消えた声が、その名を呼ぶ  
2016.03.10.Thu / 19:22 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






世界をさ迷い、
様々な経験を経て、
やっと娘を見つけることができた男。
戦争の惨さ。言葉の壁。人種間の差別。
しかし、家族の絆の強さ。
見ず知らずの人々の優しさ。
同郷の人々の思いやり。

差別が強く成ればなるほどに、
迫害が強く成ればなるほどに、
人々は団結を強め、
お互いをいたわり、優しくなれるのかもしれない。

悲惨な経験故に言葉を無くしたはずの男が、
声を振り絞って呼んだ娘の名前。
その言葉に込められた想いに、
心が震える映画。



愛する家族と共に幸せな生活を営んでいたナザレット。
双子の姉妹を子供に持つ、家族を深く愛する男。
学校帰りに見た鶴。
鶴を見た者たちは壮大な旅をする。
それはとても暗示的な台詞。

ナザレットはアルメニア人。
戦時下のオスマン・トルコの政策により、
激しい迫害を受けてしまう。
仲間は死んでしまったが、命だけは助かった。
けれど、声を発することが出来なくなってしまったナザレット。
声を失うということは、
住む場所を奪われ、抵抗も出来ずに迫害され続けるアルメニア人を、
象徴しているのだろう。

映画の前半で描かれるのは戦争の悲惨さ。
誰も助けてはくれない。
殆ど死んだような人たちが、
焼け付く太陽の下に放置され、
死さえ望むようになってしまう。
義理の姉を殺さなければならなかったナザレット。
もはや、神さえも信じる事ができなくなってしまった。
けれど救いの手を差し伸べてくれる人も、また存在した。


娘たちは生きている。
それは生きる目的も無く死んだように生活していたナザレットにとって、
生きる唯一の希望。
そして、娘を求めての壮大なる旅が始まる。


映画の後半に描かれるのは、言葉の壁。人種間の差別。
しかし、同胞たちの優しさ、いたわり。
戦争が終わっても迫害は続く。
世界に散ってしまった同胞たちは、迫害されるが故に、
力を合わせなければ生きのびることはできないのだろう。

もともとは善良であったナザレット。
けれど長くて過酷な旅。
ある時は憎い男から金を巻き上げ、
また、ある時は襲い来る男たちを撃退する。
そうしなければ娘たちにはたどり着けない。
それはナザレットの執念の表れなのだろう。
けれど、一方で襲われた黒人女性を助けたいと行動を起こす。
理不尽に虐げられている人々の苦痛を理解しているからだ。
そして、それ故に同郷の人々のお互いを思いやる気持ちも、
また、強いのだろう。

長い時を、本当に長い時間を掛けて、
やっと巡り合えた愛娘。
声を失ったはずのナザレットが、
声を振り絞って呼んだ娘の名前。
完璧ではないが失われた者を取り戻すことが出来た。
それ故に言葉もまた、取り戻せたのだろう。


総てを奪われ、しかし、
最後の生きる希望を世界の果てまで追い求めたナザレット。
その執念と強い家族への愛情。
やっと巡り合えた喜び。

悲惨な経験故に言葉を無くしたはずのナザレットが、
声を振り絞って呼んだ娘の名前。
その言葉に込められた想いに、
心が震える映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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