あん  
2015.08.27.Thu / 19:03 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






借金に捕らわれ、
世界は限りなく閉ざされていた、
そして、
目の前の人を守ることすら出来ないと嘆いていた男。

しかし、男は最後に知ることになる。
相手も、また自分を助けたいと願っていたこと。
捕らわれていてもなお、自分の人生を生きることができるということ。

自分を見守っていてくれた人の存在を知った男。
そんな男の人生再出発の晴れやかさ。
覚悟を決めた男の輝きがとてもまぶしく感じられた映画。



この映画ではハンセン病を描いている。
けれど、描きたかったテーマはハンセン病ではなくて、
捕らわれた人生の背景としてハンセン病が描かれているように感じた。
仙太郎には借金と母親の死。
徳江さんにはハンセン病。
ワカナには家庭環境。
けれど、人生が何かに捕らわれていても自分の人生を生きることは出来る。
それが、この映画のテーマのように感じられた。




どら焼きを売るお店、どら春。
そこの雇われ店長を務める千太郎。
過去に犯した罪。多額の借金。
苦労を掛けっぱなしで逝ってしまった母親。
それらの後悔故に、とても後ろ向きに生きている男。
ある日、どら春にアルバイト希望の初老のお婆さん、
徳江さんがやって来る。
最初は断っていた千太郎。
しかし、徳江さんの作った、あんの美味しさ。
そして、二人の共同労働が始まる。

あん作りは根気と忍耐の要る仕事。
けれど徳江さんは本当に楽しそう。
きっと、小豆の声が聞こえるからだろう。

キチンと作れば美味しいものが出来上がる。
そして、それはお客さんにも伝わる。
それが、とても楽しい。嬉しい。
今まで後ろ向きに働いてきた千太朗も、
どら焼き造りの楽しさが分ったのだろう。
しかし、そんな楽しい時間は長くは続かない。

本当は首にしなければいけなかった。
でも、この人を守りたい。
それは苦労ばかり掛けてた母親を、
報いることも出来ず、死なせてしまったから。

本当は店頭に出すことは避けるべきだったのだろう。
けれど、徳江さんにも見てもらいたかった。
彼女が作ったあんが、どれだけ人を幸せにしたかを。
唯一、それだけが千太朗にできる、
徳江さんの労に報いてやれることなのだろう。


ただ、陽の当たる社会で生きたかった。
しかし、そんなささやかな願いも叶わない彼ら。
訪ねていった徳江さんに逆に感謝されてしまった。
本当は守りたかった。でも、守れなかった。
自分の情けなさに涙を流す千太郎。


徳江さんが亡くなり遺言を聞くことになった。
徳江さんは、なぜ、どら春で働きたかったのか?
それは、千太朗が昔の自分の目とそっくりの目をしていたから。
何かに捕らわれて人生が自分の思い通りにならない。
そんな絶望に捕らわれた目をしていたから。
そして、そんな千太朗を助けたいと願ったから。

何かに捕らわれていても自分自身の人生を生きることは出来る。
守りたいと思っていた相手は、自分よりも遥かに大きく、
自分の気持ちを知り、自分を助けたいと思っていた。
自分の人生を嘆くこともせず、酒に逃げることも、もうしない。
千太朗は覚悟を決めたのだろう。
そんな男の人生再出発の晴れやかさ。
覚悟を決めた男の輝きがとてもまぶしく感じられた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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