桐島、部活やめるってよ  
2013.10.10.Thu / 22:06 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






届かない片思い。
努力しても上達しない技術。
他人からは理解されない嗜好。

大雑把な分け方かもしれないが、
学生時代には2種類の人間がいる。
どんなに努力しても報われない人と、
努力をしなくても、何でもそつなくこなせる人。
そこには圧倒的で、とても残酷な隔たりがある。
特に当事者たちには、そのように感じられてしまう。
けれど、それが圧倒的に感じられるのは、
学校という狭い空間だからこそ、なのだろう。

さらに、両者は、
劣等感に向き合えることが出来る人と、
劣等感が見えないふりをする人。
と言い換えることもできるのだろう。

または、
自らが好きなことに惜しみなく努力が出来る人。
自らの限界を直視できずあきらめてしまう人。
とも言い換えられるのだろう。

そして一見すると何でもそつなくこなせる人は
勝ち組のように見える。
けれど、実は逆なのだろう。

好きなことにのめり込む純粋さ。
それを失ってしまう危うさ。
そして、実はそれはとても残酷なこと。

そんな残酷さがとても痛く感じる映画。





桐嶋を友人だと思っていた人、恋人だと思っていた人。
彼らは桐嶋と居れば人生が順風満帆だと感じている。
桐嶋は誰もが認める、勝ち組エリート。
彼と居れば、自分も、その仲間だと錯覚できるから。
努力などしなくても、人生の勝ち組だと錯覚できるから。
桐嶋と居る理由は、自らの劣等感や限界を直視したくなかったから。
しかし、部活を辞めようとしている桐嶋。
桐嶋組に属さない人々。
叶うはずのない恋心。
理解されない自分の世界。
努力しても適わない目標。
彼らは、勝ち組に対するコンプレックスや
自らに劣等感を抱えながらも、
この世界で生きていかなければならない。



「結局できるやつは何でもできるし、
 できないやつには何もできないっていうだけの話だ」
当事者にとっては、両者には大きな隔たりがあるように感じてしまう。
しかし、それは違うのだろう。
学校という狭い世界。周りから与えられる分かりやすい目標。
それらが視野を狭くし、出来る者と出来ない者の差を開かせてしまう。
けれど、世界は広くて雑多で多様。
簡単に、出来る者と出来ない者とには括れない。
しかし、当事者には、それが見えない、分からない。


映画部に属する前田くん。
純粋に映画が好きで、その世界にのめり込んでいる青年。
教師から与えられた脚本を無視して、
自分が撮りたい映画を全力で撮ろうとする。
映画監督を目指しているわけではない。
賞を取るという目的があるわけでもない。
好きだから撮る。ただ純粋に。

吹奏楽部に属する沢島さん。
決して叶うことのない片思いを抱え、
それでも諦め切れない。偶然を装い付きまとう。
勝ち組から見ればみっともないくらいに往生際が悪い。
だから見せ付けたくなるのだろう。
けれど叶うから諦めない、叶わないから諦める、
という次元の話ではないのだ。
好きだから諦められない。
しかし、心に決着をつけて新しい一歩を踏み出す沢島さん。

この世界で生きていかなければならない。
それは恋愛が叶わなくても、映画監督に成れなくても。
そんなことを覚悟して、それでも好きなことに打ち込んでゆく。


何でも、そつなくこなせる宏樹。
練習には参加しないのに、しかし野球の試合には呼ばれる青年。
どうせプロには成れない。だから練習しても意味がない。
そこそこに上手な自分は練習しなくても、今ならば、勝ち組。
だから、さらに上などを意識しなくても生きていける。
と考えていたのだろう。

けれど、桐嶋の退部、キャプテンの言動、前田くんの台詞。
きっと本当は、宏樹は野球が大好きだったのだろう。
けれど、好きなものに打ち込むことが出来なくなってしまった。
それは宏樹が特別なのではなくて誰もが陥ってしまう罠なのだろう。
そして無駄に時間を潰し、気づいた時には手遅れ。
最後には、昔には戻れないと後悔にも似た痛みを感じたのだろう。

好きなことに打ち込める時間と意識しなければならない将来、自分の能力と適性。
高校時代は微妙な時期なのだろう。



好きなことにのめり込む純粋さ。
その純粋さを簡単に失ってしまう危うさ。
そして、実はそれはとても残酷なこと。
なぜなら、あとで後悔しても手遅れだから。

そんな残酷さがとても痛く感じる映画。









両方の気持ちが分かる、かすみ。
彼女はとても微妙な立場。
梨紗や沙奈と話をあわせ、
努力しても報われない実果を気遣い、
前田くんを心からはバカにはできない。




なぜ桐嶋は部活を辞めたのか?
その理由は明確には述べられていない。
友情ではなくて打算で彼に群がってくる人の相手をするのが、
嫌になったから、と思えてならない。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1132 / タイトル か行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!

好きなものに純粋にのめり込む事ができるのは
幸せな事なのに、
学校という狭い空間では、違う価値観が出来上がっていて、
誰もがその中でもがいているんですね。

それを外からの視点で描いていて、
高校生当事者の錯覚や苦しみが痛く感じられました。

でもそういうのも青春なんですよね☆

2013.10.16.Wed / 17:32 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

自身の能力の無さに劣等感を感じたり、
好きなことにのめり込めず、醒めた日々を送ったり、
学生時代は痛いことばかりなんでしょうね。
青春とは実はネクラな時代なのかもしれません。

それじゃ、また。

2013.10.17.Thu / 21:55 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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