罪の手ざわり  
2014.09.25.Thu / 16:52 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






急激に発展を続ける中国社会。
貧富の格差の拡大、個々人の断絶、価値観の変貌、閉塞感溢れる社会。
それらが人々を暴力へと駆り立てる。

悪を正す為、より以上の悪人になる男。
田舎からはみ出して、銃声に生きる価値を見出す男。
不倫に疲れ帰る場所も無く、言われ無き偏見を拒絶した女。
未来に絶望し、自殺してしまった青年。


正しい社会で生きれば善良な生活を送ることができたのかもしれない。
確かに社会だけが悪いわけでもないのだろう。
けれど、原因を作り、彼らを追い詰めたのは、社会なのだろう。

おまえは自分の罪を認めるか?
最後の問いかけは映画の登場人物たちにだけではなく、
観客に向けての問いかけなのだろう。
果たして彼らは罪人なのか、と。

救いが無い哀れさが心に残る映画。




共有財産であるはずの炭鉱を売り払い賄賂を受ける。
そんな不正が許せない男、ダーハイ。
しかし、村人たちは長いものには巻かれろ、誰もダーハイに同意しない。
告発の手紙の出し方も分らない。控訴にも時間が掛かりすぎる。
彼ら以上の悪人になる他に、この不正を正す方法がない。
遂には殺人を犯してしまうダーハイ。
人を殺すことは罪だ。
しかし、不正を行った村長、会計士、そして社長。
そして、それを見過ごす社会。
それらがダーハイを殺人に駆り立てたのだろう。



出稼ぎと偽り強盗を犯す、チョウ。
生まれた村には何も無い。あるのは閉塞感のみ。
最初はきっと家族の為に出稼ぎをしたのだろう。
しかし、犯罪に手を染めてしまうチョウ。
そして、いつしか銃声に魅入られてしまったのだろう。
妻も、うすうすは理解している、止めて欲しいと思っている。
けれど、もう引き返すことは考えられない。

強盗は罪だ。
しかし、出稼ぎをしなければならない程の格差。
そして、希望の見出せない社会。
それらがチョウを犯罪の道へと落としいれ、
二度とは戻れないようにしてしまったのだろう。



不誠実な男との不倫に疲れ果てた、シャオユー。
相手の男に言われるままに年を重ね、新しい人生を始めるには、
すでに取り返しのつかない年齢に達してしまっている。
そして、故郷にも帰れない。
金に物を言わせ売春を強制された時、
シャオユーの鬱積していた怒りが爆発してしまったのだろう。

殺人は罪だ。
しかし、金があれば何をしても良いという価値観。
そして、不倫と寂れていくであろう故郷。
それらが、シャオユーの怒りを、我慢の限界に達しさせたのだろう。



不注意で仕事仲間に怪我を負わせた青年、シャオホイ。
無給で働くことを強制され、職場を逃げ出し、ナイトクラブで働き始める。
そこで知り合う、リュンロン。
けれど、自分の薄給では彼女を救えない。
このまま、ここで働くには辛すぎる。
職を変えれば、見習いから始めなければならない。
手持ちのお金が底をつき、実家を頼ろうとしても、返事は叱咤のみ。
絶望のあまり死を選ぶ、シャオホイ。

自殺は良くないことだ。
しかし、最低生活さえ保障されない賃金体系。
そして、青年の仕送りを頼らざるを得ない家族、
生活の為には、体を売らなければならない環境。
それらが、シャオホイを絶望へと追い詰め、自殺させてしまったのだろう。



果たして彼らは罪人なのか。
シャオユーが面接で自らの罪を申告しなかったのは、
就職に不利になるということだけではなく、
自分自身でも、あれを罪だとは認めたくは無いという思いがあったからであろう。

それでも、犯罪を犯すこと自身は個人の問題であり、言い訳は利かない。
しかし、原因を作り、彼らを追い詰めた社会に罪はないとは言えないのだろう。
そして、もっと悲惨なことは、
誰もこれを正そうとはしていない、ということなのだろう。

幸福に死ぬよりも、悲惨に生きる方がましよ。
それは人々が、もう、諦めているということなのだろう。


救いが無い哀れさが心に残る映画。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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