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  少女の髪どめ  
2014.03.20.Thu / 17:22 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






人を恋するという感情を知らなかった青年。
使うあてもないのにお金に執着し、
心無い悪口を怪我人に浴びせ、
同僚と些細なことで喧嘩をしてしまう。

しかし、人を恋するということで目覚める感情。
最初は恋する人を救いたかった。
けれど、それが難民たちへと対象が広がっていく。
それでも、青年は何もできない。
悲惨な状況から救い出したい。
けれど、彼ができるのはお金を工面することだけ。
切なくてもどかしい。無力感にさいなまれる。
それでも何もしないよりはマシなのだろう。

最後に魅せた少女の微笑み。
すべてを知っているわけではないが、
青年の真心は彼女に伝わったのだろう。

初恋を知った青年の成長。
難民たちの救い難き苦難と窮状。
それらが見事に融合して映画として成立している。

寡黙な少女と青年の変化。
台詞には現れない彼らの感情が見事に画面からは読み取れる。

まさに、これが映画なのだと感じられる映画。



工事現場で給仕の仕事についている、ラティフ。
買出しのお金でチョコレートも買う。
二階から落ちてしまった男に心無い悪口を言う。
使う目的もないのに小銭を貯める。賃金をせびる。
あまり好青年とはいえない男。
一家の主が怪我をしたため働かざるを得なくなってしまったラーマト。
少年のように偽って働き始めるが、しかし、ラーマトは実は少女。
一番楽な給仕の仕事に就き、
代わりに肉体労働をしなければならなくなってしまったラティフ。
ラーマトの家の事情など関係はない。だから面白くはない。
ラーマトに悪態をつく。仕事の邪魔をする。
しかし、知ってしまったラーマトの正体。
この心変わりには正直ついていけなくもないが、
初恋という感情に心が傾くのはあることなのかもしれない。


ラーマトの正体をしってしまったラティフは、純情一途。
従業員に責められるラーマトをかばったり、
自分のために置かれたお茶に感動したり、
影からラーマトのことを見守ったりと、
とても健気で微笑ましい。
けれど、ラーマトはアフガニスタンからの難民。

役人に追われるラーマトを必死に庇うラティフ。
役人を追い抜くほどの全力疾走が彼の本気度を物語る。
しかし、職場を失ってしまったラーマト。


ラーマトに髪どめを返すためにラーマトの家を訪れるラティフ。
一本の髪の毛を見つめる眼差しが熱くて、それも微笑ましい。
しかし、知ってしまう国を追われた人々の苦難。
女子供でさえ過酷な労働を強いられる。
逃げ帰りたくても故郷は戦場。
国に残った人々の更なる窮状。
ラーマトを救いたいという想いは、
次第にラーマトの家族を救いたいという気持ちに変わっていく。
そして、彼ら難民を助けたい。

一年分の給料を要求するラティフ。
その悲痛な叫びは、今まで何の目的もなく金をせびっていたのとはわけが違う。
それを理解したからこそ、棟梁は無理をしてラティフの想いに答えたのだろう。
しかし、そのお金は別な一家に渡されてしまう。
きっと、今までのラティフならば怒り狂っていたかもしれない。
けれど、今のラティフになら、お金を渡してしまった理由も十分に理解できるのだろう。

貯めた小銭をラーマトの父のために使う。
自らのIDを手放してまでもお金を工面する。
彼ら難民を助けたいが、如何ともし難い現実。
だからこそ、できることの全てで助けたい。
ラティフの必死さが美しくも哀れで、胸にせまる。

ラティフの工面したお金で祖国に戻るラーマト一家。
祖国に戻れても未来は暗い。けれど戻らなければならない。

最後にラティフに微笑みかけるラーマト。
全てを知っているわけではないのだろう。
けれど、ラティフの真心は伝わったのだ。
この一瞬の微笑が、ラティフの望んだ全てであり、
これからのラティフの人生を明るく灯すのだろう。


初恋を知った青年の成長。
難民たちの救い難き苦難と窮状。
台詞は少なくとも十二分にそれらが伝わってくる。
情緒溢れた、これが映画なのだと感じられる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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