それでも夜は明ける  
2014.04.24.Thu / 16:34 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






ある日突然に全てを奪われた男。
生活は一変し、様々な絶望と後悔を感じる日々が始まる。

自分のうかつさ、浅はかさ。

今まで自分は自分の住む場所しか見ていなかった。
しかし、直ぐそばに、このような世界があったこと。
自分は今まで見過ごしてきていた。
当たり前のことだと思っていた。

優秀で勤勉ならば大切に扱われるに違いない。
けれど、正しいことを言っても憎まれる。
仕事をこなし、成果をあげても憎まれる。

守ってくれていたと思った主人。
しかし、それは単に所有する財産が失われることを恐れただけ。

同じ黒人が苦難にあっても、見過ごさなければ成らない苦痛。
同じ黒人に苦難を与えなければならない苦痛。
そして、苦難の中にいる黒人たちを見捨てなければならない痛み。

愛情と憎しみは紙一重。
それ故に理不尽にも虐待されてしまう黒人女性。

黒人たちが、かつて味わっていた差別を描いた映画。
それ以上に感じるのは、
人のエゴや憎悪、それらが創り出してしまった、この世の地獄の惨状。
人間というものは、ここまで恐ろしくて救いがたい存在なのか。
この世の地獄、その惨状に恐ろしさを感じる映画。




家族とともに平和に暮らしていた黒人男性、ノーサップ。
しかし、突如として、その平和は打ち破られる。
自分は自由な黒人のはずだった。
しかし、罠に掛かって弁明もできず、奴隷として売られてしまう。
彼らは紳士でアーティストのはずだった。
しかし、どんなに主張しても、後悔しても、すべては後の祭り。

平和に暮らしていた時に、街で見かけた黒人たち。
彼らは奴隷として白人に仕えていた。
彼らを見ても、当たり前だと思っていたノーサップ。
しかし、自分の身にそれが降りかかってきた時、
それが当たり前のことではなかったと強く感じざるを得ない。

反乱を起こせば助かるかもしれない。
街への買い物の途中で逃げ出せば助かるかもしれない。
しかし、それらは淡い夢。彼らはそんなに甘くは無い。

正しいことを実施し正しい事を主張した。
けれど、反感を買い、憎まれ、妬まれ、恨まれる。
なぜなら、黒人たちは白人の思い通りに動く道具であるべきだから。
黒人のほうが白人よりも優秀であることなど、あってはならないから。


ノーサップを買い取った白人、フォード。
ノーサップに好意的なようでいて、しかし、実は違った。
ノーサップが死んでしまうことはフォードにとっては財産を失うことになる。
財産を失いたくは無い、だからこそ、大切にし、しかし、
失う可能性が強くなれば、失う前に売り払う。
ノーサップのことを案じていたわけでは、決してなかった。

夜を耐えるか、昼間の労働に耐えるか。
そんな選択肢しか与えられていない黒人の女性、パッツィー。
誰よりも勤勉に働き、成果をあげていたはずだった。
けれど、思い通りにならないと判ったとたん、憎悪の対象になってしまう。


最後には地獄からの脱出に成功する、ノーサップ。
けれど、取り残された黒人たちを置いていかなければならない。
それは、今までもそうであった。
首を吊るされる黒人たち、鞭で打たれる黒人たち。
主人の命令であれば、仲間に鞭を振るわなければならない。
彼らを見捨てなければ生き延びることはできない。

きっと、見捨てなければならない痛みが、
その後のノーサップを黒人解放の運動に駆り立てたのだろう。
その活動もいつか見てみたい。


黒人たちが、かつて味わっていた差別を描いた映画。
それ以上に感じるのは、
人のエゴや憎悪、それらが創り出してしまった、この世の地獄の惨状。
現代の人々にとっては非道な行い。しかし、
あの時代に生きていれば、非道な行いも常識と錯覚してしまったかもしれない。
そんな感覚に染まってしまった人々が創り出してしまった、この世の地獄。
感覚が狂ってしまえば、人間というものは、ここまで恐ろしくて救いがたい存在になれるのか。
この世の地獄、その惨状に恐ろしさを感じる映画。

されど、
いくら時代が人々を錯覚させたとしても、真理はひとつ。
人は皆平等で幸せに暮らす権利を有しているのだ。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1182 / タイトル さ行 /  comments(2)  /  trackbacks(2) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
ほぼ一年近く前にご覧になってたんですね。

黒人奴隷の生活は地獄のようで、
観ていて辛くて辛くて涙が出ました。
あの時代であれば仕方がないという感覚だったのは、
自由黒人だった主人公自身もそうだったんですよね。
結局彼も生き延びるために他を陥れたり見捨てたり・・・
人のエゴや残虐性は、主人公も含めて描かれてましたね。

人々に沁みついた狂った感覚を正そうと
奴隷解放宣言をしたリンカーンは偉い人だったと
今さらながら思います。

2015.02.18.Wed / 17:52 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

運良く、劇場で見ることが出来た作品でした。

人の醜さや残酷さが見ていて辛い映画でした。
感覚や常識が狂ってしまえば、人はどんな残酷なこともしてしまうのでしょうか、、、、
理解できる反面、理解したくないとも思いました。

確かに、あのような時代でも、真理を見失わず、
困難な道を諦めなかったリンカーンは偉大な大統領でしたね。

しかし、ベネディクト・カンバーバッチ、
最初は良い奴だと思っていたのに、とてもがっかり。
ポール・ダノもマイケル・ファスベンダーも、極悪人に見えて、
それは、彼らの演技力が素晴らしいのでしょうけど、
ちょっと残念。

それじゃ、また。

2015.02.18.Wed / 22:59 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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