは、自分を理解してくれた友人との別れのほうが、
遥かに辛かったのだろう。


少女に導かれて自身の人生を決めた少年。
そんな少年の成長が清々しく感じられた映画。

果てぬ村のミナ@ぴあ映画生活
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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