あの日の声を探して  
2015.08.06.Thu / 19:54 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






言うまでもなく、
戦争の悲惨さは戦場だけに留まらず、
周りの多くの人々を巻き込み、
拡散していく。

なぜ、こんな悲惨なことが起こってしまうのか。
なぜ、それがなすがままに放置されてしまうのか。
荒れ果ててしまった人の心。
家族の繋がり。
暖かな家庭。
壊れるのは一瞬。けれど、
取り戻すのは容易ではない。


正常な感覚を失った青年。
声を失った少年。そして負の連鎖。
そんな負の連鎖がとても恐ろしく、不気味にすら感じられる。
それでも希望はあるのだろう。
たとえ微かであったとしても。




どこにでも居るような普通の青年だった、コーリャ。
警察に捕まり、軍隊に強制入隊させられてしまう。
軍隊での日常は、虐めと欺瞞の世界。
虐めをする先輩の目の前で、
自分より弱い者を虐める。
この時、コーリャは虐められる側から虐める側に転落したのだろう。
そして、それが彼から正常な感覚を失わせる第一歩になったのだろう。

戦場に出て一般市民を殺してしまう。
けれど、深く考えてはいけない。
彼らは我々を襲うテロリスト。
そう考えなければ自分が保てない。
しかし、そう考えても自分は失われていく。

戦争では誰もが被害者なのだ。


目の前で両親を殺された少年、ハジ。
あまりのショックに声を失う。
そして生きる為に、止む無く弟を捨てる。


コーリャの悲劇はハジの悲劇へと繋がっていく。
心を失わされた兵士が量産され、
声を失った少年を生み出していく。
被害者は被害者を生み、それを止める術はない。


偶然、ハジを助けたEUの職員、キャロル。
目の前の悲劇を止める為に奔走し、
しかし、成果は挙がらない。
自分はとても無力。そんな罪の意識に苛まれる。

声を失い家族を失ったハジ。
しかし、少しづつ、それらを取り戻していく。
街中に溢れる難民。親を失った孤児。
彼らに比べれば、キャロルに出会えたハジは幸運だった。
それでも、声を取り戻すには、
そして、姉と弟を取り戻すには、
長い時間と、更なる幸運が必要だった。
戦争で壊れてしまったものを取り戻すには、
いったい、どのくらいの幸運と時間が必要なのだろうか?


なかなか好転しない状況。
そんな状況に苛立つキャロル。
キャロルは自身の無力感を感じているのかもしれない。
けれど、キャロルが無力だからではない。
世界がまったく関心を示さないからだ。
年越しやクリスマスのパーティーには関心を持つ。
けれど、遠い国の悲劇は他人事なのだろう。

ハジを助けたのは偶然かもしれない。
けれど、ヘレンは正しかったのかもしれない。
総てを助けるのは難しい。
であるならば、まずは自分のできることから始めよう。
たとえ小さな一歩でも、大きな希望に繋がるかもしれないから。


街を離れようとしたライッサ。
しかし、街に留まったのは、孤児たちが気がかりだったからであろう。
自分に出来ることが、この街にはある。
だから列車から降りたのだろう。
その行為が彼女に幸運をもたらす結果となり、
それが、とても嬉しく感じさせられる。


正常な感覚を失った青年。
声を失った少年。そして負の連鎖。
そんな負の連鎖の恐ろしさに衝撃を覚えざるを得ない。
けれど、希望はある。
自分たちが自分たちに出来ることから始めさえすれば。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1284 / タイトル あ行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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