アフター・ウェディング  
2013.05.16.Thu / 20:00 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






ありえないように感じられた物語。
しかし、描かれている人々の感情は、
生々しくて、とてもリアル。
そして、とても密度が濃い。

だから色々な人が色々な印象を、
この映画には持つであろう。

私が一番強く感じたのは、人生において、
誰かが誰かの代わりを務められるのか、
他人が他人の人生を生きられるのか、ということ。
父親の代わりを頼んだ男と頼まれた男。
きっと時間を掛け、様々な葛藤と戦い、
精神的な苦難を乗り越えなければ、
父親の変わりは勤まらないのであろう。
それでも、父親の役割を勤めることは可能なのだろう。
そこに、血の繋がりは関係ないのかもしれない。
けれど、父親自身の変わりは勤まらないのだろう。

愛情ゆえに選択した、他人の人生を生きる道。
それは、とても困難な道。
しかし、愛情ゆえに選んでしまった困難な道。
深い愛情と、それがもたらす不条理が印象深い映画。




久しぶりに故郷に帰って来たヤコブ。
ヤコブの昔の恋人、ヘレネ。
ヘレネの今の夫、ヨルゲン。
久しぶりの故郷で知る、実の娘、アナの存在。
普通ならば、自分が父親だとは名乗りはしないのではないのだろうか?
娘を愛していれば、その生活に波風を立てたくは無いはずだ。
黙って遠くから見守るのが良い選択のように感じられる。
しかし、強引に娘に事実を告げるように迫るヤコブ。
それは、娘の為というよりは自分の為のように感じられる。

実の娘のアルバムを眺めるヤコブ。
もし、運命が少しでも違えば、そこに写されたのは自分だったはず。
娘と楽しい時間を過ごしていたのは自分のはずだった。
そう、ヤコブは感じたように見えた。
しかし、それは違うのだろう。
けれど、ヤコブに、そう勘違いさせたのは、
芽生え始めたアナへの愛情故なのだろう。


この映画では明確に説明されてはいないが、
きっと、ヨルゲンは自身の死後に残される家族のことを心配し、
家族をヤコブに託したくて、インドから呼び寄せたように感じた。
確かに幼き子供たちには保護者が必要だ。彼らを守るべき存在が。

死への恐怖、死後への不安。
そんな感情が相まってヨルゲンに、そのような行動を取らせたのだろう。
けれど、ヨルゲン自身の代わりは誰にもできない。
しかし、ヨルゲンに、そう勘違いさせたのは、
家族への愛情故なのだろう。


死に逝く者からのお願いだからなのか。
インドに残してきた子供達の為なのか。
昔の恋人と実の娘の為なのか。
他人の人生を生きる選択をしたヤコブ。
けれど、それは、とても困難な道。
ヨルゲンがアナの父親になれたのは、
様々な葛藤、精神的な苦難を愛情と忍耐を持って乗り越えたから。
けれど、今のヤコブに、その覚悟があるようには思えない。

最後にインドの子供にデンマークで暮らすようにお願いをしたヤコブ。
しかし、子供はインドでの暮らしを選択した。
ヤコブにとっては、予想外の回答だっただろう。
そして、それはヤコブが選んだ道の険しさを暗示しているように思えてならない。
けれど、
血の繋がらない娘を父親の変わりに育てた男。
孤児を父親と変わらぬ愛情で育てた男。
大きな困難が待っているかもしれないが、
父親の役割を勤めることは可能なのだろう。
けれど、その人自身の代わりには決してなれはしないのだろう。


愛情ゆえに選択した、他人の人生を生きる道。
それは、とても困難な道。
しかし、愛情ゆえに選んでしまった困難な道。
深い愛情と、それがもたらす不条理が印象深い映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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