みなさん、さようなら  
2013.05.02.Thu / 17:16 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






団地から出られなくなった少年。

彼が団地から出られるようになるには、
様々な事が必要だった。
周りの理解。
日々の鍛錬。
その結果の証明。
時間と経験。
そして、母親の愛情。

試行錯誤しながらも弱い自分自身と戦った。
時間は掛かっても、遠回りしても、努力は報われる。
そして最後には卒業していった青年。
自分を守ってくれるものは永遠には存在しない。
けれど、外に出ても自分は自分を守れるんだ。
そんなことを学んだ結果として卒業ができたのだろう。

その軌跡が滑稽で面白く、
しかし価値ある尊い道のりに感じられる。
卒業式の晴れやかさと切なさ、そして、
過ぎてしまった青春を感じさせてくれる映画。



ある悲惨な事件をきっかけに、
団地から出られなくなってしまった少年、悟。

悟にとって、団地とは自分を絶対に守ってくれる存在。
それは、家庭や母親そのものなのだろう。
いつ危険が襲うか分らない世界には出たくは無い。
だから、団地から出たくはないし、出ることが出来ない。
そして、団地を守るとは自身の心の居場所を確保すること。
もし、団地内も危険な場所であるならば、
悟に心の平穏は二度と訪れはしないのだろう。
規則正しい生活を送り、体を鍛える。勉強もする。
団地内をパトロールもする。
それは外界にある危険と悟が懸命に戦っているということだ。
方法は間違っているかもしれない。
遠回りなのかもしれない。
滑稽に見えるかもしれない。
けれど、戦わなければ勝つことは出来ない。


普通ではない悟に、しかし皆が優しい。
それは彼が団地を出ることが出来ない理由を、
知っているからなのだろう。
悟に対して皆が友達として接してくれる。
団地内で開催された同窓会。
その理由を知った時、なんだか嬉しい気持ちにもさせられた。

しかし、、、、
恋愛も経験し初体験も団地の中で行うことが出来た悟。
団地の外に出ないのに、それなりにモテているのは、
悟が日々を誠実に生きている姿勢を皆が知っているからでもあろうが、
やはり、同情の目もあったからなのだろう。
だから、最後までは付き合えなかったのだろう。


恋人の早紀と団地の外に出ようとした悟。
しかし、出来なかった。まだ出るには足りないものがあったからだ。

目標にしてきた男、大山倍達。
どんなに強い男にも勝てないものはある。
そして命には限りがある。絶対的なものは存在しないのだ。

団地で知りあった少女、マリア。
ろくでもない男に暴力を振るわれている少女。
暴力に対抗するだけの鍛錬はしてきたはずだった。
けれど、怖い。これは単なる喧嘩ではない。
守るべき人、守るべき信条の為に負けられない戦い。
それは、悟がかつて経験したことがない戦いだ。
しかし、勝利を収めることができた悟。
日々の鍛錬、自身の戦いがムダではなかったことに、
悟が自信と確信を持てた瞬間なのだろう。


母親の危篤の報にあっさりと団地を出ることができた悟。
彼が安心して暮らせていたのは団地だけのおかげではない。
母親がいたからだ。
いつでも暖かな眼差しで自分を見守っていてくれた。
いつかは団地を出られることを、
そして出る日が来る事を信じて。
しかし、その母親も今は居なくなってしまった。


あまりに、あっさりと描かれてはいるが、しかし、
悟が団地から出られるようになったのは、様々な事があったから。
周りの理解。
日々の鍛錬。
自分を守ってくれるものは永遠には存在しないことを学ぶ。
外に出ても自分は自分を守れるんだということを経験する。
そして、母親の愛情。
その総てが必要だったのだろう。

この映画は単なるトラウマを克服した男の話ではないのだろう。
それは、団地を出るとは彼が卒業することを意味しているから。
小学校から、中学校から、青春から、団地から、そして母親から。

団地を後にする悟には、きっと聞こえたことだろう。
「みなさん、さようなら」という声が。
皆が卒業して誰も居なくなってしまった団地から。


団地を去る悟からは卒業式に似た晴れやかさと切なさを感じる。
過ぎてしまった青春を感じさせてくれる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1086 / タイトル ま行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさんお勧めの作品を観ましたよ!

主人公の奇妙な行動に笑いながらも、
後半には切なくなってホロッとさせられた良い作品でした。
主人公の背中を押したくなるような、
母親目線になって観てました(^^;

彼は団地に守られていたんですよね。
そういったものは永遠に存在しないんだな~って私も思いましたね・・・

最後は「卒業」だったんですね。
良かったね~と見送りました!

2014.02.01.Sat / 17:55 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

なるほど、母親目線で見ると、
味わいが一層深くなりそうですね。

団地に守られながらも、
そんなものが永遠には存在しないことを実感し、
そして、守られなくても生きていけるという経験を積む。

一見分りにくそうで、でも、とても分りやすく、
人間の成長を描いているような、
でも、そんな仰々しくない映画でした。

これからも浜田さんと中村監督には、
良い作品を作っていってほしいです。

それじゃ、また。

2014.02.01.Sat / 19:27 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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