2015.04.09.Thu / 11:42 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






自殺を試みた男。
けれど、九死に一生を得る。

きっと、その男は、
過去を強く引きずるあまり、
今を虚しく感じてしまったのだろう。

たとえ不確実であっても、
未来を向いて生きなければならない。
けれど、過去が無ければ人は生きられない。
それは微妙な距離関係。
キチンとした距離が取れるようになることが、
青春との決別を意味しているのだろう。

死の淵から帰ってきて過去を取り戻そうとした男。
彼は、きっと青春から卒業できたのだろう。
そんな男の青春からの卒業を描いた映画。

噛み合わない様でいて、
ギリギリのところで噛み合う会話も面白い映画。






映画の冒頭で自殺を試みる男、洞口さん。
けれど、次のシーンでは、旧友である大川の家に遊びに来る。

見ている間は、3つの可能性があるように感じられた。
一つ目は、大川と洞口さんが出会うシーンは洞口さんの自殺以前の話。
二つ目は、大川に会っている洞口さんは、
実は自殺してしまった幽霊であるという話
もしくは死に逝く洞口さんが見ている夢という話。
三つ目は自殺から生還した洞口さんが大川に会いに来ているという話。

映画の最後に登場する文庫本と写真から、
どうも三つ目が有力ではあるように感じられる。
洞口さんが自殺しようとした動機は分らない。
彼らの会話の端々に登場する、
大学時代に死んでしまったらしい峰村という人物。
そして、大川とは峰村の葬式以来会っていないという事実。
さらに、大川の台詞、洞口さんを許したわけではないという意味深な言葉。
これらが関係しているように思えてならない。

きっと洞口さんは青春時代に強い後悔と未練を抱えたまま、
大人になってしまったのだろう。
後悔が強ければ強いほど今を生きることは出来なくなる。
後悔を忘れるほどに強くはなれないし、あの時代を忘れたくもないのだろう。
京子さんに、自分はまだ、デボン紀に居る、とは、
そんなことではないのだろうか?

久しぶりに出会った三人。
最初はとてもぎこちなく、けれど、あっという間に打ち解けあう。
過去の出来事を知らない、大川の恋人である楓は、
一人どう距離を取っていいのか、戸惑っているようにも見えた。
その戸惑いが返って三人の親密さを強く印象付けた。


真夜中に京子の手を握ろうとして、
手を引っ込められてしまった洞口さん。
不確実で暗くとも未来を向いて生きよう、ということなのだろう。

ムーンライダーズを峰村に紹介したのは洞口さん。
けれど、それを知らないふりをして京子の話に付き合った。
気を使っていないようでいて、実は気を使っている洞口さん。
本当は京子さんに会うために大川を訪れた。
それは、自分の気持ちを整理する為に。そして、文庫本を返す為に。
洞口さんはきっと、わざと目に付く場所に文庫本を置いたのだろう。
そして、自分が自殺をしたということも語らなかったのだろう。


死の淵から生還し、写真を見て笑う洞口さん。
死に切れなかった。けれど、嬉しい。
自分の人生は虚しいもの、と思っていたが、
そうではなかったことを思い出せたから。
そして、生きて帰れたということは、
自分は峰村に許されたということなのかもしれない。


人は未来を向いて生きなければならない。
けれど、過去が無ければ人は前には進めない。
文庫本を返すことが出来た洞口さんは、
きっと青春から卒業できたのだろう。
そんな男の青春からの卒業を描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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