許されざる者  
2015.01.08.Thu / 23:04 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






往年の名作の李相日監督によるリメイク作品の感想です。
原作のネタバレも含みます。



生きるために、図らずも罪を背負う。
些細な行き違いから罪を犯してしまう。

最初の人殺しには、誰もが戸惑う。
しかし、二人目からは慣れてしまう。
慣れる事で地獄への道を突き進んでしまう。
誰もが人を殺したくは無い。
けれど、殺さざるを得ない状況が、
人を地獄の道へと歩ませる。

許されざる者とは、
自身の罪の深さを知りつつも、その道を抜けられず、
自身の行く末を地獄であると
達観している者のことかもしれない。

逆に、許されざる者とは
自身の罪の深さに目を背け、目をつぶり、
非道を繰り返す者のことかもしれない。

やはり人は変われないのか?
逝く先が地獄であると知りつつも、
その道を抜けられなかった男。
その男の哀しみが心に深く突き刺さる映画。





伝説の人殺し、人斬り十兵衛。
しかし、今は亡き妻の子供たちと平和に地道に暮らしている。
十兵衛が人を殺したのは、
何も人殺しを好んでいたわけではないし金銭を奪う為でもない。
自分を殺しに来た者たちを殺さなければ生きてはいけない。
殺意を抱く者には殺意で応える。
そんな生き方しか知らなかったからであろう。
しかし、今は別な生き方を知っている。

「女子供まで殺したのは、あんたじゃなくて、
 討伐隊だったんじゃないのかい?」

その質問に答えない十兵衛。
一人殺しても多数を殺しても、
女子供を殺しても殺さなかったとしても、人を殺せば罪は罪。
だから言い訳は出来ない。
別な生き方を知った十兵衛は過去の行いを深く懺悔しているのだろう。


平和に暮らしたかった。けれど冬を越す為の食料も無い。
旧友の金吾に誘われるままに、賞金の為の殺しを請け負う。
他に生き残る道は無いのだろう。

虐げられた者たちの悲哀。
本土から派遣された警官たちに虐げられるアイヌ民族。
人として扱われない娼婦たち。
動物同様に狩られる敗残者たち。
いずれも全うな生き方は難しい。
反抗すれば生きられない。じっと耐えるしか生きる術はない。


町を牛耳る男、大石一蔵。
力には力を持って押さえ込み、ねじ伏せる考えを持つ男。
それが彼の生き方なのだろう、かつての十兵衛のように。
そして一蔵も、他の生き方を知らなかったのだろう。


十兵衛を再び人殺しの道に誘った男、金吾。
得られた金で一旗挙げようと目論んでいた、、
しかし、それは嘘であった。
金吾には行くところも行く当てもない。
彼が生きられる場所は、どこにも存在しないのだ。

金吾にとって十兵衛は恐ろしい存在。
しかし十兵衛から離れることは出来ない。
十兵衛の生き方が恐ろしい。けれど、
十兵衛のような生き方以外の生き方は出来ない、と自分を偽ってきた。
そして、実際に、それ以外の生き方が出来ない境遇だからでもあろう。


十兵衛と金吾の賞金稼ぎの旅に付いてきた青年、五郎。
最初は強がっていた。けれど初めて人を殺し、
その行為に畏怖し、二度と人は殺さないと誓う。
五郎に遺された者たちが五郎の心の支えとなり、
きっと人を殺さない生き方が出来るだろう。



原作で強く感じたのは憎悪の連鎖。
主人公であるウィルは極悪人であったが真人間に更正したという設定だった。
そして、ウィルのラストの怒りは、
映画で描かれた憎悪の連鎖に対して向けられた怒りであったようにも感じられた。
そして、ウィルは、その後の生涯を平穏に暮らしたようだ。

けれど、本作で強く感じるのは、マイノリティーと、その生き方。
人を殺すことでしか生き残れなかった十兵衛。
そして、今また、家族とともに生き抜くために手を血で染める。
十兵衛の怒りはマイノリティーを虐げる者たちに対する怒りであり、
けれど、その怒りの行為の結果は、自身に振り返ってくる。
そして、それ以外の生き方は成し難い。
しかし、若者たちには可能性が残っている。


やはり人は変われないのか?
逝く先が地獄であると知りつつも、
その道を抜けられなかった男。
その男の哀しみが心に深く突き刺さる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1251 / タイトル や行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY

  非公開コメント
TRACKBACK TO THIS ENTRY

ご注意

ブログ内検索

全ての記事を表示する

プロフィール

ヤン

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

フリーエリア

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

フリーエリア

CopyRight 2006 Heaven of the Cinema All rights reserved.