マイ・ブラザー  
2013.02.07.Thu / 20:39 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






自分の犯した罪で自身を赦せなくなってしまった兄。
自分の犯した罪を償い、更生することができた弟。
償うことが出来た罪と償う事が難しい罪。
壊れてしまった心、そして家族の絆。
それらは再生できるかどうか、わからない
しかし、再生への道には家族の愛が不可欠なのだろう。


様々なテーマが盛り込まれた映画。
戦争の残酷さ、家族愛、兄弟愛、そして、罪への償い。
果たして兄は再び、
あの頃の自分を取り戻すことが出来るのだろうか?

様々なテーマが心に重くのしかかってくる映画。



良き夫であり、父親であった、海軍大佐、サム。
犯罪を犯してしまい服役していた、弟のトミー。

家族や隣人にとっては、トミーは厄介者であり、サムは良き人であった。
しかし、戦争が彼らの立場を逆転させてしまう。


戦争の悲惨さ。
それは、人が人を殺さなければならないということ。
それは、望むと望まざるに関わらず、命令のために、そして生き残るために。
家族の下に帰るために、
家族ぐるみで付き合いのあったであろう部下を殺してしまったサム。
それは究極の選択。そして自分で自分を赦す事が出来ない選択。
もし、サムがもっといいかげんな男ならば、
その苦しみも、もう少し少なかったであろう。
しかし、サムは、とても善良なる人柄。
結果として、それが彼自身を苦しめている。
それは、とても皮肉な結果に感じる。

サムが戦争に行く前までは、家族にとっては厄介者であったトミー。
彼が犯罪を犯すようになってしまったのには、様々な理由があるのだろう。
その理由の一つには、サムの善良さがあったことは否めない。
誰からも慕われ、尊敬されている兄。
父も当然兄を評価し、兄と比較して、弟を蔑む。
そんな状況では居場所が無かったトミー。
しかし、兄が戦場で死んだとされた時、トミーにも居場所ができたのだ。
父親とも素直に向き合うことも出来た。
だから、自分が犯した罪とも向き合うことが出来た。
これも、とても皮肉な結果に感じる。

戦場で究極の選択をしたサム。それは家族の下に帰る為。
しかし、帰ってきた家庭には自分の居場所が無くなっていた。
自分の役割を立派に果たしている弟。
正常なサムであればトミーを褒め、感謝しただろう。
しかし、罪の意識がトミーに嫉妬心を生じさせてしまったのだろう。
誰かが悪いわけではない。しかし、ままならない感情。そして孤独。


過去の罪に向き合い、赦しを得たトミー。
被害者からの感謝の言葉の持つ重い意味。
誰もが抱えていた重い気持ちが晴れ、誰もが解放された。
それは、とても感動的な逸話だ。

しかし、サムの問題は、もっと深くて重い。
殺すよりは殺されるほうがマシなのかもしれない。
しかし、この問題は、そんなことではないのだろう。

自らが赦すことができないくらい重い罪を犯してしまったサム。
そして、それは取り返しのつかない行い。
果たして兄は再び、あの頃の自分を取り戻すことが出来るのだろうか?
最後には自らの罪を妻に告白できたサム。
妻が今だに自分のことを愛してくれていることを理解したからであろう。
これは赦しへの出発点に過ぎない。けれど、
家族の愛があれば、完全にもとには戻れなくとも、
笑顔を取り戻すことができるだろうし、取り戻して欲しいと思う。



それぞれの役者さんの演技が素晴らしい。
いつもながらの演技を魅せたトビー・マグワイアとジェイク・ギレンホール。
十字架を背負う、悩める誠実な男は、トビーの十八番だろう。
粗暴な中にも繊細さを秘めた男は、ジェイクにとっても十八番だ。
ナタリー・ポートマンは、トミーの友人に夫の服を与えた時の表情が素晴らしかった。
そして、長女を演じたテイラー・ギアさん。
一度聞いたことがあるクイズを再び出題した父親。
それは戦争で変わり果ててしまった、大好きだった父親。
変わってしまった父親に、涙を堪えて寂しさに耐える瞳。
妹の誕生日でのイジけた表情。
どれも、心に傷を負ってしまった家族の悲しみが十二分に伝わってくる。
それぞれの役者さんの見事な演技で、家族の苦しみが実感できる映画。


* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1062 / タイトル は行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こちらにも。
これは戦争の残酷さが一番重くのしかかってきました。
戦争さえなければ、サムが究極の選択をして
罪に意識に苛まれる事もなかったでしょうし、
家族も、待つ事や戦死の報告の苦しみを味わう事もなかったでしょうから。

どの人の苦しみも、重く辛くこちらに伝わってきましたね・・・
ほんとそれぞれの役者さんの演技がとても良かったです!
あの長女役の少女は鳥肌ものでした!
最終的に、良い方向に家族が向かっていってちょっとホッとしましたね。
あの後、笑顔を取り戻して欲しいって私も思いました。

2013.02.11.Mon / 16:12 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

確かにそのとおり。
諸悪の根源は戦争というものの存在ですね。
戦争が無ければ、こんな苦しみも存在しません。
しかし、それでも人は自分の行いを責めてしまう、、、
戦争が悪いにもかかわらず。

最後は良い方向だったけど、
長くて辛く苦しい道の始まりなのかもしれません。
それでも、希望はあると信じたいです。

それじゃ、また。

2013.02.11.Mon / 22:12 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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