2014.07.17.Thu / 21:48 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






自らを受け入れ、肯定してくれる集団にいることの心地よさ。
自らを否定し、価値観を強制してくる社会にいることの苦痛。

自分で自分の人生を生きるには、その両方が必要なのだろう。
そして、自分自身で考え経験することが、もっとも大切なことなのだろう。
けれど、それは難しい。
人生には沢山の落とし穴が待ち構えている。
その穴に入り込むと抜け出すのは容易ではない。


壊されてしまった自分。
しかし、心の底に、僅かに残っていた良心。
そして、自分を魅了する居心地の良さ。
その狭間で揺れ動いた少女。

自分の人生を生きることの難しさ。
その難しさが心に残る映画。





母親とは死別し、父親には見捨てられた。
多分、叔母の元での生活では、自分を否定し続けられてきたのだろう。
とても不幸な環境で育ったマーサ。
それ故に、世界は自分を傷つけるものだと考えている少女。
初めて自分を受け入れ、認めてくれた集団。
何も自分に強制はしてこない。
役割を自分で見つけ、それによる集団に貢献することの喜び。
似たような思想を持つ者たちと過ごすことの安心感。
それは、マーサにとっては、
とても居心地の良い経験だったのだろう。


自分で考え、役割も自分で見つけた。
そして、自分たち以外を否定する思想も、自分で考えた。
そんな、つもりだった。
洗脳が巧みなところは、強制したようには感じられなくても、しかし、
実は様々なことがレールの上に乗ったがごとく、運ばれていき、
それは自分で考え選んだと錯覚させられることだ。
だから正しいと思い込み、容易には抜け出せない。


マーサの中にわずかに残された自分自身の考え。
生き物はむやみに殺すべきではない。
だが、罪無き人を殺してしまった集団。
そして、この殺人には納得できる説明もしてはくれない。
だから、マーサは逃げ出したのだろう。
けれど、完全には集団を否定できないでいるのだろう。


姉のところに逃げてきたマーサ。
時にマーサを受け入れ、しかし、苦言を言う姉。
けれど、それは本当はマーサにとっては必要な助言。
しかし、マーサはそれには気づかない。
否定される事を言われれば傷つき、逆に拒絶してしまう。

義理の兄に、模範的な生き方を問われた時、
それに答えることができなかったマーサ。
それは自分で考えた自分の考えではないから。
だから、あの経験を知らないから、という卑怯な答えで、
自分の人生に向き合うことから、逃げ出したのだろう。

確かに姉夫婦は俗世間の価値観に毒されているのかもしれない。
マーサを納得させるだけの説明ができないでもいる。
これも一種の洗脳なのかもしれない。
または、自分で社会を生きてきた経験から得た価値観かもしれない。
この境は曖昧で、難しい。


幸せとは何か。
その意味をマーサは知りたかったのだろう。
子供を産めば幸せになるのだろうか?
幸せを目指して人生を生きている姉に嫉妬に似た感情を持つ。
なぜなら、自分は目指すべき幸せを持ってはいないから。
けれど、それは自分で見つけ出していかなければならないのだろう。
人から教えられるのでは、本当に見つけ出したことにはならないのだろう。


洗脳から抜け出すのは容易ではない。
集団にめぐり会うまでの人生で自分が深く傷ついてしまったから。
自分で考えついたと錯覚させられているから。
そして、とても居心地が良かったから。
けれど、抜け出せなければ、自分の人生を生きることはできない。
自分の幸せを見つけ出すこともできない。



洗脳されてしまった自分。
けれど、わずかに残された良心。
その狭間を揺れ動いたマーサ。
この描き方は、とても巧みに感じる。
どのシーンが、過去なのか未来なのか、容易に判別がつく。
時に判別が着かない時にもあったが、それ自身にも意味がある。
このあたりの描写は、とても巧みに感じた。


美しい自然、素朴な生活、とても穏やかな映画。
しかし、静かな恐ろしさを感じさせる映画。
そして、それ以上に感じられたのは、自分の人生を生きることの難しさ。
その難しさが心に残る映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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