もうひとりの息子  
2014.02.20.Thu / 16:15 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






取り替えられてしまった子供。
それは単に家族の問題だけではない。

民族や宗教の問題。
占領する側と占領される側の問題。

過去は水には流せない。
どちらに属するかは重要なアイデンティー。
それらが頭から離れない限り、
これはとても複雑で難しい問題。

しかし、これは単に家族が増えただけ。
母親は二人に、父親も二人に。
どちらも自分を愛してくれる。
そんな事に気付いた時、心が軽くなる。

今までの人生を生きていこうと決めた二人。
決めるまでの葛藤。
今までは見えてなかったものが見えてきた故の和解と結論。
そして、決意と希望。

過去に囚われてしまった世代では難しいのかもしれない。
けれど、若い生きる力が、きっと未来に平和をもたらしてくれる。
そんな力強さが清々しく感じる映画。



生まれたばかりで取り違えられてしまった息子たち。
それは戦時という非常時とはいえ、あってはならない間違い。
その間違いを前に取り乱す家族たち。
すべてを秘密にして胸の中にしまいこみ、
今までと同じ生活をしようとする父親たち。
世間や近所、友人たちに知られたのなら、
とても厄介で面倒な事態になってしまう。
それでも、母親たちは全てを息子に語ろうとする。
この違いが、とても興味深い。

自らの気持ちの整理がつかないままに真実を告げてしまった。
だから、よりいっそう混乱してしまう息子たち。

今まではユダヤ人として生きてきた。
しかし、突然違うといわれてしまった。
自らの存在に悩むヨセフ。
血が繋がっていないというだけで、それまでの信仰や生活を否定されてしまう。
ユダヤ教は単なる宗教では無いのだろうが、
それでも、その決まりには疑問が生じてしまう。

フランスに留学していたヤシンは、
比較的容易に、その事実を受け入れてきたように感じた。
留学という経験が、彼の中に柔軟な思考を育てたのだろう。

今までは仲がよかった兄が弟を嫌いになる。
それは、とても複雑な感情なのだろう。
信じていたのに裏切られた。
占領している人間は憎しみの対象。
そして、成績優秀な弟に対する嫉妬もあったかもしれない。

過去を容易には忘れることが出来ない父親たち、そして、兄。
だから苦しむ。憎む。相手と素直に向き合えない。
それは民族の問題も同様だ。
過去に囚われていたのでは容易に解決はしないのだろう。


一時の混乱が収まり徐々に交流を深める家族たち。
生活レベルの違い。収入の違い。
大きな違いが家族の間には存在はする。
けれど、歌を歌い、愛情を確かめ、交流する姿を見ていると、
人は様々な違いも乗り越えられるのではないかと感じる。


今まで育ててくれた母親は本当は自分が産んだ息子を愛しているのでは、、、
そんな嫉妬も感じるヨセフ。
今まで世界は単純であり、自分のやりたいことをやればよかった。
しかし、今では考えてしまう。
自分の存在、そして生き方。未来について。


浜辺で傷を負い病院に運ばれたヨセフ。
兄弟が自分を心配してくれる。生きていることに感謝してくれる。
両親も病院に来てくれる。4人の両親が。
実は問題と感じていたことは単純なこと。
母親は二人に、父親も二人に。兄弟も増えた。
どちらも自分を愛してくれている。


過去に囚われれば事態は複雑だ。
けれど、今を受け入れられれば道は開ける。
お互いを思いやり、お互いにとっての最善の道を模索することも可能なのだ。



今までの人生を生きていこうと決めた二人。
悩み、苦しみ、葛藤した。
けれど、相手も自分と同じ人間。相手を愛すれば愛が還ってくる。

自分は自分自身の人生と、もう一人の自分が歩んだであろう人生を歩む。
その事実に、未来への決意と責任、人生の価値を彼らは感じたのだろう。
しかし、一人ではないという事実に勇気づけられたのだろう。


過去に囚われてしまった世代では難しいのかもしれない。
けれど、若い生きる力が、きっと未来に平和をもたらしてくれる。
そんな力強さが清々しく感じる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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