太陽を盗んだ男  
2015.11.05.Thu / 19:06 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






政府と戦いたかった青年。
けれど、戦い方が分らない。
政府のなにと戦うべきかも分らない。

原爆を作るだけの能力はある。
社会を良くしたいという熱意も、
かってはあったのだろう。
しかし、それを持て余し、向ける先も分らない。

自分の気持ちを理解してもらえると考えていた。
けれど、したたかに拒否されてしまった。
自分自身の苛立ちを。そして自分自身すらも。


青年から感じられた涼やかさ、冷めた感情。
しかし、その涼やかさの中に隠された虚無感。
そのアンバランスさが危うく感じられた映画。


そして、
突っ込みどころ満載のアクション映画。
際どい題材を扱った社会派ドラマ映画。
その両方が楽しめる映画。




中学校の理科の教師、木戸誠。
やる気を感じられない教師ではあるが、
怠惰というわけではない。
内なるやる気を持て余している。
だから休み時間も放課後も、奇妙な雄叫びを発している。
けれど、その向け先が分らない。
それは、すなわち、彼自身が彼の生き方や、
彼の人生を見つけられていないということなのだろう。
丸の内警察署捜査一課の山下。
その身を張って、職務を遂行し、
市民の生命を守ろうとする警部。

プルトニウムを奪うシーンのコミカルさ。
けれど、原爆作製シーンの緻密さ。
それらが、原爆作製の臨場感を盛り上げる。

武器は手に入れた。
けれど戦い方が分らない木戸。
山下警部を巻き込み、ラジオDJである沢井を巻き込み、
しかし、木戸の心は満たされない。

原爆は奪われ、それを取り戻す木戸。
ターザンで登場したり、首都高でのカーチェイスも奇想天外。


最後に対峙する木戸と山下。
あなたなら一緒に戦ってくれると思っていた。
けれど、死ぬべきはお前自身、と返す山下。

世界を変えるために何かをしたい。
しかし、彼のそれは、実は個人の問題なのだろう。
外に具体的な障害が見えてこない限り、
自分の中で消化すべき問題なのだ。
そして山下警部は自分自身の生きる道を見つけている。
その決定的違い故に、共闘どころか、相容れることなどできはしないのだ。


ネコの死を、プールでの多くの人の死を、呆然と見つめる木戸。
人を殺すことが目的ではなかったのだ。
けれど、痛い現実を突きつけられ、自暴自棄。
最後は原爆を爆発させてしまった木戸。
それは迷える者の、あてどもない旅路の行き着く先。


怠惰な青年ではなかった。むしろ勤勉なほうなのだろう。
しかし、人生の目的を見つけることが出来なかった木戸。
涼やかさの中に隠された虚無感。
そのアンバランスさが危うく感じられた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1305 / タイトル た行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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