この世界の片隅に  
2017.05.18.Thu / 19:48 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






右も左も分からずに嫁いだ先で、
懸命に自分の居場所を探した少女。

平凡だが普通に、そして平和に暮らしてきた。
しかし、戦争により、
様々なものを失った。
信じていたことは裏切られ、
価値観も変えざるを得なかった。
もう、世界は元には戻らない。

けれど、生きてゆく。
失ったものを、お互いに補いながら、
したたかに、たくましく。

そこに居るだけで、実はそこが自分の居場所。
最後には、そんなことに気付かされたのだろう。
少女を囲む人々の優しさ、たくましさ。
そして、少女の持つ生きる力。
そんな総てに気持ちが暖かくさせられる映画。



おっとりしていて、天然気味な、すず。
絵を描くことがとても大好きな少女。
すずが幼き日に体験したこと。
将来の夫となる周作との出会い。
道に迷った時に助けてもらうことになる、リンとの出会い。
それは、とても奇妙な体験。
多分、すずが認識した出来事と
現実として起こったことは違うのだろう。
けれど、幼きすずには、
このように見え、このように感じたのだろう。



お嫁に行けないと言われてきた。
しかし、お嫁に行くことになった、すず。
見知らぬ土地、見知らぬ人々。
懸命に働き、早く新しい生活に慣れ、
様々な事を覚えて、皆の役に立ちたい。
けれど、小姑である径子が帰ってきた。
自分の居場所が無くなるのでは、、、
そんな不安から頭にハゲができてしまう。
それでも懸命に皆の暮らしを守る、すず。


徐々に忍び寄る戦争の影。
食卓は質素になり、空襲警報の回数も日を追うごとに増えてゆく。
周作も家を離れ、義父も空襲でケガをし入院してしまう。
そして、すずを襲う悲劇。
径子の娘、晴美が目の前で死に、自らも右手を失ってしまう。


右手は生活する上でとても大切なもの。
それ以上に、すずにとっては、
嫁いだ先の北条家で自分の居場所を確保するための大切な道具。
絵を描くということで、自分の気持ちを表現するための手段。
それらを一緒に失い、径子からも責められる。

ここには居場所が無いのかも、、、
一度は実家に帰ることを決めたものの、
やはり、自分の居場所は好きな人が居る、ここなのだ。
そして、その想いがすずを原爆から救う。


「最後の一人まで戦うんじゃなかったのかね」
沢山の親しき人々を失った。
様々な大切なものを失った。
総ては戦争に勝つため。そう納得してきた。
けれど、それは、歪んだ世界が作り出した欺瞞だったのだ。
すずは、それを思い知らされたのだろう。


「この世界に居場所はそうそう無うなりゃせんよ」
戦争により、
様々なものを失った。
信じていたことは裏切られ、
価値観も変えざるを得なかった。
もう、世界は元には戻らない。
けれど、自分の、自分たちの居場所は、まだ存在する。
この世界の片隅に。
それに気づいたすずは、もう振り返らない。
水原を見かけても、声を掛けない。


広島で出会った小さな女の子。
右手を失っていなければ出会わなかったのかもしれない。
晴美の代わりにはならないことは分かっている。
けれど、一緒に暮らしていこう。生きてゆこう。
失った者は戻らない。けれど、お互いに補ってゆくことはできる。


懸命に自分の居場所を求めた、すず。
しかし、そこに居るだけで、実はそこが自分の居場所。
最後には、そんなことに気付かされたのだろう。
すずを囲む人々の優しさ、たくましさ。
そして、すずの持つ生きる力。
そんな総てに気持ちが暖かくさせられる映画。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.1490 / タイトル か行 /  comments(0)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY

  非公開コメント
TRACKBACK TO THIS ENTRY

ご注意

ブログ内検索

全ての記事を表示する

プロフィール

ヤン

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

フリーエリア

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

フリーエリア

CopyRight 2006 Heaven of the Cinema All rights reserved.