2013.02.28.Thu / 21:09 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






鉄の意志によって、
自分が考える理想的な生き方を貫いたマーガレット・サッチャー。
けれど、この映画では、その人生を淡々と描いている。

善政を行った政治家として賞賛するわけでもない。
独裁者として糾弾するのでもない。
起こった事件を淡々と、しかも平等に描いている。

何も主張していないようにも思われるが、
しかし、この映画は、
人生に完璧なものなど、存在はしない、
と主張しているように感じられる。

一つの生き方には良い面もあれば悪い面もある。
一つの決断には、良い面もあれば悪い面もある。

総てが満足し幸せになれる魔法の解答は、この世界には存在しない。
なぜなら世界と人生は、そんなに単純なものではないから。
そんなことが印象に残った映画。





鉄の女と呼ばれた女性、マーガレット・サッチャー。
強い意志の力でドラステイックな改革を推し進めた元英国首相。
台所で独り寂しくお皿を洗っている妻にはなれない。
政治の道を志し、最大の理解者でもある夫に恵まれて、
政治家の頂点とも呼ぶことが出来る首相にまでなることが出来た。
それは自身の生き方を貫いた最高の結果であるはずだ。
けれど晩年に感じてしまう後悔、そして不幸な思い。

自身の生き方を実現するために犠牲にしてきた様々な事。
その時はそれで良いと考えていたのだろう。
しかし、息子とは疎遠。
そして、心の中の夫に感じてしまう負い目。

最大の理解者であった夫。
晩年、認知症が進んだ結果、死んだはずの夫を見てしまうサッチャー。
けれど、サッチャーは本当な夫が死んだことを理解しているように思えてならない。
自分を支えてくれた者の幻影を頭から追い払うことが出来ないから、
そして、犠牲にしてしまった家庭に対する負い目から、
サッチャーには亡き夫が見えるように思えてならない。

「デニス、あなたは幸せだった?」との問いかけは、
犠牲にしてきた者への負い目故の質問なのだろう。そして、
「わたしを独りにしないで。」との問いかけに
「君は一人で生きていけるよ。今までもそうだった。」
とサッチャーの心の中の夫が答えるのも、負い目故なのだろう。

けれど、もし、彼女が自身の生き方を諦め、
様々なものを犠牲にしない生き方を選んだとしても、
晩年には別な後悔と不幸を感じてしまうのではないのだろうか?


党をゆさぶるために負けを覚悟で党首選挙に出馬することにしたサッチャー。
しかし、党を変えたければ、党を率い、国を変えたければ、国を率いろ。
ついには首相候補に祭り上げられるサッチャー。
しかし、その為の方策がボイストレーニングといったイメージ戦略であるのが面白い。
そして、自身の意志というよりは周りの思惑で首相になったという経緯も面白い。
それは、辞任する時も彼女を首相にしたはずの周りの思惑故というのも興味深い。


薬は口に苦くても、それは飲まないと患者は死ぬ。
たとえ選挙に勝てなくても自分が正しいと思ったことは実行する。
大衆に媚びへつらうのは腰抜け。
そのような思想を持つが故に、
多くのドラスティックな改革を成し遂げたサッチャー。
しかし、それと同時に、その思想が彼女を孤立させ、
最後には、誰も彼女について行くことができなくなってしまった。


イギリスを復活させる為、さまざまな改革を実施してきたサッチャー。
その結果生じる、暴動やデモ、しかし、イギリスの好景気。
改革は、多くの人々を幸せにしたのだろう。
しかし、その反面、別な人々を不幸にしたのだろう。


苦渋の決断を下す日々。
その時は憎まれても何世代かの感謝を受けるはず。
そう信じて、自らの信じる正しいことを実行してきた。
けれど、一方で、「あるいは忘れられてゴミと一緒に捨てられる。」
重圧に耐えて下した決断であっても、
総てが後世の人々に賞賛されるわけではないのだ。


若い時は嫌っていたはずの皿洗い。
最後には、自分のカップを洗いながら、
人生の幸せを感じてしまうサッチャー。
人生に完璧な答えなど、存在はしない。
なぜなら人生は、そんなに単純なものではないから。
そんなことが印象に残った映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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