ヒミズ  
2015.06.11.Thu / 22:18 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






原作は未読です。



絶望にうちひしがれ、
明日を生きる気力を失ってしまった人々。
そんな人々に頑張れという言葉は、
禁句なのかもしれない。
なぜなら、彼らは、もう既に頑張るだけ頑張ってきたのだから。
これ以上は頑張れない。
そう、拒絶されるだろう。
しかし、園子温監督は言うのだろう。
頑張れと。

立派な大人になりたいと願っていた少年。
しかし、その願いは無残にも砕け散ってしまった。
少年は、そのように感じている。
けれど、そのは一時的な気の病。
そんな少年に敢えて言うのだろう、頑張れ、と。

人生の再生を心から願った映画。



貸しボート屋で暮らす少年、住田。
借金取りに追われ金をせびりに来るだけの父親。
愛人を家に連れ込み、挙句の果てに家出をしてしまった母親。
愛情のカケラもない家庭。
それでも、住田は諦めない。
クズとクズとの間に生まれたが、俺はクズじゃない。
立派な大人になってやる。
むしろ、両親がクズだからこそ、両親のようには成りたくない。
そう考えている少年。
貸しボート屋の敷地に居候している震災被害者たち。
突然奪われてしまった日常。
なにか悪いことをしたわけでもない。
ただ、懸命に生きてきただけ。
しかし、総てを奪われ、成す術もない。
彼らは住田に希望を見出していたのだろう。
劣悪な環境でも生きる力を失わない。
そんな住田を心の支えに生きて来たのだろう。


住田と同じくらい劣悪な家庭で暮らす少女、茶沢さん。
住田に纏わり付いているのは、
自分と同じ想いを住田から感じているから。
立派な大人になった住田ならば、
きっと、自分が思い描いている幸せに、一緒にになれると感じているから。


しかし、総てが覆ってしまう事件が起こる。
もう、立派な大人には成れない、と感じてしまう住田。
自首もしない、自殺もしない。
自分の命を他人の役に立てることで立派な大人に成ってやる。


俺にはわかる
牛乳の中の黒い蝿、その白と黒がよくわかる
俺には分かる。なんだって分る。
自分以外のことはすべて。

どんなに聡明であっても、どんなに冷静であっても、
自分の事は自分では分らない。
生きる力の総てを奪われてしまったのか、
それとも、一時的な気の病なのか。

自首もしない、自殺もしない。
それは、まだ、住田の心に生きることへの未練があるから。
そして、住田の心に生きる力が残されているから。

遠い将来のことを心に描く。
子供を愛し、子供から感謝される幸せな家庭。
遠い将来の幸せを思い描ければ生きる力も湧いてくる。



子供に拳銃を渡したヤクザ、金子。
しかし、金子は知っていたのだろう。
拳銃が、住田が考えているような目的では使用されないことを。
そして、考えているような目的で使用されないことが、すなわち、
住田が生きることを選ぶ節目になることを。
心の迷路を抜け出すには、実感できる現実的な選択が必要であることも。


夢を持て。下ばかり向いていたんじゃダメなんだ。
誰もが、この世でたった一つの花。
学校の授業で先生が生徒に諭す。
しかし、それは心に響かない。
正論過ぎて反論も出来ないから。
絶望にうちひしがれた相手に寄り添っていないから。
自分が自分の言葉に酔ってしまっているから。

しかし、同じ台詞をラストに茶沢さんが繰り返す。
茶沢さんは住田が、どんなに苦しんで頑張ってきたかを知っている。
もう、これ以上頑張れというのは酷なことも知っている。
それでも、住田に幸せになって欲しいと心から願っている。
だから、敢えて言うのだろう、頑張れ、と。
そして住田も、それに応える。振り絞るように叫ぶ、頑張れ、と。

地震震災者には、禁句かもしれない言葉。
けれど、敢えて言うのだろう、頑張れ、と。
なぜなら、幸せになって欲しいと心から願っているから。

人生の再生を心から願った映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1275 / タイトル は行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!

「頑張れ」と言う言葉は
「もっと頑張れ」とそのまま受け取ったら
言われた側は辛いだけですよね。
でもこの映画では、幸せを願う心からの励ましだと感じられ、
心に沁みるものがありました。

この主演の2人はこの後、素晴らしい活躍をしてますね~

2015.06.17.Wed / 17:37 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

染谷さん、二階堂さんともに、
今では、様々な映画に引っ張りだこで、
どの映画でも、まったく違った雰囲気が楽しめる役者さんに育ちました。園子温監督は、役者さんを見出す能力も、
素晴らしい監督さんですね。

それじゃ、また。

2015.06.22.Mon / 21:13 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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とても生き辛い過酷な現実。 それでも歯を食いしばって生きていく。 今苦しんでいる全ての人へのエール。 監督:園子温 製作:2011年 日本 出演:*染谷将太 *二階堂ふみ *渡辺哲 *吹越満 *でんでん *光石研 *渡辺真起子 *黒沢あすか *神楽坂恵 *窪塚洋介  「生きろ」と、君が言った。 ヒミズとは小型のモグラの一種。 中学生の住田(染谷将太)...
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