さよなら渓谷  
2015.11.12.Thu / 20:27 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






この映画を未見の人は、映画を見てから下記を読んでください。
ネタバレ満載なので。
お願いします。



進むに進めず、
戻ることも、もはや出来ない。

過去はやり直せない。
過ちは取り返せない。


人生に誠実でなければ割り切ることも簡単だ。
人生を器用に生きられれば忘れることもできる。
しかし、それが出来ない二人。

もしかしたら、
幸せになるには誠実さは邪魔なのかもしれない。
適当に生きれば、もっと幸せになれたかもしれない。


さよならは、
捜して欲しいのメッセージなのか?
赦してあげるの意思表示なのか?
それとも復讐は、まだ続くのか?

もう一度、あの時をやり直せたら、どちらを選ぶのか?
そんな質問はナンセンスなのかもしれない。
あの時はやり直せないのだから、というよりも、
彼女を愛してしまったのだから。

行き場のない愛憎。
ヒリヒリとした痛みを感じる映画。





片田舎にひっそりと暮らす男と女。
高校の頃にレイプを経験してしまった女、かなこ。
かなこをレイプした男、尾崎。
レイプされたが故に結婚に失敗し、流産も経験してしまった。
その罪を尾崎は懸命に償おうとする。
しかし、犯してしまった罪を消すことは出来ない。
もはや、過去を消し去ることなどできはしないのだ。

自分を不幸にした男を自分以上に不幸にしたい。
その総てを受け入れ、
傷つきボロボロになることでしか、罪を償えない。

死んでしまいたい。
自分が背負わされた過去の重さ故に。
自分が犯してしまった罪の重さ故に。
けれど死に切れない。
あの男が唯一自分を、この世に繋ぎとめてくれている存在。
あの女が唯一自分を、この世に繋ぎとめてくれている存在。
そして、自分の負の感情の総てを、さらけ出せることが出来る存在。
そして、自分の罪の感情を少しでも和らげることが出来る存在。


二人の不幸は、なにもレイプの被害者と加害者ということだけではない。
それ以上に、二人にとって不幸なことは、
過去を乗り越えることが出来ないということなのだろう。
だから、進むに進めず、
しかし、戻ることも、もはや出来ない。


一緒にレイプを犯してしまった男。
しかし、悪びれもせず、毒を吐く。
共犯者にさせられた、と。
人生に誠実でなければ楽に生きられるのだろう。
けれど、それが出来ない尾崎。

かなこと結婚した男たち。
かなこの過去を受け入れられれば幸せになれたのかもしれない。
けれど、受け入れることが出来ない。
女々しいと分っていても、こだわってしまう。
だから、幸せにはなれない。

尾崎と二人で共に暮らせば、
幸せになれることが出来たかもしれない。
けれど、過去を割り切れない、かなこ。

器用に割り切れれば幸せになれたのだろう。
けれど、人は、そんなには器用に生きられない。



さよなら、の手紙を置いて、尾崎から去ってしまった、かなこ。
果たして、かなこの望みは、どこにあるのか?
それは、かなこにも分らないのかもしれない。


尾崎が住む部屋の隣で起きた事件を取材していた記者、渡辺。

スポーツに総てを掛けてきた男が、
そのスポーツを奪われたら、一体なにが残るのか?
過去のレイプ事件、過去の怪我。
似たような境遇だと錯覚して尾崎に同情し近づくものの、
自分よりも彼らの悲惨な過去を知ることになる。
そして、自分には幸せを選択できる可能性があることも知る。


尾崎とかなこの未来に、
幸せを得ようという選択肢は、果たして残されているのか?
けれど、誠実さと不器用さの果てにも、幸せはあるのだと、信じたい。


行き場のない愛憎。
ヒリヒリとした痛みを感じる映画。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1308 / タイトル さ行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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