永遠の0  
2015.03.05.Thu / 00:13 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






戦場から家族の下に、生きて帰りたい。
それは当然の願い。
しかし、口に出すことは許されない願い。

特攻は、とても愚かしい作戦だ。
意味無く命を犠牲にし、戦果は少ない。
それ以上に、命を引き換えに遂行する作戦は、
戦時下といえども、許されるものではない。
しかし、口に出すことは許されない意見。

戦時下で自分の意志を貫こうとした男。
それは、自分の為ではない。
それは、愛する家族のために。

けれど、戦争は悲惨だ。
個人の意志を押さえつけ、口を封じるだけではない。
戦争という過酷な環境が人から正常な判断を失わせ、
追い詰めてゆく。

時代に流されず、権力に屈せず、自分の思想を貫いた男。
しかし、家族の無事を仲間に託し命を散らせてしまった。
その大きな思いと無念さが心に重くのしかかる映画。

身近なのだが、難しい題材を扱った映画。
それ故に賛否両論を受けるであろう。
特攻とテロの違いとか、特攻の犠牲者は無駄な犠牲なのか、尊い犠牲なのか。
そんなことを深く考えさせるのも製作者サイドの狙いなのかもしれない。




ゼロ戦の凄腕パイロットであった、宮部久蔵。
仲間からは卑怯者と呼ばれている男。
宮部がなぜ、卑怯者と呼ばれていたのか。
なぜ、空中戦を避けたがっていたのか。
その全ては、家族の下に生きて帰りたいが為。

勇敢に戦っている仲間を見捨てるがごとく、
空中戦を離脱する宮部。
それは戦争の価値観からすれば許すことは出来ない行為。
しかし、家族の下に生きて帰りたい。
それは、きっと誰もが心のそこに隠している願い。
それを強制的に押さえ込み、戦争の価値観を押し付け、
兵士たちを戦場に借り出す軍部。
誰にでも同じ価値観を押し付け、多様な意見に耳を傾けず、
人々を同じ思想、同じ行動に仕向けることの危険性。
宮部が卑怯者かどうかというよりは、
思想の強制の怖さを言いたかったように感じる。

「何があっても、どんなに苦しくても生き延びる努力をしろ!」
誰に何を言われても自分の意見を守り通した宮部。
皆と違うことを口にするのは、とても難しいことであろう。
けれど、この言葉が多くの人を救ったのでもある。


味方であるにもかかわらず、宮部に戦いを仕掛けた景浦。
しかし、その戦いは景浦の惨敗。
その時景浦は知ったのだろう。死ぬことの怖さを。
宮部が日々戦っている恐怖を実感を持って知ったのだろう。


日々戦争の状況は悪化し、ついに特攻が始まってしまう。
未来ある若者たちを教育し、しかし帰ることが出来ない作戦に送り出す宮部。
自身の思想とは間逆な行いを強いられる日々が宮部の心を蝕み、
そして、彼らのみに犠牲を強いることに苦しみ、
死を決意させたのだろう。

家族の元に無事に帰りたい。それは家族の為に。
であるならば、家族の為に自分の代わりを送ろう。
それは、ある意味でとても身勝手な話なのかも知れない。
自分の代わりなどは居ないのだから。
けれど、追い詰められた宮部には、それ以外の選択肢は無かったのだろう。
逆に、その選択が出来てしまったからこそ、
宮部は死を決意することができたのだろう。


時代に流されず、権力に屈せず、自分の思想を貫いた男。
しかし、家族の無事を仲間に託し命を散らせてしまった。
その大きな思いと無念さが心に重くのしかかる映画。



後は余談ですが、映画の中で、
「自爆テロと特攻は違う。」
という台詞があった。
確かに違うところもあるが似たような点もある。
テロは狂信者が自主的に実施していて、
特攻は強制させられているという違いがあるという意見もある。
けれど、テロも、もしかしたら強制されてやっている可能性もある。
洗脳されて、画一的な価値観の元に実行してしまった、のかもしれない。
これは分からない。
ただ言えるのは、
テロで巻き込まれ死んでいった人々も、テロを起こしてしまった人も、
特攻に巻き込まれ死んでいった人々も、特攻を起こしてしまった人も、
皆が犠牲者であり、
これ以上の悲劇は繰り返してはならない、ということだろう。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1257 / タイトル あ行 /  comments(2)  /  trackbacks(2) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!
今年の日本アカデミー賞で数々の賞に輝いた作品ですね。

どうも私には宮部の思いがそれほど心に響きませんでした。
どの人にも様々な思いがあって、
そのうちの一つのエピソードとしか映りませんでした。

ただ戦争の恐ろしさ、特に特攻の残酷さは
胸に痛く突き刺さりましたね・・・
本当にこのような悲劇は2度と無いようにと思います。

2015.03.06.Fri / 17:12 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

宮部の思いというよりも、
宮部ヵら、どんなことを感じるか、
という映画のように見えました。
それ故に、いろんなことが詰まりすぎていたり、
分りにくい表現になったりしていたようにも思えます。

生きたいとか無事に帰りたいという願いを踏みにじられ、
口に出すこともできないこと自身、
とても残酷で悲惨なことですね。
だから時代に流されないようにしないといけませんね。

それじゃ、また。

2015.03.08.Sun / 22:26 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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