アメリカン・スナイパー  
2015.09.17.Thu / 21:03 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






伝説と呼ばれた男。
その伝説を淡々と描いた映画。
しかし、反戦を意図しているのは明白であろう。

狙撃の対象は、大人だけではない。
時に、子供や女性をも撃たなければならない。
如何に屈強な男といえども精神的には追い詰められていく。
作品として成立させる為に敵も出ては来るが、
敵を倒しても高揚感は描かれない。

伝説と呼ばれることに戸惑いを隠せなかった男。
そんな男を通して、
兵士の心が如何に戦争で傷つくのか。
兵士の家族が如何に犠牲を強いられるのか。
戦争の非道さを冷静に訴えるように感じられた映画。




人間には三種類ある。羊、狼、番犬だ。
父親に番犬になるよう教えられた、クリス。
父親の教えに従う為に、ネイビーシールズに入隊した男。
仲間を助ける為に敵を撃ち、
仲間の仇を討つ為に敵を撃ち、
伝説と呼ばれるようになった男。
番犬になること。それは立派な志ではあろう。
しかし、戦場を知らない人々の立派な志が戦争遂行に利用されているのでは、
とは考えすぎだろうか?


敵であれば女でも子供でも撃たなければならない。
ためらえば仲間が死ぬことになる。
すべきことをした、そうやって納得せざるを得ない、
しかし、一方で仲間を助けたという達成感も感じていたのだろう。
そして、この達成感がマークを戦場に引き留めてしまうのだろう。

伝説と呼ばれても嬉しくはない。どこか戸惑いを覚えてしまう。
自分は人を殺している。けれど、
それらは仲間を助ける為にしなければならない当然の行為。
しかし、心のどこかでは違和感を覚えていたのだろう。
だから、伝説と呼ばれることに戸惑い、時にイラつくのだろう。

派兵が続き、仲間が次々と倒れてゆく。
仲間が戦争の正当性に疑問を抱く。
しかし、気弱になったのならば生き残れない。


クリスの妻であるタヤ。
夫が居ない間の寂しさ。夫の安否に感じる不安。
しかし、夫が居るときに感じる孤独。


仲間を殺した敵の狙撃手。
彼にも妻と子供がいる。
そして戦場に来る前の射撃選手としての生活もあった。
けれど、多分、クリスと同じ思いで敵を撃つのだろう。

憎い敵だったはず。
しかし相手を撃ち殺しても達成感も高揚感も感じない。
周りに居た仲間を窮地に追い込み、悪態をつかれる。
そして、クリスは除隊を決める。
あんなに屈強であったクリスの心が折れた瞬間だったのだろう。


精神的にはとてもタフなクリス。
そして、いわば彼は戦場での英雄だ。
しかし、彼のような人間でも心は傷つく。
敗者でも勝者でも。侵略する側でも、される側でも、
皆が戦争の被害者なのだろう。

仲間を助けること。それを心の拠り所に戦った。
だから帰ってきても、それを 心の拠り所にできた。
しかし、立ち直ることが容易でない人々も沢山居るのだろう。


兵士の心が如何に戦争で傷つくのか。
兵士の家族が如何に犠牲を強いられるのか。
戦争の非道さを冷静に訴えるように感じられた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1293 / タイトル あ行 /  comments(2)  /  trackbacks(1) /  PAGE TOP△ 拍手する
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- from YAN -

ヤンさん、こんにちは!

私も本作は、いかに戦争が恐ろしいかを描いた
反戦映画としか受け止められませんでした。
自分の中の正義を信じていた男でも
あのように精神を病むんですから。

勝者も敗者もないですよね、
戦争は被害者しか作らないとしみじみ思いました。

2015.09.18.Fri / 14:58 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

YANさん、こんばんわ。

そうですね。
戦争では勝者もなく敗者も無い。
関わってしまった人々総てが被害者であって、
その苦しみは戦後も言えることは無いんですね。

勝者からの反戦を描いたので、
最初は違和感があったのですが、
勝者の立場だからこそ描くことが出来ることも、
あるんですね。

それじゃ、また。

2015.09.19.Sat / 18:36 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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