彼女が消えた浜辺  
2013.01.10.Thu / 18:17 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






死んでいった彼女の名誉よりも、
彼女を信じていた男の純情よりも、
そして、自身の良心の呵責よりも、
守らなければならないものがある。

一つの嘘の辻褄合わせの為に、
さらに多くの嘘をつかなければならない。
それでも守らなければならないものがある。

それまでは親しいと感じていた女性。
皆が彼女のことを親身になって捜索した。
けれど、彼女が実は赤の他人であったということを意識させられた時、
誰もが彼女のことよりも、身を守ることを優先させてしまった。
人のどうしようもないエゴと責任転換が哀しくも印象的な映画。



週末のバカンスの為に、カスピ海沿岸に訪れた友人たち。
初めて彼らに加わった、エリ。
自身の婚約に悩みを抱えた女性。
アクシデントはあったものの、宿泊場所を確保し、
皆が楽しい時間を過ごすことができた。
最近離婚してしまった男性とエリを引き合わせることにも、
最初のきっかけとしては成功したようであった。
しかし、浜辺で消えてしまったエリ。

皆がエリを懸命に探した。海に潜る者、救助隊に捜索延長を懇願する者。
仲間を助けるために皆が必死だった。
しかし、その様子が段々と変わっていく。

彼らが必死にエリを捜索した理由の一つには、
共に楽しい時間を過ごした仲間意識があったからであろう。
けれど、彼女は赤の他人であることを強く意識させられた。
それは、彼女の名前を知らなかったという事実から。
そして、彼女の母親も、住んでいる場所さえも知らなかったという事実から。

仲間でないと考え始めた時、死んでしまった者よりは生き残っている自分たち。
人が死んでしまったという事実に疲弊し疲労していた彼らには、
自分の罪であるという意識から逃れたいと願うのは無理からぬことなのだろう。
身を守るために事実を隠し、それ故に嘘を付き、
さらに多くの嘘を付かなければならなくなってしまった。
良心が傷ついても、始めてしまった嘘は最後まで通さなければならない。
たとえ一つの嘘の為に、別な沢山の嘘を付かなければならないとしても。

最後にエリの婚約者がエリを旅行に誘ったセピデーを問い詰める。
彼女の名誉の為に、そして、目の前の男の純情の為に、
真実を告げなければならなかったのだろう。
その時が、やり直せる唯一のチャンスだったのかもしれない。
そうすれば、彼らのみならず自分たちの良心も救われたはずだ。
しかし、嘘を突き通すセピデー。
婚約者の存在を知っていたにも関わらず、
お見合いにも似た旅行に誘ったことがバレてしまったのなら、、
これ以上の悲劇が起こるかもしれない。
目の前の男が怒りに任せて何をするかわからない。
責任を追及され、世間の好奇の目にさらされ、
自身だけではなく、家族全員が辛い目にあうかも知れない。
だから、嘘を最後まで突き通したのだろう。
しかし、それはとても後味の悪いラストであり、
良心の呵責は、その後の人生まで尾を引くことだろう。


この結末は、いったい何が悪かったのか。なにが原因なのか。
多分、それは一つではない。多くの不幸と小さな罪が重なった結果。
だから、主原因は何か、との問い掛けには様々な感想が寄せられるだろう。
もしかしたら、その感想によって、その人の人格が判断できてしまうかもしれない。

個人的にはセピデーがエリに良かれと思って無理強いしたのが、
一番の主原因だったように感じられる。
しかし、結果を知れば、そのように感じられるが、
結果が異なれば、違う感想になるのかもしれない。


永遠の最悪より、最悪の最後がマシ。
そして、エリの最後の台詞。
もしかしたら、彼女は自殺したのでは、、、
あのタイミングで、周りの迷惑を顧みず、
その選択をすること自身、あまり考えにくいと感じる反面、
衝動的に死を選ぶのはありうるのかもしれない。


突然の死。そして、それは赤の他人。
罪の意識から逃れたいというエゴ。
この結果は彼女の選択がもたらしたと思いたい、責任転換。
その為の嘘、そして嘘の為の更なる多くの嘘。
人々の迷走、人のどうしようもないエゴと責任転換が哀しくも印象的な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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