ラスト、コーション  
2016.05.19.Thu / 22:36 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




本物のように見えた偽物
嘘の中にあった真実


女が差し出した偽りの中に、
本当の愛を見つけた男。

男が見せた孤独の中に、
本当の愛を見出した女。

しかし結ばれるはずの無い二人。
二人の恋愛の終局に、
哀れさと物悲しさを覚えさせられる映画。



「祖国を殺させるな!」
学生たちの祖国を思う気持ちは本物だったのかもしれない。
彼らは、ささやかと感じていたのかもしれないが、
学生に出来る精一杯のことをしていたのだろう。
しかし、気持ちの高揚に伴い、
本当の抗日運動にのめり込んでいく学生たち。
人を欺き、人を殺す。
そんな抗日運動の本当の姿を知らずに。
遂に本当の活動に踏み出してしまった学生たち。
そんな学生の一人、ワン・チアチー。
世間を知らない、まだあどけなさの残る少女。


素人なのに傀儡政権の要人、イーに近づくことが出来た。
けれど次は体を求められるだろう。
しかし、すでに学生たちは、その対応方法を知っていた。
知らされなかったのは、チアチーだけ。
これが現実。しかし、後には引けない。
この時、チアチーは抗日運動の本当の意味を理解できたのだろう。
女学生にチアチーの説得を任せ、
何も言わずにベランダに出て行った男子学生たち。
それは卑怯で、とてもいやらしく感じられた。

けれど、捨て身の献身も報われることはなかったのが悲しい。

初めて人を殺した学生たち。
しかし、すべては大人の手のひらで転がされていただけ。
利用できるものは何でも利用する。
それが彼らのやり方なのだろう。
それが戦争というものなのだろう。


数年後に再びイーに近づくことを命じられたチアチー。
チアチーが前回活動に参加した動機のひとつである、
男子学生たちのリーダーであるクァンに抱いていた淡い恋愛心は、
すでに失われていたようにも見える。
けれど今回も指示に従うことにしたチアチー。
前回は、失ったものは多く得たものは無かった。
その穴埋めの為に同意したのだろうか?
そして、母は死に父は再婚。帰れる場所も無い。
だから、従ったのだろうか?

口だけで自分には何もしてくれないクァン。
しかし、チアチーにとってイーは違ったのだ。



なぜ、イーが日本の傀儡政権で働いているのかは映画では描かれない。
最初は理想に燃えていたのか?
それとも祖国の為を考えたのか?
しかし始めてしまえば、間違っていると気付いても、
もう後戻りは出来ない。
いよいよアメリカが参戦してきた。
もはや日本の命運は尽きたのだ。
それが判っていても引き返せない。

誰も信じられない。
周りにはスパイも居るだろう。
自分の地位を狙う部下も居るだろう。
チアチーの正体を知っていて報告しなかった部下も居た。
だから、誰も信じられない。


大儀名文や理想や思想。しかし、それらは幻。
現実として実感できるもの。体感できるもの。それこそが真実。
とても似た心情であった二人。


チアチーはイーを最初は騙そうとしていた。
それには捨て身で挑まなければ達成できない。
しかし、その捨て身さが本心に変わっていく。
体を交われば、なおさらだ。


ダイヤを身につけて外に出るのは怖い。
けれどイーはチアチーを安心させる為に、いつも傍にいるよ、と応える。
それは本心からの言葉なんだろう。
その本心に応えるかのごとくチアチーは秘密を打ち明ける、逃げてと。
それは、イーにとって
チアチーの正体と、しかし彼女の恋心が本物であると分った瞬間。
そして本当の恋愛を手に入れて失った瞬間。
それが、とても切ない。


チアチーを失ったイーの寂しさ、虚しさ。
しかし、本心を遂げたチアチーの清々しさ。

結ばれることが無い二人。
二人の恋愛の終局に、
哀れさと物悲しさを覚えさせられる映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1382 / タイトル ら行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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