2013.05.23.Thu / 20:11 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






連合艦隊の司令長官の任につきながら、
戦争に反対をし続けた男。

国力の差から勝てぬ戦と判断した為。
軍隊の理想を貫く為。
戦争の困難さを熟慮した為。
そして、戦争の本質、それは、
勝利したとしても、なお犠牲が出てしまうことを知っていた為。

歴史を知る我々から見れば、
それはとても常識的なことなのだろう。
けれど、その当時にあれば、
そんな思想を持つこと自身が難しいことであっただろう。

最悪な環境下であった。けれど、
自らの理想を最後まで諦めず、散っていった男。
そんな男の生き様と人柄が深く心に残る映画。


熱病に取り付かれたかの如く、
戦争を渇望した民衆、それを煽ったマスコミ。
過去の痛みを直ぐに忘れて、
自らに都合の良い点のみを見て、
戦争に突入していった日本。
そんな恐ろしさも印象深い映画。


残念なのは、山本五十六を美化しすぎて、
話を単純にまとめすぎた点だ。
真実はもっと複雑で混沌としていて、
正しいことを見失いがちなはずだ。
それでも、五十六の発した言葉には重みがある。
そこが少し残念な映画。
排日的な差別移民法。
国際連盟を提唱して、しかし、それに参加しない。
自らは植民地を広げ、しかし、日本の植民地を認めない。
しかし、それでもアメリカとの戦争を避けるべきだと主張する、山本五十六。

過去においては、国力の差があった大国との戦争でも日本は勝利してきた。
国力だけで勝敗は分らない。やってみなければ戦争は分らない。
いくら相手が大国であっても、暴挙や身勝手は許してはならない。
利害を一致する国と同盟を組めば、相手が如何に大国であろうとも対抗できるはずだ。
戦争は好景気をもたらす。そして、大東亜共栄圏という理想。
だから、今回も戦うべきであるし、勝てる見込みはある。

主戦派の主張は一見すると正しいように見える。
けれど現状の国際情勢、ドイツの本質、大東亜共栄圏の実現性。
それらを数値という根拠で照らし合わせれば、
おのずと結果は見えてくる。
対米戦争を反対し続けた山本五十六。
それは現実を冷静な目で見定め、根拠を十分に検証した結果なのだろう。

軍隊とは、武力によって自らの意思に従わないものを、
強制的に屈服させるためにあるのではない。
百年兵を養うのは、ただ国の平和を護るためである。
アメリカと戦えば、勝敗には関係なく、間違いなく国は焦土と化す。
だからこそ、止めるべきなのだ。

戦争は始めるのは容易いが終わらせるのは難しい。
犠牲を最小限に抑えて講和に持ち込む。
それが唯一、山本の取りうる選択肢。彼の理想から導き出される結論。
だが、それは難しい。
現実をよく知る山本が博打的とも思える作戦を採り続けたのは、
この困難さ故なのだろう。

状況が悪化していく中、それでも講和を諦めていなかった山本。
すでに博打を打てる猶予もない。
圧倒的に絶望的な状況でも、しかし、講和を諦めない。

十分な護衛も付けずに前線視察をする山本。
自分が出来ることは、ささやかな激励であっても実施しなければ
死んでいったものたちに合わす顔も無いからだろう。
部下に対して、護衛はいつもどおりでよい、の言葉は、いかにも彼らしい。
けれど、もしかしたら死を覚悟していたのかもしれない。
このような状況になってしまったことへの責任。
死んでいった者に対する贖罪。
そして、自らの死によって世論が講和に傾くことを祈って。


目と耳と心を大きく開いて、世界を見ることの重要性。
時流に流されず、感情に流されず、あるべき論にも流されず、
可能性を根拠で検証し、最悪な状況下でも最後まで最善を尽くした男。
そんな男の生き様と人柄が深く心に残る映画。


ただ、山本を美化しすぎたあまり、
悪者と山本たちを分かりやすく描きすぎた感が否めない。
例えば、この映画では、南雲中将が山本長官の意図を実施しなかった為に、
敗戦に追い込まれた、というような解釈も可能だ。
けれど現実はもっと複雑で混沌としていてる。
後世の歴史を知っていれば、どの選択肢が良かったのかは見えてくるかもしれない。
けれど、歴史に、れば、や、たら、は禁句なのだろうし、
当時を生きてきた人々には様々な思想があったことだろう。
一概に、善と悪を決め付けるのは難しい。
その難しさを理解できなければ同じ過ちを犯すのではないのだろうか?

そして、山本長官の、この映画で描かれた人柄は、
軍隊を率いる長官には似つかわしくないとも思える。
失敗を厳しく問いただし、懲罰を課し、
意に沿わないものは有能な者であっても排除する。
そうしなければ戦争を勝つことが出来る強固な軍団は出来ない。
たとえ、それが非人間的な集団であったとしても。
この映画からは、山本長官は戦争をするには優しすぎたようにも感じられる。

五十六長官の発した一つ一つの言葉。
その真の価値を描くには、もっと描きこみが必要な気がする。
そこが少し残念な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1092 / タイトル ら行 /  comments(0)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
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