孤島の王  
2014.01.16.Thu / 17:54 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






人は抑圧では更生はしない。
恐怖の心からは善の心は生まれない。
どんなに弱き者でも虐げられれば暴発する。
だから強制は最善の教育にはならない。
そんなことを言いたい映画なのかもしれない。

しかし、私がそれ以上にこの映画から感じたこと。
それは、人は何を糧に生き延び、
大人になることが出来るか、ということ。

嘘と偽善にまみれた大人たち。
しかし、友人が見せてくれた真実。
きっと青年は、その真実を見たからこそ、
最後まで生き延びることが出来たのだろう。
世界に絶望することなく。

友が命を掛けて示してくれた真実が輝く映画。



ノルウェーに実在した少年更生施設、バストイ島。
過酷な環境で労働を強いられる少年たち。
彼らが過去にしてしまった罪は詳細には語られない。
彼らの罪や反抗的であっただろう過去から、
抑圧的更生の方法が採られたのかもしれない。
けれど幼き少年たちには過酷過ぎる環境。
彼らは反抗心どころか、
生きる力さえ奪われてしまっているように感じられる。
そんな島に送られてしまった、エーリング。
収容されている青年たちのリーダー、オーラヴ。
6年もここに居て、ここを出ることだけを望んでいた青年。
だから、エーリングにも優しく接し、
自分が卒院するまでは大人しくして欲しかったのだろう。
しかし、脱走を試みるエーリング。
そして、オーラヴに問う、自分だけが逃げられて、それでいいのか、と。

寮長に性的虐待を受けていた青年を前にし、
勇気を奮って、それを告発するオーラヴ。
エーリングの言葉に心を打たれたからであろう。
卒院をふいにするかもしれない。
けれど、オーラヴの心根は純粋で不正は放置できないと感じたのだろう。
しかし、自殺してしまう青年。

処罰を受けたと思っていた寮長が実は許されていた。
今まで自分たちに高潔で謙虚な心を教えようとしていた大人たち。
しかし、彼らは汚れて自らを正すことさえ出来ないでいる。
そんな大人には思わず反発してしまったオーラヴは、
院卒をふいにしても寮長に殴りかかる。
それこそが、実は、彼が更生したという証なのだ。
それは、大人たちからの虐待からではなく、
友が彼に投げかけた言葉と友情とによるのだろう。


院長には子供たちに対する愛情や思いやりの心はあったのだろう。
そして、自分の教育が正しいという信念もあったはずだ。
けれど、自分の間違いを正すことが最後まで出来なかった。
それ故に、少年たちに見限られてしまったのだろう。

暴動が起こり、しかし、寮長を殺さなかったエーリング。
復讐が彼の目的ではない。
間違いを正したかった。ただ、それだけの思いだったからなのだろう。


野生の鹿に導かれ島からの脱出を試みる、エーリングとオーラヴ。
このままでは二人ともに助からない。
そう考えたエーリングは、自分を見捨てるように諭す。
それは友が友に示す、相手に対する真実の気持ち。

手紙の主が姉だったことを告白するエーリング。
それまでは友人に対する見栄からか、その事実を告げられなかった。
しかし、死に逝く直前に真実を語りたかったのだろう。
姉によろしく伝えて欲しかったという思いもあったのかもしれない。


最後に、島を再び訪れるオーラブ。
友のおかげで助かり、生き延びることが出来た。
そして、その後の人生をまっすぐに生きることが出来たように見える。
そのすべては、エーリングが示してくれた友情と真実からなのだろう。


鯨が何の象徴なのか、それは明示的には示されてはいない。
私が鯨から感じたのは、彼らの純粋なる想い。
友人や仲間に対する誠実さ、いたわり。
不正に対する怒り、憤り。
それらは、どんなに抑圧してもしぶとく生き残る。
そんなことを感じた。


抑圧は最善の教育にはならない。
そんなことを言いたい映画なのかもしれない。
しかし、それ以上に感じたのは、
人は何を糧に生き延び、大人になることが出来るか、ということ。
友が命を掛けて示してくれた真実が輝く映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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