ゼロ・ダーク・サーティ  
2014.08.21.Thu / 11:33 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






執念でビンラディンの居場所を見つけ出した女性。
しかし、そこに達成感や晴れやかさは存在しない。
アメリカは、また一つの命を奪い、それに自分が加担してしまった。
最後に流される涙は、
もう後戻りが出来ないという喪失に対する涙なのだろう。


とてもデリケートな題材を扱った映画。
だから、いろいろな横槍がはいったであろうし、
バランスにも気をつけなければならなかったのだろう。
だからこそ、
淡々と事実を繋げるシンプルなストーリーとなってしまったのではあろうが、
全編に漂う緊迫感は半端ない。
さまざまな制限や制約な中でも、
これだけの緊迫感を演出する監督の手腕には恐れ入る。

同僚の復讐の為、執念でビンラディンを追い詰めた女性。
目的を達するまでの緊迫感、しかし、目的を達成したあとの虚無感が心に残る映画。





ビンラディンの居場所を追い求める。
その任務の為に、中東に派遣された女性、マヤ。
一見ひ弱そう、しかし、心の中に強さを秘めている女性。
最初は拷問を見るのも苦痛だった。
しかし、徐々に慣れ、拷問の苦痛だけではなく調略によって相手の口を割らせ、
遂に、アブ・アハメドという男にたどり着く。
しかし、ビンラディンの居場所には、なかなかたどり着けない。
こうしている間にもテロが発生し人が殺されていく。
そして、上層部からの強い圧力。

敵の策略により死んでしまった同僚。
復讐の為に、それまで以上の執念でビンラディンを追い求めるマヤ。
そして、遂につきとめるビンラディンの隠れ家、と思しき屋敷。

なぜ、マヤはビンラディンが、その屋敷に居ると100%断言できたのか?
執念による確信なのか、女性の感なのか、それとも無意識の願望なのか。
関係者の誰もが確率的には60%だと意見を言う。
なぜなら消去法と状況証拠のみで導かれた結論だから。
けれど、100%だと断言するマヤ。
早く、この修羅場から開放されたい、
そんな思いが、マヤに、そう願わせたように感じてならない。


急襲するシールズ、そして殺害されたビンラディン。
しかし、最後には涙を流すマヤ。
そこに達成感や勝利者の感動は存在しない。


この映画はプロパガンタ用に作製された、という話を聞いた。
けれど、この映画を見て、アメリカの正義を感じる観客は居るのだろうか?
もしかしたら、私の想像の範囲を超えて、
アメリカの正義を感じる観客は存在するのかもしれない。
けれど、私には、アメリカの行った行為というよりは、
テロというものの虚しさが強く心に残る。

情報を得る為には拷問が不可欠だ。
しかし、拷問は、受ける側も当然ではあるが、
行う側にも精神破壊をもたらす非人道的な行為。
そして、国の為に行っている行為にも係わらず、
国からは非合法な行為として糾弾の対象となりうる行為。

多くの人が死に、それを終わらせる為に、人を殺す。
しかし、殺してみて、それが終わりでないことに気付かされる。

他国に了承はおろか事前通知も無く進入し、家族の目の前で父親を殺害する。
家族にとっては、それは強盗やテロに近いものであろう。
しかし、それを手段として選択した政治。


最後に流されたマヤの涙。
上層部からの圧力から解放された安堵感。
こんな非人間的な仕事から解放された虚脱感。
しかし、それ以上にマヤが感じたであろうこと。
それは、自分が人を殺したことに加担してしまったということ。しかも、積極的に。
自分が殺した男の死体を見てマヤは理解したのだろう。
もう、後戻りは出来ない。
そして、これは終わりではなく始まりなのだ、ということを。
喪失感と後悔。しかし、もう後戻りは出来ない。



同僚の復讐の為、執念でビンラディンを追い詰めた女性。
目的を達するまでの緊迫感、しかし、目的を達成したあとの虚無感が心に残る映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1213 / タイトル さ行 /  comments(2)  /  trackbacks(2) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
淡々と事実を繋げる形になっていましたね。
出来るだけ感情は排除したように見えました。

「アメリカの正義なんだろうなあ」と自分の記事に書きましたが、
それはアメリカ独自の正義、アメリカのやり方という意味で、
そこには共感できませんでした。

マヤの涙は印象的でしたね。
決して達成感からではなかったですね。
虚脱感・虚無感だと思います。
争いは終わってないですもんね。

2014.08.29.Fri / 17:24 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from  -

YANさん、こんにちは。

アメリカの正義を宣伝するための映画と批判されているようですが、
確かに共感は出来ませんし、宣伝というよりは、
批判している雰囲気も感じ取れましたね。

マヤもある意味で被害者なのでしょうね。

それじゃ、また。

2014.08.31.Sun / 11:58 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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