2016.09.29.Thu / 15:14 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。

人は公共の利益に反しない限り、
自由な思想を持つ権利を持っているはずだ。
しかし、それが許されなかった時代。

人々は弾圧する側とされる側に別れ、
疑心暗鬼の中、苦しくて暗い時代が続く。

そんな時代を家族を支えに乗り切った男。
そして弾圧する側もされる側も、
皆が等しく犠牲者であり、
今一番必要なのは許すことであると訴える。

不遇な時代を反骨の精神と家族への愛情で乗り越えた男がたどり着いた境地。
そのスピーチの重みに心が揺さぶられた映画。





赤狩りの嵐が吹き荒れていた時代のアメリカ。
ソ連のスパイによりアメリカの機密情報が盗み出された。
そんな衝撃的な事件も起こり、赤狩りは苛烈を極める。
冷静に考えれば、
赤狩り自身は思想の自由を保障した憲法から逸脱した違法行為。
しかし、ソ連の脅威が人々から良心的な判断能力を奪っていたのだろう。
自分たちが正しいことをしていると信じて疑わない彼ら。
これは、とても恐ろしいことだ。
ハリウッドで働く脚本家、トランボ。
彼もまた、赤狩りで仕事を奪われた男。

仕事を奪われるとは、それだけに留まらない。
仕事に刻むことが出来る名前を奪われる。
周りからの仕事に対する敬意を奪われる。
そして収入の道を閉ざされる。
結果として命をも奪われてしまう者もいた。

そんな時代に対して、
正面から堂々と正論を主張し、
戦いを挑むという方法もあっただろう。
けれど、正常な判断力を失った相手には、
それは無謀に近い戦いだ。
それ故に、トランボが取った方法は、ゲリラ的な戦法。
裁判は適当に、はぐらかす。
偽名で脚本を描き続ける。
それは、とても地道で気の遠くなるような戦い。
けれど、トランボは最後には勝利する。

他人の名前を取り締まる側に売って生き延びた者たちも居た。
しかしトランボは他人の名前を売らなかった。
そんな男が人を信頼する美しさを描いた映画、
ローマの休日の脚本を書いたという事実は、
あの傑作をさらに味わい深いものにしてくれる。
さらにスパルタカスという映画での、
皆がスパルタカスを庇う有名なシーンも同様だ。


家族の為に睡眠時間をも犠牲にして働き続けるトランボ。
だから家族に犠牲を強いても構わない、
という理屈はアメリカにもあるのかと、興味深い。
けれど、妻に諭され、態度を改めるトランボが、妙にかわいい。


偽名というのは方法は、
トランボが脚本家だから使えたのであって、
俳優のように顔を知られている人には使えない方法だ。
名前を売ったことを謝罪する俳優に、
裏切り者と冷ややかな視線を向けるトランボ。
しかし、トランボも最後には理解できたのだろう。
皆が等しく犠牲者であったことを。


最後には名前を取り戻すトランボ。
名前だけではない。
言われ無き差別からの開放。
なにも恐れなくても良い平穏。
それは、総てが日常に戻っただけのこと。
でも、それが、とても貴重なことなのだ。

不遇な時代を反骨の精神と家族への愛情で乗り越えた男がたどり着いた境地。
あのような時代は、もうこりごりだ。
であるならば憎しみ合うよりはお互いを理解しあうこと。
なぜなら、皆が犠牲者なのだから。
そんなスピーチの重みに心が揺さぶられた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1428 / タイトル た行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
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