洋菓子店コアンドル  
2013.03.07.Thu / 21:31 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






思い込みが激しくて、周りの雰囲気が読めない、
負けず嫌いの女の子。

とても嫌われてしまうキャラクターのはずなのに、
彼女のバイタリティーが周りを動かして、
最後には幸せな結末へと皆を引っ張りこむ。

サービスを提供する者としては、
彼女の性格は欠点かもしれない。
けれど、道を究める職人としては、
必要な資質なのだろう。

彼女の不思議な魅力が印象的な映画。




鹿児島から状況してきた女の子、臼場なつめ。
自信過剰で自意識過剰、思い込みが強い、協調性に欠ける女の子。

確かにそれは、彼女の性格なのだろうが、
世間を知らなかった井戸の中の蛙であったことが、
その性格を増長させてきたのだろう。
初めて食べたコアンドルのケーキ。
その味に素直に感動し、その味を自分で覚えたいと思う。
そしてコアンドルで働き始める、なつめ。
それも彼女のバイタリティがなせる技なのだろう。
コアンドルで先に働いていた、マリコ。
なつめにとっては先輩であるはずなのに、
事あるごとにマリコと、なつめは衝突を繰り返す。
性格的に相性が悪いというのもあるのだろうし、
職人としてのプライドがぶつかり合っているようにも見える。
この、ぶつかり合いにもヘコたれるどころか、
コアンドルで我が物顔で働き続けられるあたりに、
なつめの、よく言えば根性、悪く言えば鈍感さ、自惚れが見て取れる。

なつめが上京したのは許婚である海君を捜しに来たからだ。
しかし、海君は既にコアンドルを去った後。
この逸話だけでは、海君はいい加減な男に見える。
けれど、彼は次の店で立派に修行をしている。
多分、海君もマリコと衝突して、しかし出て行ってしまったのだろう。


コアンドルのオーナーシェフ、依子。
なつめをお荷物のようには感じていても、マリコよりは大人の態度を示す。
最初になつめが作ったケーキを酷評し、
しかし、同時にコアンドルのケーキを差し出すのが心憎い。
職人は手を抜くことを覚えたら長続きはしない。
彼女が言うと、この台詞も奥が深く説得力がある。
仕事と男と、どちらを取るのか。
一人前のパティシエになるのならば前者である。依子なら分り切っている事。
そして、すでになつめは海君に捨てられていることも知っている。
けれど、仕事か男か、それは自身が確かめ決めるべき事でもあるのだ。


売り物としては、どうかしらね。
けれど、多分、それ以外のところに美味しさを感じたのだろう。
ひたむきな情熱、そんなものを感じたのではないのだろうか?
だから、芳川さんは、なつめのケーキを求めたのだろう。

芳川さんのアパートに届けたケーキは、誰が作ったのか明示的には描写されていない。
しかし、芳川さんは、そのケーキを美味しいと感じ、なつめの成長を喜んだ。
もし、そのケーキをなつめが作ったのならば至上の喜びであっただろう。
もし、そのケーキをなつめが作っていなかったのなら、
お客さんに喜んでもらえることの嬉しさを感じつつも、自身の腕の未熟さを嘆いただろう。
この時の、なつめの表情は個人的には後者のほうに感じられはしたが、
いずれにしても、なつめがコアンドルを存続させたいと感じるには十分な出来事だ。


過去のトラウマでケーキ作りの情熱を失ってしまった、伝説のパティシエ、十村。
誰もが彼の復帰を願っている。けれど状況を知っているから無理強いは出来ない。
そんな状況に十村は甘えているのだろう。
ケーキを再び作りたいとは思っている。
立ち止まってはいけないことも知っている。
何かが起こって自分の背中を押してくれるのを待っている。
けれど、自分自身だけでは踏ん切りがつかないのだろう。

十村の事情を知っていれば、皆が十村に同情し無理強いはしない。
けれど、その閉塞感を破ったのは、なつめのバイタリティ。
なりふり構わない彼女の行動が十村を復帰させたのだろう。
そして、最後には十村と妻との間も取り持ったのだろう。


コアンドルが受注した晩餐会のデザート。
本心では、なつめはマリコにも手伝って欲しかったのだろう。
しかし、またしても衝突してしまう二人。
「ああ、もう面倒臭い。」
なつめは本当はマリコに一緒に仕事をして欲しいのだろし、
マリコのコアンドルを愛する気持ちも理解していたのだろう。
けれど素直に成れず言い合いになってしまうのが面倒臭いのだ。
「腹が立つ」のは、お互いが素直に成れないこと。そして、
相手を認め合えないことに対してなのだろう。

コアンドルに帰って来たマリコは、未だに素直じゃない。
けれど、コアンドルを、晩餐会を成功させたいと願う、なつめの想いは、
認めたのだろう。認めざるを得ない状況や認めた自分が腹立たしいのだろう。
それを見守る十村の表情が可笑しい。


開催される晩餐会。子供にとっては、とても退屈な会。
しかし、この子を笑顔にしたのは、今夜の主役、デザート。
最後にお客さんを笑顔にするのは俺たちだ、の言葉通りだ。



思い込みが激しくて、周りの雰囲気が読めない、負けず嫌いの、なつめ。
とても嫌われてしまう女性のはずなのに不思議と彼女に周りが手を差し伸べる。
大人のアドバイスをし続けた依子。
衝突ばかりなのに最後には晩餐会に協力したマリコ。
ケーキ作りに復帰した十村。
なつめの成長を喜んだ芳川。

なつめの性格をネガティブに捉えれば嫌われキャラだ。
けれど、多めに見てあげれば、
素直にではないが良い物を認める心を持つ、
バイタリティに溢れる女の子なのだろう。
そんな彼女の不思議な魅力が印象的な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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