夢売るふたり  
2013.10.24.Thu / 22:25 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






二人ともに同じ夢を見ていると思っていた。
しかし、離れていく夫の心。
夫が本当に欲しかったもの。
そして、自分が目指していた夢とは、、、

軽薄に生きてきた人々から、
お金を巻き上げるつもりだった。
後で返すことにして、心を誤魔化していた。
しかし、歪んだ生活が二人の関係をも歪ませてゆく。


懸命に禁欲的に努力した。
しかし目指した夢は幻。
夫もついて来てはくれない。
最後に二人は再び元の鞘に収まるのか?
それとも別々な道を歩むのか?

懸命に幻を追い求めた女性の、
空虚さが虚しくも哀しく、愛おしさすら感じさせてくれる映画。




小さな居酒屋を営む夫婦。
しっかり者で堅実な妻、里子。
誠実だが、少し抜けている夫、貫也。
居酒屋が消失し再出発を余儀なくされる二人。
夫婦の夢は再び店をもつ事。
貫也が納得できる料理で客をもてなすこと。
その夢の為、勤勉に働き始める里子。
途方に暮れて、くだくだになる貫也。
そしてあまりに強い里子から感じるプレッシャーが、ますます貫也をぐだぐだにする。

そんなプレッシャーから逃げる為であろう、貫也がしてしまった不倫。
貰ったお金を、貫也が、どう言い訳するのかと見ていたら、まったくの無為無策。
貫也が間抜けすぎということもあるだろうが、
それだけ、追い詰められていたということでもあるのだろう。

この映画は、それぞれのシーンはとてもリアルに描かれているにも関わらず、
各々のシーンの繋がりを補完するには、説明が不十分だと感じる。
だから、様々な解釈が成り立つし、あたりまえではあるが、
それは個人に依存するとも思う。
里子が結婚詐欺を始めるのも唐突過ぎて動機も分らない。
順当に考えれば夢を叶えるため、ではあろう。
それは、貫也を立ち直らせ昔の幸せな生活を取り戻すこと。
それ以外にも、貫也が言う復讐も十分すぎる理由ではある。
そして、里子は貫也に指摘されるまでは、それを意識していなかったのかもしれない。

夢の為に、とても真面目に勤勉に働き続けた里子。
しかし、思わず手に入れた大金、それは、とても軽薄に感じられる手切れ金。
ある意味で、とても優等生的な里子には許されざる世界がそこにあることを、
知ってしまったのだろう。
復讐というよりも許されざる世界を否定したかった。
許されざる世界の住人を騙しお金を巻き上げることで、
彼らの生き方を否定したかったように、私には思えてならない。


詐欺を順調にこなし二人の夢の実現に邁進する二人。
しかし、お金は借りただけ、いつかは返す、と誤魔化しても罪悪感は消えない。
なぜなら許されざる世界に住んでいる軽薄な人々と考えていた相手が、
実は自分の考えを持ち真摯に人生を生きていることを知ってしまったから。
そんな人々を騙すことに疲れた貫也。
自分が実は空っぽであることを感づき始めた里子。
このままでは夫が、別な人に魅かれるのを止めることができないだろう。
自分自身の夢は何?何を自分はしたいのか?
今まで貫也の夢と自分の夢は同じだと思っていた。
けれど、自分は自分の人生を生きているのだろうか?

もう結婚詐欺など、やりたくはないと考えている貫也。
しかし、初めてしまったことは止められないと考えている里子。
だから、貫也は里子にはついていけない、逃げ出したいと感じたのだろう。
二人の夜の営みがないのも、表向きは結婚詐欺をする為。
けれど、貫也が里子には、もう、ついていけないと感じているからではないのだろうか?


貫也が欲しかった物、それは暖かくて居心地の良い家庭。
子供と過ごす時間。安心できてリラックスできる家。
今までは店の為に、すべてを犠牲にしてきたのだろう。
それを知ってしまった里子。
店を持つことが二人の夢だったはずなのに、、、、
夫の裏切りにも似た行為が許せない。
だが、実は、それは逆恨みなのだ。
子供の手を振り払い、同時に抱きついた里子。
逆恨みであることを里子はよく分っていたからなのだろう。
それが、とても哀しく感じられる。


子供を庇うというよりは今の生活から逃げたかった貫也。
詐欺で奪ったお金ではなく、燃やしてしまった手切れ金を返した里子。
今ならば、そのお金が軽薄なものではなく、
何かしらの想いがこもったお金であることを理解できたからであろう。
詐欺で巻き上げたお金は彼女たちが、騙されたとはいえ、
自分の生き方と意志で払うことを決めたお金。だから返す必要はない。
けれど、あのお金はあるべきところに返さなければ、
と考えたからであろう。


同じ夢を見ていたと錯覚していた。
それは店が燃える前からだったのかもしれない。
店が燃えなかったら二人とも気付かなかっただろう。
様々なことをガマンして店を持つことを夢にして生きてきた。
しかし、その夢を里子は夫に押し付けていたのかもしれない。
そして別な夢もあったのだろう。
だから夫の心は離れていってしまった。
再び、生活を共にすることはあるのだろうか?
そのあたりはわざと曖昧にして描いている。
ただ、里子が方法はともかく、懸命に生きていたことは事実だと思う。
その結果が、このラストであり、それは自業自得というには、あまりにも哀しすぎる。
希望は無いのかもしれないが、二人が共に生活をし、
本当の夢に向かって生きていくことを願わずにはいられない。

ラストに映し出される里子。
里子の目は死んではいない。強く生きる力を感じる。
なにか吹っ切れたような、なにかを覚悟したような目にも見える。
果たして里子は、これからをどの様に生きるつもりなのだろうか?

懸命に幻を追い求めた女性の、
空虚さが虚しくも哀しく、愛おしさすら感じさせてくれる映画。


* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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