ヴァンパイア  
2013.01.31.Thu / 18:46 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






見ず知らずの女性の自殺を助け、
その血を手に入れてきた男。

共に死ぬことを選択したという連帯感。
それは、あたかも擬似恋愛。

けれど、その擬似恋愛が本物になる日が訪れる。
相手を知り、相手を助けたいと願う。
自らの欲望を相手に告白する。
ネットでのユーザー名ではなく本物の名前で呼びあう。
そして、相手の孤独に共感する。


不思議な性癖に迷い込んでいた男。
それは、あたかも夢の世界に迷い込んでいたかのごとく。
しかし、人は人と触れ合うことで変わることができる。
その男が目覚めた瞬間が、不思議で、しかし、とても美しい。
その不思議な美しさに感動すら覚えてしまった映画。


映画のすべてをコントロールした、岩井監督。
監督らしい、美しい映像。音楽。物語。
冗長に感じられたところもあるが、岩井俊二を堪能できる映画。




高校で生物を教えているサイモン。
繊細で優しい、恋愛にはかなり奥手であろう男。
見ず知らずの女性の自殺を助け、その血を手に入れる。
それは、サイモンの奇妙な性癖なのであろう。
相手の意志を尊重し、優しく扱う。決して無理強いはしない。
美しいままに安らかに死なせてあげる。
そして命の結晶ともいえる血を貰う。
美しいままの死体とともに身近に置く。

サイモンは実は、ヴァンパイアではないように感じた。
これは、ラストの台詞、これが私の夢だとしたら、
にも現れてはいると思われる。
そして、サイモンの一連の行為は、彼にとっての擬似恋愛なのだろう。

死を覚悟した彼女たちの人生の苦悩からの開放感。
共に死を選び、実行しているという連帯感。
それらが、二人の距離を狭める。
それらが、サイモンに恋愛にも似た感情をもたらしたのだろう。
そして、止められなくなったのであろう。

映画の冒頭、ジェリーフィッシュは死にたいと願い、
しかし、最後の食事に拘る。このまま死ねば惨め過ぎるから。
彼女は本当は幸せを求めている。
けれど、満足な幸せが得られる日が来ないと絶望している。
だから、死を選ぶ。
けれど、本心では人生に満足したいとも思ってはいるのだろう。
だから、本当は死んではいけないのだ。
しかし、サイモンには、それが分らない。感じることが出来ない。
なぜなら彼女の人生を知らなすぎたから。


合意の上とはいえ、相手を殺し血を抜く。
それが悪いことだと分っていても止められない。
ただのレイプ犯と自分の行いは違うはずだ。
けれど一般人から見えれば何も変わらないのでは、、、


自殺をしようとした教え子、ミナ。
それを懸命に止めようとしたサイモン。
説得の時に説明している内容は、
説得力には欠けるし、適切でないようにも感じられる。
けれど、彼の必死さは伝わってくる。
目の前の教え子を助けたいと願っているのは本心からなのだろう。

輸血でミナの体の中にサイモンの血が入っていく。
サイモンの命が、そして助けたいという願いが、
ミナに受け継がれていくことを象徴している。



集団自殺に巻き込まれ、偶然にも助かったレディバードとサイモン。
彼女と話をするうちに不思議な気持ちになってくるサイモン。
多分、サイモンは以前から、
自分がヴァンパイアであることを誰かに告白したかったのだろう。
集団自殺から助かり、共に長い道を歩んだ彼女になら、
そして、彼女から感じられる、彼女の人柄からなら、
告白してもいいと思ったのだろう。

さらに、彼女の人生をも知ることになる。
彼女の自殺を止めたいと願う気持ち。
人は簡単には死んではいけない。
今までは見ず知らずだったから止めずに死なせてあげることができた。
けれど、少しでも相手の人生に触れ合ったのなら、
自殺を見過ごすことは、出来なくなってしまった。

それを理解したレディバード。
あなたの為に生きる、私はあなたのもの。私の血だけを吸って。
首から血を吸いたい願望を告白し、しかし実行できなかったサイモン。
それは彼らしい優しさ。

人生に寂しい者同士がお互いの痛みを共有し相手を優しく包み込もうとする。
それは彼らの現実の恋愛の始まりなのだろう。



徐々に変わっていくサイモン。
けれど、現実が彼を裁く日が来てしまった、、、
サイモンのやっていることは決して許されない事。
けれど、哀しくて寂しい結末。


最初の女は忘れない。
ローラをマリアと間違えて呼び続けたサイモン。
その理由は、マリアが最初の人だったから。それが最初の恋であったから。
それが疑似恋愛であったとしても。


現実を生きることの大切さを訴えているようには思えない。
理解されないマイノリティーの悲哀というようにも感じられない。
人は人と触れ合うことで、
変わることができるということを言いたかったように感じられる。

不思議な性癖に迷い込んでいた男。
それは、あたかも夢の世界に迷い込んでいたかのごとく。
その男が目覚めた瞬間が、不思議で、しかし、とても美しい。
その不思議な美しさに感動すら覚えてしまった映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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