モンスターズ/地球外生命体  
2013.07.23.Tue / 18:45 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






多分、この映画は見知らぬ男と女のロードームービーなのだろう。
しかし、それ以上に私が感じたことは、
非常事態に置かれても日常を生きてしまう人間の性。
非常事態に置かれても日常を生きざるを得ない人間の性。
現地に住む人はもとより、
そこを通過するだけの人、
隔離された壁の中に居る人も、
非常事態という感覚を麻痺させて、
日常を生きようとする。
麻痺させなければ生活できないからなのか。
保証の無い安心感が、しかし非常事態を忘れさせるからなのか。

そんな人の性が愚かしくも哀しく感じる映画。



地球外から持ち込まれたモンスター。
事故により、そのモンスターがメキシコで増殖し、
メキシコの一部は危険地帯として隔離されてしまう。
その中をアメリカまで逃げ続ける男と女。
メキシコを取材中であったカメラマン、コールダー。
社長の娘である、サマンサ。
最初は見知らぬ同士だった二人が、
会話を重ね旅を続けるうちに親しくなってゆく。
けれど、正直、愛し合うまでに親しくなるとは、
感じられなかった。

モンスターが直ぐ傍にいるはずなのに、
しかし、メキシコに住み続ける人々。
そこは彼らの故郷であり生活の基盤があるからだ。
戦争が始まったからといって逃げ出せない人々も同様なのだろう。
そして、生活する為に危険であるという感覚を、
麻痺させなければならないのだろう。


直ぐ隣には危険が潜んでいる。そんな状況なのに、
それを見ないふりをして旅を続けるコールダーとサマンサ。
そうしなければ、旅を続けれらないからでもあろう。
そして、彼らが日常を生きているという体験が、
非常事態という感覚を麻痺させるのだろう。
人と会話をする。宿をお世話になる。子供をあやす。
息子にメッセージを残す。親と話をする。
そんな行為を重ねるうちに、
今が危険であるという感覚は麻痺していくのだろう。
日常が続いている今は、まだ安全であるのだと。
そのような保証はまったく無いはずなのに。


アメリカが建設した巨大な壁。
その壁の中に居たとしても安全ではない。
壁の外ではモンスターが今も増殖しているからだ。
けれど、その事実も心の奥に、しまい込まれてしまうのだろう。

やっとの思いでアメリカにたどり着いた二人。
電話で連絡を取る様子が対称的だ。
結婚したくはないのであろうサマンサは、しかし、
それを口には出さない。様々な事情があって、
意に沿わない結婚を強いられているようにも感じられる。
サマンサに自由は無いのだろう。

「帰りたくない」
二人が愛し合うほどに親しくなったからこその台詞かもしれない。
けれど、自由を失いたくないからこそのサマンサの言葉のようにも思える。
そして、この時のサマンサは、この台詞の重さを理解していないようにも感じられた。

我々は、この二人の結末を冒頭で知ってしまっている。
愛し合った二人が悲劇を迎えるという切なさ。
自由を求めたサマンサの想いの切なさ。
だから、このシーンはそんな切なさを感じさせてくれる。

けれど、言葉は悪いが彼女の想いは実は叶えられたのだ。
結局の所、帰る事が出来なかったサマンサ。
「帰りたくない」
戦地に留まるという危険を麻痺した感覚故に忘れていたのだろう。



非常事態に置かれても日常を生きてしまう人間の性。
非常事態に置かれても日常を生きざるを得ない人間の性。
そんな人の性が愚かしくも哀しく感じる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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