さよなら、アドルフ  
2014.03.27.Thu / 17:33 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






信じていた世界、安心して暮らせた世界。
それらが突如として崩れ去る。
価値観が崩壊し、そして知るのは、
世の中は偽りばかりだということ。

一人の少女に課せられた妹たちの命運。
それは幼い少女には重過ぎる責務。

めぐり会った一人の青年。
助けて欲しい。それは重過ぎる責務からだけではない。
壊れてしまった自分の価値観、信じていた世界。
何を信じて生きていけばいいのか、教えて欲しかったから。

最後に知る、青年の正体。
そして、ユダヤ人は自分たちと何も変わらないこと。

祖母に反発したのは、少女が過酷な経験の後に、
自分自身の価値観を構築しつつあるということなのだろう。
大人の言うなりに生きるのではなく、
自分の信じる生き方をする為に。

幼い少女が知るには過酷な現実。
しかし、その過酷さに負けない想いが、
少女の中に芽生えつつある。
とても悲惨な映画、けれど少女の輝きが印象的な映画。





第二次世界大戦末期。
ドイツで平和に暮らしていた少女、ローレ。
両親はナチスの高官であり、裕福に暮らしていたことが想像できる。
しかし戦争は負けて、両親は投降し、
遠い祖母の家までの逃避行を強いられてしまう。
今までの平和と安心は、もろくも崩れ去る。
そして、ローレは知ってしまう。
その平和と安心は、偽りの上に成り立っていたということ。
祖国の為に勇敢に戦っていたと思っていた父が成したこと。
信じていた総統、そして最終勝利。だが、それらも全て偽り。


逃避行の途中で出会った青年、トーマス。
唯一、頼れる存在。しかし、男であり、ユダヤ人。
反発する心と受け入れたい心。
彼を受け入れるということは、それまで教えられてきた全てを捨てること。
偽りの上で、教えられてきたこととはいえ、
今までの全てを簡単には捨てられない。
けれど、生きる為には受け入れなければならない。
そして、トーマスという青年に魅かれている自分を否定はできない。
それは性の目覚めにも似ているのかもしれない。
体験することに憧れる。けれど、いけない事だと教えられている。
自分の思いに素直に従いたい。けれど、怖くてできない。
自分が引き返せる所までは相手に許す。けれど、
相手が本気になれば怖くて引き返してしまうローレ。


橋が壊された河を渡るためだけに、人を殺してしまったローレとトーマス。
そうしなければ生き延びれなかった。
だから、あの瞬間には殺してもいいと思った。
けれど、事が済んだ後では汚れてしまった自分を自分が許せなかったのだろう。


列車に乗ることができた、しかし、検問にあってしまった。
別れざるをえない、二人。


トーマスという名前は偽名。
彼の正体は判らない。だから、もう二度とは会えない。
ローレが感じるのは、きっと後悔にも似た感情。

彼の財布にあるのは本物のトーマスの写真。
とても幸せそう。けれど、多分彼らは、もう居ない。
私たちが殺してしまったからだ。


大人の言うことに疑問も持たずに従ってきた。
平和だったけれど、それは偽り。
もし大人の言うことを鵜呑みにしていなければ、
こんな悲惨な逃避行をせずに済んだかもしれない。
もしかしたら、ユダヤの人々のことを理解できていたかもしれない。
きっと、心の趣くままにトーマスに体を許していただろう。
そして、こんな後悔をせずに済んだかもしれない。



とても悲惨な映画。
その悲惨さに負けそうになるオーレ。
それは肉体的にではなく精神的に。
なにも信じられなくなってしまった自分自身に。
けれど、最後には祖母に反抗するオーレ。
反抗するということは、真実を見つけ出しつつあるのだろう。

大人の言うことは嘘ばかり。
けれど、トーマスの優しさの中には真実があったと感じたのだろう。
たとえ、トーマスが悪人であったとしても。


幼い少女が知るには過酷な現実。
しかし、その過酷さに負けない想いが芽生えつつある。
それは、きっと自分の生き方を求めてる力になるのだろう。
とても悲惨な映画、けれど少女の輝きが印象的な映画。


* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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