ハンナ・アーレント  
2016.04.28.Thu / 21:43 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






世界大戦という惨劇。
大量虐殺という悲劇。
これらは誰か一人の人間によって起こされるわけではない。
命令を出す者、決定を下す者、計画を立てる者、実行に移す者。
末端に行けば行くほど思考の自由は奪われ、
選択の余地は失われてしまう。
その結果として悲劇は起こるのだ。

しかし、多くの人は原因について、
簡単な理由を求めがちだ。
当事者であり犠牲者でもあるのであれば、
憎しみの対象たる個人を特定したくなる。


当事者であり被害者でもあったハンナ・アーレント。
しかし、惨劇の原因を、冷静にかつ論理的に分析する。
なぜなら、あのような悲劇を再び繰り返してはいけないからだ。

四面楚歌の状況下でも、
自身の主張を曲げなかった女性。
その信念の強さに圧倒される映画。



ユダヤ人の哲学者、ハンナ・アーレント。
ホロコーストから生き残ることができた女性。
ナチスの戦犯であるアイヒマン。
あのような非道な行いを実行に移した男であるならば、
悪魔かモンスターのような男であるに違いない。
しかし、アンナが感じた違和感。
アイヒマンは、上からの命令を実行に移しただけ。
しかも、実際に手を下すのは別な人。
アイヒマンは事務的に官僚的に惨劇を実行に移したに過ぎないのだ。


これは確かに事実なのだろう。
けれど、様々な点で受け入れがたい事実なのだ。

組織が硬直化すれば誰しもがアイヒマンに成りうる。
平凡で小役人のような男が何百万の命を奪ってしまう。
ホロコーストに加担してしまった、一部のユダヤ人指導者たち。
実は彼らも同様なのだ。

ある特定個人を憎むことで、
悲しい過去に対する気持ちの整理をしてきた人々。
しかし、悲劇は凡庸な悪によって行われたという結論では、
気持ちの整理もつけられない。


多くの同胞、友人たちにすら糾弾されてしまったハンナ。
しかし、その信念を変える事は無かった。

思考を止めて、憎しみのあまりにアイヒマンに死刑を宣告すること。
それは、とても危険なことだ。
それはアイヒマンの過ちを繰り返すことに繋がる。

冷静に論理的にアイヒマンの罪を分析し、相当な刑を執行する。
そして、この悲劇を繰り返さない努力をする。
それこそが必要なことなのだろう。


戦争は起こしてはならない。
思考を止めてはならない。
それは理解している。
けれど悲劇は今も止まらない。

悲劇を止める為に、
四面楚歌の状況下でも、
自身の主張を曲げなかった女性。
その信念の強さに圧倒される映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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