シンドラーのリスト  
2014.07.03.Thu / 21:32 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






1000人以上のユダヤ人を救った男。
それは、成り行きからなのか、
それとも、助けたいと望んで助けたのか。


自分の城を持ちたかった、男二人。
救った者から、お礼を言われ、徐々に心を変えていった男。
罪を赦しても畏怖され続け、自分を変えることができなかった男。
その二人が迎える最後の明と暗。


ナチがユダヤ人に対して行った非道な行い。
それらが事実かどうかは別として、
その徹底した描写には戦慄を感じざるをえない。
そして、その非道な行為に加担した男とユダヤ人を救った男。
そんな男二人を通して、
人が持つ感情と運命の不思議さに魅き付けられる映画。




ポーランドのクラクフにやって来た男、シンドラー。
これからは金よりも持つべきものは物。
人に取り入るのが巧みで、不思議な魅力を持ち、
周りに流されず、合理的な考えを持つ男。
結果として1000人以上のユダヤ人を救った、シンドラー。
しかし、それは彼が積極的に望んで行ったことなのか。
または、成り行きで助けてしまったのか。
その辺りは明確に描写されてはいない。

ユダヤ人に感謝されても、それを迷惑に感じたのは、
きっと、その純粋な信頼に応えるだけの勇気がなかったからだろう。
ユダヤ人を助け、優遇すれば、ナチスに目を付けられる。
それでも、一度は助けたユダヤ人が処刑されてしまえば、
不快感を、あらわにして抗議する。
怒りの矛先はナチスにだけではなく、
自分を信じて感謝してくれた想いに応えることができなかった自分自身に対してであろうし、
一方で、工場で雇った、いわば自分の所有物や財産と考えていた人材を、
自分に許可を求めるわけでもなく、勝手に処分されてしまったことへの怒りもあるのだろう。

助けを求められれば躊躇する。拒絶する。
感謝されれば、戸惑う。
良い女性としか面会はしない。
けれど、奪われれば怒る。
求められれば助けてしまう。
そして、ユダヤ人は安価な労働力という合理的な発想。
ナチスがユダヤ人を追い立てた時に見た、赤い服の少女。
それが、ユダヤ人を救いたいとシンドラーに心変わりを芽生えさせたようにも見えるが、
シンドラーの想いはとても複雑なのだろう。
それは誰しもが持つ複雑さなのだろう。


クラフクの収容所に派遣された将校、アーモン・ゲート。
冷徹で狂っているように見えても、実際はかなり頭の切れる男。

自分を律して他人を許す。それが真の強さだ。
多分、その先には相手との相互理解が生じ、結果として残虐な行いはできなくなるのであろう。
けれど、アーモンにとっての悲劇は、許した相手にすら、畏怖され続けたこと。
これでは、相手を理解することは不可能だ。
忍耐強く許し続ければ良かったのかもしれない。
ユダヤの女性に好かれたいと願い、しかし恐れられたアーモン。
お互いがお互いを理解できていなかったが故の彼にとっての悲劇なのだろう。


見知らぬ人間ならば見捨てることは比較的可能なのかもしれない。
しかし、知ってしまった相手ならば見捨てることは困難だ。
この差が、シンドラーとアーモンの最後を決めたのだろう。


ユダヤ人で、とても有能な会計士、イザック・シュターン。

俺に欠けていたのは戦争だ。
そう、自身を分析するシンドラー。
けれど、そればかりではないのだろう。
巧みに人に取り入り事業を拡大したシンドラー。
けれど、イザックが居なければ、
シンドラーは、このように自由には行動できなかったであろう。
資金面で行き詰まってしまったに違いない。
それを上手に管理したイザック。
イザックもまた、多くのユダヤ人を助けるためにシンドラーを利用した。
最初の彼らは、利用し、利用されるという関係だった。
けれど、その関係が徐々に変わってゆく。
列車に乗せられてしまったイザックをシンドラーが助けたのは工場の為。
けれど心のどこかでは、イザックの事を案じる気持ちがあってのことだったのだろう。


合理的な考えのもと、安価なユダヤ人を雇い続けたシンドラー。
しかし、彼らと交流をするうちに、芽生えてくる感情。
打算、保身、損得勘定、独占欲や所有者特権、されど、友愛、良心。
そのどれもが彼の本心なのだろう。
だからこそ、1000人を助け感謝された時に、
もっと本気で救えばよかったと後悔したのだろう。
個人が救った人数としては1000人は十分なのかもしれない。
しかし、それでも、本気で彼らを救わなかった自分に後悔し、
自分が自分を許せなかったのだろう。

意図してか、意図しないのか、多くのユダヤ人を救った、
不思議な感情に揺れ動いた男。
人が持つ感情と運命の不思議さに魅き付けられる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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