ディア・ハンター  
2015.10.22.Thu / 15:38 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






戦争により若者たちが、何を奪われてしまうのか。

未来への希望、恋人や友人。彼らとの楽しい日常生活。
彼ら自身の肉体、正常な感性、
懐かしき思い出。
そして彼ら自身の命。

ほぼ、人としての総てを奪われた彼ら。
その残酷さが心に深く圧し掛かってくる映画。



ストーリー的には破綻している箇所もある。
けれど、描きたいところは、とことん緻密に描き、
それ以外は徹底的に省く。
そんなチミノ監督の演出が堪能できる映画。




アメリカの片田舎で暮らす青年たち。
悪ふざけが激しいが気の良い仲間たち。
鹿狩りに異様な真面目さを見せるマイケル。
友情に厚く、気の優しいニック。
少し気の弱そうなスティーブン。
ともにベトナムに出兵しなければならなくなった三人。

映画の冒頭、描き出されるのは彼らの何気ない日常。
それは微笑ましくも楽しい生活。

仲間同士の悪ふざけ。
鹿狩りに行く途中で仲間を置き去り。
迎えに戻ってきても、また、置き去り。
彼らの仲の良さが良く分る。

華やかな結婚式。しかし、
スティーブンは自分の子供でない赤ちゃんを身ごもった女性と結婚する。
それを初めてニックに打ち明ける。

リンダが好きなマイケル。しかしリンダは親友であるニックの彼女。
それを察してか、リンダにマイケルと踊るようにお願いするニック。
マイケルの気持ちを知っていたニックの、
出兵前の最後の思い出作りということなのだろう。
しかし、友がくれたせっかくのチャンスを生かせないマイケル。

陽気に生活していても、
彼らにも彼らなりの悩みもあるのだ。


一滴も、こぼさなければ永久に幸せになれる。
けれど、純白のドレスに落としてしまった赤い染み。
それが、三人の未来を暗示しているのだろう。

皆と楽しめなくなり一人で酒を煽る帰還兵。
それが自分たちの未来の姿とは思いもしなかったであろう三人。


ベトナムで捕虜となり、
ロシアンルーレットを強要させられる三人。

ロシアンルーレットとは、戦場の象徴なのだろう。
いつ死ぬのか、いつまで生き残れるのか?
それは運しだい。
毎日出撃しては、辛うじて生き残る。
それは命を懸けた究極の緊張感。
ロシアンルーレットの引き金を引くようなものなのだろう。



辛うじて生き残った、けれど、
手足を失ったスティーブン。
記憶と正常な感性を失ったニック。
そして友人たちを失ったマイケル。
彼らは、もう、あの楽しかった日常には決して戻れない。

記憶を失いロシアンルーレットにのめり込み、
命を落としてしまったニック。

生きたままニックを連れ戻せなかったマイケル。
リンダの視線は、そんなマイケルを責めているようで、
妙によそよそしい。
ニックと共に二人の関係も失われたのだろう。


鹿狩りに異様な執念を燃やしていたマイケル。
他の若者たちとは違い、マイケルには戦う為の哲学があったのだろう。
その哲学ゆえに無事に生き残ることが出来たのだろう。
けれど、鹿を撃てなくなってしまったマイケル。
撃たれる者の悲劇を知ってしまったからなのだろう。


人としての総てを奪われた彼ら。
その残酷さが心に深く圧し掛かってくる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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