たかが世界の終わり  
2017.05.11.Thu / 19:25 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






久しぶりに帰郷した息子。
そんな息子を前にして交差する家族の憎愛。

場を取り繕うが如く子供たちの話をする義姉。
自らの感情を素直に語る妹。
大人になることを諭す母親。
偽善を嫌い、弟を受け入れようとはしない兄。

最後には理解しあえぬまま別れた家族。
12年の年月を埋めるには時間が無かったのか?
いや、本音をぶつけ合わなければ、
前に進むことはできなかったのだろう。
しかし一応は、家族である彼らには、
それが難しかったのだろう。

家族故の愛憎。
そこにヒリヒリと痛みを感じた映画。



12年ぶりに帰郷した人気作家、ルイ。
それは、自分の余命が僅かであることを告げるために。
なぜ、出て行ったのか?
なぜ、12年も戻ってこなかったのか?
そして、なぜ、今更帰ってきたのか?
家族であるならば、誰もが聞きたいこと。
しかし、それを尋ねないでいるのは、
そこに触れれば弟の久しぶりの帰郷という晴れやかな日を、
ぶち壊してしまいそうだから。


始めて会った義理の姉。
取り留めのない会話は場を作ろう為のものなのだろう。
相手の興味よりも、
居心地が悪くなるであろう静けさを避けるため。


ルイの事をあまり覚えてはいない妹。
だから、妹は家族の中では一番素直に語りかけてくる。
ハガキが待ち遠しかったこと。
遠くで活躍するルイが誇らしかったこと。
出て行ってしまったことへの避難。
帰ってきた理由。
それを曖昧な笑顔で誤魔化すルイ。
ルイは妹にだけ話す為に戻ってきたわけではないのだから。


年甲斐もなくはしゃぎ続ける母親。
けれど、それも嬉しいからだけではないのだろう。
今日という日を何とか無事に幸せに過ごしたい。
無理にはしゃぎ、妹とも無理に踊り、
何とか場を取り繕う。

密かにルイだけを呼び寄せて、
形だけでも良いから打ち解けるように願う母。
それは、ルイの言葉数が足りないから。
けれど、足りないのは、実は他にあるのだろう。


ルイにというよりも、
ルイという侵入者が入ってきた家族を毛嫌う兄。
男として一人で家族を支えてきたという自負。
自由気ままに生きるルイへのやっかみ。
そんな気持ちもあったのかもしれない。
けれど、それ以上に私が感じたのは、
兄は目の前に繰り広げられている偽善に耐えられなかったから。
ルイを歓迎しているように振る舞う家族。
歓迎されているように振る舞っているルイ。
けれど、恨みや憎しみの気持ちだってあるはずだ。
なぜ、今頃、のこのこと帰ってきやがったんだ。
きっと、そこには手前勝手な理由があるはずなんだ。
けれど、誰もそれを糾弾しない。
晴れやかな日だからと言って、問いたださない。
空港のカフェのような取り繕う話は、まっぴらだ。

無理やりルイを連れ出す兄。
もう我慢できなかったのだろう。
目の前に繰り広げられている偽善、家族ごっこに。


最後には真実を語れず、その場を離れるルイ。
自分の余命がわずかなことなど、彼らにとっては些細な事。

けれど、それは違うのだろう。
ルイが12年間家族から逃げてきた。
そして、今また逃げ出そうとしている。
だから家族にとっては、たかが世界の終わり、
になってしまうのだろう。


近すぎる家族という存在。
だからこその愛憎。
そこにヒリヒリと痛みを感じた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1488 / タイトル た行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY

  非公開コメント
TRACKBACK TO THIS ENTRY

ご注意

ブログ内検索

全ての記事を表示する

プロフィール

ヤン

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

フリーエリア

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

フリーエリア

CopyRight 2006 Heaven of the Cinema All rights reserved.