八日目の蝉   
2013.11.21.Thu / 13:30 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






他人の娘を我が子と同じか、それ以上ので愛情で育てる。
娘が奪われてしまったことに深く苦しむ。
まだ見ぬ子供にさえ、愛情がわく。
それほどまでに強い母親の愛情。

その強さによって、女性は苦しむのかもしれない。
しかし、その強さ故に、
苦しみや不安に耐えられるのかもしれない。


普通の環境で育たなかった。
娘を普通に育てられなかった。
人とは違う風景を見てきた人々。
それ故に苦しむ、後悔を抱える。
しかし、人とは違うからこそ、感じることもある。

善悪という基準では簡単には計ることができない、
母性の強さに心がうたれる映画。




不倫をし、堕胎をして、子供が生めない体になってしまった。
そして愛人の実子を誘拐し、自分の子供として育てた女性、希和子。

その希和子に四歳まで育てられた、恵理菜。
自分に注がれた希和子の愛情を、実の母親の為に否定してきた女性。

なぜ、希和子は恵理菜に実の子供に対するのと同じか、
それ以上の愛情を注ぐことができたのか。
「あんたなんか、空っぽの、がらんどうなの。
 赤ん坊を引きずり出して殺したんじゃない。
 あんたが空っぽになったのは、その罪じゃないの?」
この台詞は、夫を奪われそうになった恵津子の、
希和子を苦しめる為の憎しみの言葉なのだろう。
しかし、希和子にとっては、その言葉は真実だと感じたのだろう。
自分は空っぽで、それは子供を殺してしまったことによる罰。
そして、子供を見ていると罪が許されたように感じられる。
もしかしたら、
母親は自らの空虚さを埋める為に子供を愛するのかもしれない。
その考えには、納得できそうな感じもするが、一方で、
その感想自身、男の勝手な思い込みのようにも感じられる。


実の娘の体ばかりか心まで奪われてしまった女性、恵津子。
帰って来た娘に、いくら愛情を注いでも娘は自分を受け入れない。
そう、思っていた。
けれど、それは間違いなのではないのだろうか。
恵理菜は自身の大切な記憶を否定して生きてきた。
それはきっと、母親の為なのだろう。
しかし、そこに思いは至らない恵津子。

「なんであの時、車に乗せなかったんだろう。
 なんであの時、家に置いてっちゃったのかなあ」
そう後悔してしまう気持ちは痛いほど良く分る。
けれど、見つめなければならないのは、そこではないのだろう。


空っぽになんか、なりたくはない。
そう思って身篭った子供を生もうと決意した。
それは、自身の不幸な生い立ちと、
他人と上手に交流できない今が、恵理菜に、そう思わせたのだろう。
やはり、母親は自らの空虚さを埋める為に子供を愛するのだろうか?


今を抜け出したいと考えていた、千草。
一人では出来ないが、恵理菜とならば出来るのかもしれない。
彼女もまた、不幸な過去を背負った女性。
きっかけさえ掴めれば人は自身の不幸な過去からすら、
何かを感じ、何かを得られるのではないのだろうか?



娘を普通に育てられなかった母親たち。
普通ではない環境で育った娘たち。
八日目の蝉は仲間が見ることが出来ない景色を見ることが出来る。
他の蝉とは違うということで寂しさを感じるのかもしれない。
けれど、他の蝉たちが経験できなかったことから、多くを感じることができる。
それは自分の気持ち次第なのだろう。

なぜ、希和子は、恵理菜に実の子供に対するのと同じか、
それ以上の愛情を注ぐことができたのか。
なぜ、恵理菜は、まだ見ぬ子供に愛情を感じることが出来たのか。

「この子は、まだ晩御飯を食べていません。よろしくお願いします」
ついに警察に追いつかれ捕まりそうになった、希和子。
娘の安全を第一に考え、先に船に乗るように諭した。
自分の事よりは、娘にひもじい思いをさせたくは無かった。
それほどまでに強い娘に対する愛情。

「不思議だ。わたし、もうこの子のことが好きだ。」
希和子からの愛情を頭で考えて否定してきた恵理菜。
しかし蘇ってくる感情が、恵理菜に母親の感情をもたらしたのだろう。


母親は自らの空虚さを埋める為に子供を愛するのかもしれない。
しかし、それ以上に、与えられた愛情故に子供を愛するのだろう。
そうやって、愛情は受け継がれていくのだろう。

善悪という基準では簡単には計ることができない、
母性の強さに心がうたれる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1144 / タイトル や行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!

母性・・・子供を愛する気持ち・・・
女性としては当たり前に存在すると思っていたので、
母性に関して、こうだろうか?といろいろ考える所が、
ほう~男性目線だな~って思いました。

この映画では、愛情は受け継がれていくものと描かれてましたね。
自らの空虚さを埋める為・・・ちょっと違うかもしれませんが、
希和子には、贖罪の気持ちを感じました。

強い母性に打たれて、本作は泣けましたね~(;_;)

2013.11.25.Mon / 17:38 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

まあ、いろいろと考えてしまうのは、
男性目線というよりは、私固有のことかもしれません。

愛情は受け継がれていくものという印象を持ちましたが、
自身が愛された記憶や経験が他人を愛する力を生む、
と言い換えられるのでしょうね。

最初は、希和子は亡くした子供に対する償いの気持ちが
あったのかも知れませんが、
育てているうちに本当の子供のように思えたように
感じました。
ラストシーンには泣かされましたね。

それじゃ、また。

2013.11.26.Tue / 21:51 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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