黄金のアデーレ 名画の帰還  
2016.02.22.Mon / 20:45 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






過去に犯してしまった不正。
それを正す機会が現在に訪れる。

その機会を前にして、
過去は過去として葬ろうとした人。
過去の間違いを正そうと覚悟を決めた人。
過去の痛みに耐えかねて怯んでしまう人。


自分が両親を捨てたという罪の意識.
そんな状況を作り出したオーストリアに対する憎しみ。
罪と憎しみとで上手にバランスと取っていた女性。
しかし、オーストリアが罪を認めた時、
そのバランスを失いかける。
果たして、それが望んでいた結末なのか、と。

失われたものは戻らない。
けれど生きていかなければならない。
その為には過去に向き合う必要があるのだろう。
彼らと共に生きるために。


過去の過ちに向き合う。
過去の痛みを乗り越える。
そしてそれらを未来に生きる糧にする。
そんな人々の勇気に励まされる映画。



姉は私よりも先に人生のゴールインをはたしたが、
これがボクシングであれば最後までリングに残った私が勝者。
ユーモアのセンスに溢れていて、豊かな表現力をもち、
辛らつで、バイタリティに溢れ、とても暖かな気持ちを持つマリア。
苦労したであろう人生から多くを学び、
生きる哲学を確立しているように感じられた女性。
伯母をモデルに描かれた、黄金のアデーレ。
それは第二次大戦中にナチに奪われたもの。
姉の手紙から、顛末を知ったマリアは、
オーストリア政府に返還を求めることを決意する。

返還には法律に詳しい弁護士が必要だ。
マリアは、彼女の親友の息子で新米弁護士のランディに相談に乗ってもらう。
そして二人の長くて険しい戦いが始まった。


返還の要求を前に様々な考えを持った人々が二人の前に現れる。

過去は過去、総てを忘れて水に流し、未来を生きろと諭す人。
過去の間違いでも、それを正そうとする人。

強そうでいて、しかし、やや淡白に感じられたマリア。
黄金のアデーレは、もちろん、取り戻したい。
けれど過去に向き合うのは避けたい。
そして政府の手先に人権を無視されるのは二度とゴメンだ。
過去の苦い経験と、それでも家族を取り戻したい。
そんな複雑な思いをマリアは抱えていたのだろう。

映画の途中で挿入される、とても幸せなオーストリアの生活。
マリアの結婚式。優しかった伯母。
けれど、それらは無残にも、理不尽にも奪われる。
こんなことがあっても良いのか。そう思わざるを得ないほどに、
これらのシーンには説得力を感じる。
だから、複雑な思いを抱えるマリアの気持ちが十二分に伝わってくる。


最初は高額な評価額につられてマリアをサポートしていたアンディ。
けれど、アンディの祖父たちもマリアと同じ経験をしてきた。
だからこそ、オーストリアを去る前日に激しく後悔したのだろう。
お金に釣られた自分を恥じて、
祖父たちが見舞われた不正と過ちを、
今また、マリアに経験させてしまった事に対して。

アンディの戦いは、ここからマリアの為だけではなく、
自分と、そして祖父たちの為の戦いに変わっていったのだろう。
経済的には苦しい。けれど、後押しをする妻の言葉、信念は捨てないで、
がとても嬉しく感じられる。


二人をサポートしたオーストリア人、フベルトゥス。
なぜ彼が二人をサポートしたのか。
その理由が最後に明かされる。
それは大好きで尊敬すらしていた父親の過ちを正したかったから。
そうしなければ自分自身も、
自身の未来を生きられないと感じていたからなのだろう。


長期戦を避ける為、調停に持ち込み、
オーストリア人の良心に訴えかけるアンディ。
それに応えたオーストリアの調停員。
彼らもまた、過ちを見つめ、正そうと決意したのだろう。
とても嬉しくなる展開だ。


アンディに比べて過去の痛みを実体験しているマリアは、
途中で何度も諦めてしまう。
それは致し方ないことなのかもしれない。
しかし、最後には戻ってきた。
これも嬉しい。


絵を取り戻し一人涙を流すマリア。
自分が両親を捨てたという罪の意識.
そんな状況を作り出したオーストリアに対する憎しみ。
罪と憎しみとで上手にバランスを取って生きてきたのだろう。
しかし、オーストリアが罪を認めた時、
そのバランスを失いかける。
果たして、それが望んでいた結末なのか、と。

けれど憎しみが無くなり過去と向き合うことができるようになった。
最後に描かれる幸せな風景。
オーストリアの思い出は辛い事ばかりではない。
楽しいこと、幸せなこともあったのだ。
そんな思い出とともに生きていくことができるようになったマリア。
それこそが両親たちの願いだったのだろう。

過去の過ちに向き合う。
過去の痛みを乗り越える。
そしてそれらを未来に生きる糧にする。
そんな人々の勇気に励まされる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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