ポエトリー アグネスの詩  
2015.07.16.Thu / 15:55 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






私たちは世界を見ていない。

見るとは、見ている対象に寄り添い、
生い立ち、感じたこと、思ったこと、
その総てを想像すること。

孫と同じ年の少女が死んだ。
孫のこと、母親でもある娘のこと、示談金のこと。
しかし、なにより死んでいった少女のこと。

少女を見たいと願った、おばあさん。


死んでしまった者よりは生き残った者の未来を考える。
けれど、本当は自分の保身のこと。
示談に持ち込もうと決めたのは、
単に皆の利害関係が一致しただけのこと。
それは、とても腹立たしく、しかし、
自分の中にも同じ思いがあるであろう事を、
否定できないことが、恥ずかしい。

果たして、死んでいった者に私たちには何が出来るのか?
そして、私たちは、日常生活において、何をみてきたのか?

取り返すことが出来ない哀しみが心に深く残る映画。




孫と二人で暮らしている、ミジャ。
貧しいながらも、おしゃれ、そして、
詩を書きたいと望んでいる、おばあさん。
あなたは人生において何度、りんごを見てきたか。
ただの一度も見てはいない。

詩を書くには物事を見る必要がある。
そして、自らの心で感じた真の美しさを、
心の外に出す必要がある。


孫が友人と少女を暴行し、少女は自殺してしまった。
自分は一体孫の何を見てきたのか?
友人のように付き合ってきたはずの娘。
しかし、自身の息子を母に預けて自由気ままに生きているようだ。
自分は人生の何を見てきたのだろうか?

孫の友人たちの父親たちは示談を進めようとしている。
死んだ少女は可哀想だが生きている息子たちの将来を守る為。
しかし、本当は違うのだろう。
学校は学校を守る為。
警察は面倒を避ける為。
父親たちは今の地位と立場を守る為。
秘密にしておいたほうが良いからだ。


示談の為の大金はどうするのか?
そんな下世話な心配をよそに、詩を捜して街を歩くミジャ。
そしてめぐりあう、少女の姿。
慰霊ミサで捧げられた祈り。
暴行が行われた科学準備室の薄暗さ。


会長にお願いされた。最後に一度でいいからやりたいと。
余命幾ばくもない、哀れな老人の最後の願い。
その願いを叶えてやってもいいかもしれない、
と思ってしまうのは男の身勝手な思い込みなのだろう。
烈火のごとく怒り、その場を後にするミジャ。
けれど、拒絶することも出来ずに六ヶ月耐え続けた少女。
示談金のこともあったのかもしれない。
けれど、少女を見るために、
同じ体験をすべきだとミジャは考えたように思えてならない。


示談金を用意したのに孫を警察に預けた。
孫をキチンと躾けたつもりだった。
けれど足りなかったことに、今更ながらに気付いてしまった。
だからこそ、孫を更正させたい、と願ったからなのだろう。
そして、示談金を用意したのに孫を警察に預けた、と思ってしまうことは、
とても恥ずかしいことなのかもしれない。
示談金を払えば罪が消えるわけではない。
警察に正直に言えば償いをしなくてもいいわけでもない。


アグネスの詩。
最初はアグネスに語りかけるようでいて、
死に逝くアグネスの心情を想い描いた詩。
最後にアグネスが振り返って微笑んだのは、
ミジャを見つけたからなのだろう。
ミジャはアグネスの心に追いつけたのだろう。

果たして、死んでいった者に私たちには何が出来るのか?
取り返すことが出来ない哀しみが心に深く残る映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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