この国の空   
2015.09.17.Thu / 21:11 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






罪を犯したわけでもない。
ただ平和に平凡に生きたいと願った人々。

普通に恋愛を経験して、
愛する人の布団や衣類を片付け、
共に食事をし、子供を産んで育てる。

しかし、その夢は押さえつけられ、
未来に広がるのは絶望と不安ばかり。

戦場には居ない戦争の被害者を描いた映画。
その絶望感に胸が苦しく感じられた映画。



東京に母と二人で暮らす、里子。
人生を生きることを強く欲する女性。

里子の隣に暮らす男、市毛。
妻と子供は疎開したが、
銀行に勤めているが故に東京に残らざるを得なかった男。
毎日鳴り響く警戒警報。
焼夷弾が雨の如く降り注ぎ、街を焼いていく。
死骸の山の話題が当たり前の話として日常語られる。
たとえ工場が焼け落ちても、
私たちが生きている限り、燃やす価値のある者が居る限り、
焼夷弾は止まらない。
配給は滞り食料の少なさに肉親同士が罵りあう。
新型爆弾のデマが飛び交い、
九十九里には、まもなくアメリカ軍が上陸し、
それを阻止する為に、
爆弾を抱えて戦車に飛び掛らなければならない時がもう直ぐやって来る。

生きることは大切なこと。
けれど、毎日の絶望の中で、何を支えに生き抜けば良いのか?

次第に魅かれ合う里子と市毛。
魅かれ合う、というよりは、お互いの欲求の為に、
擬似恋愛をしているように感じられた。
死ぬ前に恋愛や結婚生活を経験してみたい里子。
死の恐怖を、赤紙の恐怖を忘れたい市毛。
相手を好きなわけではない。
自分の欲望を満たしてくれる人が目の前に居る。
未来が想像出来ないが故に不倫に簡単に陥ってしまう二人。

二人を擁護したり否定するのは難しい。
けれど、抑えがたき不安や絶望が、
如何に人に正常な判断力を失わせるのか、
それがとても恐ろしく感じられる。

結ばれてしまった里子と市毛。
しかし、戦争は終わる。市毛の妻と子供が帰ってくる。
そして、ここからは私の戦争が始まるのだ、と悟る里子。

市毛を妻と子供から奪う戦い、と下世話には思えてしまうが多分違うのだろうし、
この映画には似つかわしくないとも感じられる。
戦争が終わらなければ良かったという想いなのかもしれないが、
戦時下で失ってしまった時間を如何に取り戻すか、ということのようにも思える。

わたしが一番きれいだったとき、
本来であれば経験できた様々なこと。
感じたであろう、喜びや悲しみ。
そんな失われた時間を如何に取り戻すのか、、、、

ただ、この字幕は蛇足に感じられてならなかった。


不安と絶望に苛まれ、
ささやかな望みも奪われた人々。
戦場には居ない戦争の被害者を描いた映画。
その絶望感に胸が苦しく感じられた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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