グスコーブドリの伝記  
2013.10.24.Thu / 22:19 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






原作は未読です。



人は人の犠牲の上によって生かされている。
それを知れば人は謙虚に生きることも出来るのだろう。
そして、他人のために、自らを活かすことを考えるようになるだろう。

産業や科学は世界を幸せにする場合もあれば不幸にする場合もある。
それを知れば人は欲に目がくらむことも無く、
大自然とともに生き、理想的な世界を創ることができるはずだ。

幻想的なシーンや美しい自然。
それらを背景に宮沢賢治の世界を強く感じさせてくれる映画。


ただ、死や自己犠牲を直接描くことを避けたがために、
主張がぼんやりとしてしまった感が否めない映画。






豊かな自然の中で暮らす、ブドリ一家。
しかし、彼らを飢饉が襲う。
家を出て行ってしまう父と母。
連れ去られてしまった妹のネリ。

父親が出ていてしまった理由は、この映画では明示されていない。
あまりの悲惨な状況に気が狂ったのか、
もしくは、気がふれたふりをして口減らしのために死を選んだのか。
しかし、母親が出て行った理由は明らかに口減らしの為なのだろう。
そして、ネリを連れ去っていったのは、死神なのだろう。
だから、ネリは飢饉で死んでしまった、ということなのだろう。
急げ、急げと、金儲けの為にせわしく働かされる人々。
家はいつの間にか自然を汚す排煙を撒き散らす工場に。
しかし、時を逸したために、すべては無となってしまった。

これは、多分、ブドリは、住んでいた家を資本家に搾取され、
過酷な状況で長時間労働を強いられ、
そして、すべてを失ってしまった、
ということなのだろう。
世間を知らず、力も弱いブドリ。
そんな人の弱みに付け込み、儲けようとする人々も、いるのだろう。


山を降りて赤ひげの元で暮らすブドリ。
懸命に働き、懸命に勉強する。
そして、学問が農業を助け、人を助けることを知る。
それを、とても素晴らしいことだと感じたのだろう。
しかし、遺憾ともしがたい、冷害。


イーハトーブは科学と自然、人々の生活が見事に調和した、理想的な都市。
そこで火山を研究する仕事に就くブドリ。
火山の噴火から人々の生活を守り、しかし、自然に抗うわけでもない。
自然の流れを変えて人々を守る。だからこそ、ブドリは思わずにはいられなかったのだろう。
冷害でも流れを変えることができるのではないか、と。
そして、冷害を防ぐために自身を犠牲にする覚悟を決めたブドリ。


自己犠牲は映画では、とても扱いが難しいテーマだ。
美しく見えるが故に、簡単に感動でき、洗脳されやすい。
自己犠牲を否定する人は、その人間性を理屈抜きで批判されてしまう可能性もある。
この映画では、そのあたりが、とても曖昧に感じられる。


原作とは大きく、かけ離れるのかもしれない。
それでも、ブドリには生き残って欲しかった。
冷害を防ぐために自身を犠牲にする覚悟を決めたブドリ。
しかし、皆が最後にはブドリを助ける。
そんなラストでも良かったのではないかと思えてならない。
皆の為に、何ができるかを考え、皆を助けることも大切ではあろうが、
皆や自身の為に生き続けることも、また大切なのだから。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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