森崎書店の日々  
2013.08.22.Thu / 17:56 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






突然の失恋で失意のどん底にいた女性。
しかし、最後には立ち直る。
自分の足で歩き始める。

いままでは何も見えなかった。見てこなかった。
相手の男の正体、そして彼との付き合い方。

心が豊かになる、本との出合い。
そして、人との出会い。街との出会い。

他の人の人生にも、自分以上に哀しいことが沢山ある。
そんなことを知る。

自分という存在には価値がないと思い込んでいた。
けれど、実は人を助けていたという不思議な縁。

それらが彼女を癒してゆく。

一人の女性が失恋から立ち直る過程を描いた、
とても優しい映画。


世界最大の本の街、神保町。
緩やかな時間の流れの中で暮らす、本を愛する心優しい人々。
こんな不思議な街ならば一度は住んでみたい。
そう思わずにはいられない、本と神保町の魅力が詰まった映画。





この人を私は恋人だと思っていた。
しかし、この人は私のことを遊んでいただけ。
突然の別れに戸惑い、何も言えない。
だから苦しくて会社も辞めてしまった。
そんな失意の底にいる貴子さん。
けれど、映画の冒頭で描かれる彼らの会話からは、
このような事態になるであろうことは容易に想像できる。
一方的な会話。相手の関心事を頭から聞こうとしない。
他の女性と結婚することを告げられた直後の男からの台詞。
「それで今日はどうする?おまえんち、行く?」
これは男の誠意の無さと二人の関係が端的に示されている、
とても絶妙な台詞。

自分は遊ばれていただけだった。
相手のことが何も見えていなかった。
だから何も言えなかった。
それは自らを傷つけてしまった大きな人生の過ち。
けれど、なかったことにはできない。
いくら休んでも、忘れることができない。
コインランドリーに写る貴子と男の姿。
俗に言う、心よりも受け入れてしまった体が忘れられない、
という表現を映画の雰囲気を壊すことなく上手に描いている。
これも絶妙なシーン。


叔父の勧めで移り住んだ神保町。
そこでの新しい出会い。
一冊の本を読み終えた貴子の満足げでとても幸福な表情。
新しい世界を知り、本に描かれた人の生き方に触れ、
豊かで複雑な他人の人生を感じる。

神保町に住む本が好きな心優しい人々。
自分を誘いにきたと思った青年が、
実はとても純情な心の持ち主で好きな人に告白できないでいる。
それが、微笑ましくも、いじらしい。思わず応援したくなる。
きっと貴子さんも同じように感じ、幸せな気持ちになったのだろう。

とても親切な叔父。
過去の傷と決別するために叔父に進められた、自分の気持ちを告げる事。
それは少し危険な賭けのように思えたが、
結果として貴子さんの心を軽くすることができた。
叔父の人生も平坦なものではなかった。
自分の生き方を見失い、失意の中でさ迷い、今の場所にたどり着いた。
その失意を救ったのは貴子さんの存在。
それは、とても不思議な縁。
そんな事実が貴子さんの心に光を差し込む。


今という時間を無駄に過ごしているのでは、、、
そんな不安に駆られる貴子さん。
けれど、実は厳しい言い方をすれば、無駄に過ごしていたのは、傷つく前から。
新しいことに触れて自身を見直すことができた。
だからこそ感じる不安。
今を何もしないで生きている焦りなのかもしれないが、
それは新しい出会いがもたらした貴子さんの変化、のようにも感じられる。


この街を出て行くことを告げた貴子さん。
それは、まだ先の話。
けれど、それは叔父に対する一種の感謝の言葉なのだろう。
おかげさまで一人で歩き出す決心がつきました、という感謝の想いなのだろう。



失意の中にいた貴子さんが、失恋から立ち直る。
本との出会い、人との出会い。他人の人生とのふれあい。
そして自分に注がれる愛情、不思議な縁。
その全てが貴子さんの気持ちを癒したのだろう。
もう少し、本と街がもたらした貴子さんの変化を表現できていれば、
なお良かったように感じられる。

とても優しい映画。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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