ソハの地下水道  
2013.01.24.Thu / 18:39 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






時として、現実は、とても残酷だ。

きっかけは金儲けだったかもしれない。
けれど、彼は自身の良心に懸命に従おうとした。
しかし、その道は険しく、厳しい。
それは、皆が同時に幸せになれる方法は存在しないから。
地下に逃げてきたユダヤ人の多くは見捨てざるを得なかった。
部下がドイツ兵に処刑されてしまった。
そして、家族を危険に巻き込んでしまった。

時に弱気になり、手を引こうとした。
これ以上の疲弊は我慢できなかった家族は夫の下を離れてしまった。
彼らの心の迷い、とまどい。それは、
深く入り組んだ下水道で道を見失った迷子に似ている。
けれど、彼らは戻ってきた。そして、最後までやり遂げた。
しかし、最後に明かされる彼の最後。

人は悪の側面を持ちながらも、善の心も持っている。
自らの危険、家族の危険を省みず、
彼自身の良心に従い、隣人とも呼べる人たちの命を選択したソハ。
だからこそ、自身の人生に満足と誇りを感じる瞬間を得られたのだろう。
自身の良心に従うことの厳しさと難しさ、されど、その素晴らしさが感慨深い映画。



地下水道というよりは汚物に塗れた下水。
そこの管理を仕事としているソハ。
しかし、密かに窃盗の仕事をもしている。
窃盗は危険な仕事、けれど家族の為にあえて危険を犯している男。
映画の冒頭、裸の女性を追い立て、処刑しているドイツ兵。
それは、あまりに無残で非情な光景。
しかし、それを見過ごすソハ。
見過ごすしかなかったではあろう。
けれど、その時のソハには何の関心も湧かなかったように見える。

地下水道に抜け穴を掘ったユダヤ人。それを見つけたソハ。
最初は金儲けの為だった。けれど、その思いが徐々に変わってゆく。
交流しているうちに情が移った為なのか?
子供たちの可愛い姿に自身の娘の姿を重ねた為なのか?

彼らを見捨てれば自分だけは助かるだろう。
しかし、それでいいのだろうか?
懸命に生き抜こうとしてる彼ら。
自分や自分の家族が危険にさらされようとも、
見捨てられない命、見捨ててはいけない命があるのではないのか?
それは、彼の良心からの問い掛けなのだろう。


一度はユダヤ人を見捨てようとしたソハ。
ユダヤ人たちを罵倒したのは、相手が悪いと思いたい為。良心の呵責の為。
しかし、彼らをどんなに罵倒してみても、消えない罪悪感。
なぜなら、彼らが悪いわけではないことを知っているから。
彼らの苦難を知ってしまっているから。
再び、援助を申し出るソハ。大抵の人間は良心には逆らえないのだ。


しかし、現実はとても残酷で厳しい。
良心に従い、良い行いをしているはずなのに、巻き込まれてしまう多くの命。
ドイツ兵を殺害して、その報復に殺されてしまう、ソハの部下。
彼は、そして彼らは、まったくの無関係な人間だったのだ。

突然尋ねてきた司令官、ドイツ軍の手先。
そしてバレそうになるソハとユダヤ人たちの関係。
危険にさらされ心を疲弊させてゆく家族たち。

娘の聖体拝領式を抜け出してユダヤ人を助けに行くソハ。
家族を取るのか、ユダヤ人を選ぶのか、それは究極の選択。
けれど彼らの命の危険にユダヤ人を選ばざるを得なかったソハ。
身の危険を省みず、水の溢れる地下水道に入っていったソハに、ついには愛想を付かした妻。
善良な選択、行いをしたにも関わらず報われない。現実は厳しい。


迷いに迷った。しかし最後までやり遂げたソハ。
その道のりは、あたかも暗くて深い、入り組んだ下水道の様。
そして、現実はとても厳しい。善行がすべて報われるわけではない。
それは、ソハの最後にも象徴されている。
けれど、助かったユダヤ人。最後にはソハを理解し受け入れた妻。
「これが私のユダヤ人」と叫ぶラストのソハの誇らしげな姿。
事故死したとしても、ソハはとても幸せな人生を送ったのではないのだろうか?
少なくとも、自身の人生に誇りと満足を持てただろう。
人生の幸せは、その最後からだけでは判断は出来ないのだろう。

人は悪の側面を持ちながらも、善の心も持っている。
自らの危険、家族の危険を省みず、
彼自身の良心に従い、隣人とも呼べる人たちの命を選択したソハ。
だからこそ、自身の人生に満足と誇りを感じる瞬間を得られたのだろう。
自身の良心に従うことの厳しさと難しさ、されど、その素晴らしさが感慨深い映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1058 / タイトル さ行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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